神奈川県川崎市のたま日吉台病院は、二次救急告示病院として、一般病床・療養病床を有し高齢者の患者さんを中心に診療を行っている病院です。
リハビリテーションへの注力や訪問診療体制の充実を図る同院の地域での役割や、今後の展望について、院長である鈴木 敏夫先生に伺いました。
当院は、一般病床117床と、長期的な療養が必要な患者さんのための療養病床82床を備えています。患者さんの9割以上は高齢者で、平均年齢は80代後半です。
訪問診療や訪問看護、訪問リハビリ、訪問服薬指導などを積極的に行っており、高齢化の進む地域の医療を支えられるよう努めています。また、急性期の治療を終えた方が自宅や施設にスムーズに戻っていけるよう、リハビリにも力を入れ取り組んでいます。
リハビリテーション科には現在、理学療法士(PT)、言語聴覚士(ST)、作業療法士(OT)など合わせて30名以上のスタッフが在籍しており、外来だけでなく訪問リハビリにも注力しています。また、小児の言語療法も行っており、地域の医療機関などからのご紹介で来院される方も多いです。
2024年には、当院が川崎市より地域リハビリテーション支援拠点施設に選定されました。今後は支援拠点施設として、地域包括支援センターやケアマネージャー、介護施設などからの相談を受け、専門的な立場からアドバイスを行うことで、地域でより質の高い在宅医療や在宅リハビリテーション、在宅介護を提供できるようサポートしてまいります。
当院ではほかにも、内科や呼吸器内科、外科、皮膚科などの診療科を開設していますが、地域のニーズに応えられるよう、新たに泌尿器科と放射線科を標榜しました。2025年4月からは、これまで非常勤医師で対応していた整形外科と呼吸器内科で、常勤医師2名を招聘し、患者さんのニーズに応えて参ります。今後の計画としては、さらに地域医療に貢献するため、近隣の大学病院や総合病院(聖マリアンナ医科大学病院等)と連携し、高齢者救急にも注力していければと考えています。
当院では、急性期治療を終えた患者さん向けに、自宅や施設に戻るためのリハビリを行っています。手術後すぐには体力が戻らない高齢者の方も多いため、筋力の回復や嚥下評価を行うなど、さまざまなサポートを提供しています。近隣の大学病院や総合病院などとも密に連携しており、重症状態を脱した患者さんが安心して日常生活へ戻れるよう橋渡し役を担っています。
また、地域連携パス(肺炎パス)を導入しており、大学病院や総合病院の呼吸器内科で診断、治療が行われた患者さんの受け入れも行っています。各施設で役割を分担することで、地域全体で継続的に患者さんを支えていければと考えています。
2024年には新たに泌尿器科を開設しました。これまで泌尿器科疾患については当院で診療ができず、他の医療機関に紹介せざるを得ない状況でしたが、泌尿器科の開設により内科と連携して包括的な診療が可能となりました。
現在、泌尿器科専門医(日本泌尿器科学会認定)が常駐しており、PSA高値や排尿障害、血尿、結石、尿失禁、尿道カテーテルのトラブルなど、幅広い泌尿器科疾患に対応しています。ご高齢の方が多い当地域において、専門的な泌尿器科診療を提供できるようになったことは、地域医療への貢献にも大きな役割を果たします。
2025年4月には整形外科と呼吸器内科の医師をそれぞれ招聘します。
整形外科においては、これまで非常勤医師が外来診察しておりましたが、今後は常駐するため、内科等と連携して高齢者の疾患としてよく見られる腰痛や骨折、首から下の筋肉、関節、骨の運動器の障害などに対して、全般をタイムリーに対応できるようになります。
また、呼吸器内科については、一般内科に留まらず、誤嚥性肺炎や慢性呼吸器疾患などにも対応できる内科専門医(日本専門医機構認定)・呼吸器内科専門医(日本呼吸器学会認定)の資格を有する女性医師が2025年4月から入職します。呼吸器内科は、肺がん、COPD(肺の炎症性疾患)、間質性肺炎や喘息など幅広い疾患に対応できることから、ご高齢の方が多い当地域において、専門的な呼吸器内科診療を提供できるようになったことは、地域医療への貢献にも大きな役割を果たします。
当院は、訪問診療にも注力しています。通院が困難な方や緩和医療を必要とされる方、難病などにより人工呼吸器を装着されている方など、さまざまな状況の患者さんに対応しています。また、在宅療養中に容体に変化が生じた際には、当院での入院対応も可能です。
訪問診療においても通常の診療と変わらず、患者さんの視点に立ち、患者さんとそのご家族に寄り添ったきめ細やかなケアを心がけています。
また、当院を運営する医療法人社団晃進会では、健診センターをはじめ、居宅介護支援事業所や、グループの関連社会福祉法人では特別養護老人ホームなどを複数運営していますので、地域の医療と介護をつなぐワンストップサービスを提供することができます。
地域の皆さんの健康と在宅医療への理解を深めるため、年に一度、市民向けの公開講座『たま日吉大学オープンカレッジ』を開催しています。在宅医療の重要性と可能性を伝えることなどを目的に、当院の医師や看護師、管理栄養士、作業療法士などが、リアルな経験を交えながら講演しています。多くの方に参加いただいており、2024年は定員40名を大きく上回る80名もの応募があり、地域の方々の関心の高さを実感しました。
また、2024年度は麻生区民祭に病院として初めて出店し、簡易血管年齢測定コーナーが3時間待ちになるなど関心が高い区民との橋渡しのイベントなどを実施しています。
これらの取り組みを通じて、医療に関するリテラシー向上そして地域の健康増進に貢献していければと考えています。
私たちは、患者さんとそのご家族に寄り添い、心からの信頼と安心を提供することをもっとも大切にしています。高齢の患者さんが多い当院では、単に診療を行うだけでなく、在宅での医療から介護、入院治療、そして退院後のサポートまで一貫したケアを目指しています。訪問診療、訪問看護、訪問リハビリ、服薬指導など、幅広いサービスを通じて、患者さんの生活全体をサポートしていくことが私たちの使命です。
診療においては、優秀な医師であることも大切ですが、それ以上に患者さんに親身に寄り添える存在でありたいと考えています。医療は技術だけではありません。“診て終わり”ではなく、ちょっとした声掛けや、継続的なフォローと寄り添いの精神を伝えることが、選ばれる病院になるために大切なことだと信じています。
これからも、ホスピタリティの心を大切に、患者さんとそのご家族に平等で温かい医療を提供し続けてまいります。
*写真提供……たま日吉台病院
*医師や提供している医療の内容等についての情報および、病床数などの数字は全て2024年12月時点のものです。