院長インタビュー

“地域医療の最初の窓口”として幅広い診療を行う北播磨総合医療センター

“地域医療の最初の窓口”として幅広い診療を行う北播磨総合医療センター
西村 善博 先生

北播磨総合医療センター 病院長

西村 善博 先生

目次
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兵庫県のほぼ中央に位置する北播磨医療圏のうち、小野市と三木市の医療機関を統合する形で誕生した北播磨総合医療センター。2013年の開設以来、各分野で専門性の高い医師による幅広い診療を行ってきた同センターの役割や今後について、病院長である西村 善博(にしむら よしひろ)先生に伺いました

外観
提供:北播磨総合医療センター

当センターは小野市、三木市、西脇市、加西市、加東市、多可町の5市1町からなる北播磨医療圏に属し、このうち小野市と三木市の市民病院を統合する形で2013年10月に誕生しました。当初から“患者と医療人を魅きつけるマグネットホスピタル”となることを目指してまいりましたが、おかげさまで開院10周年の節目を迎えた昨年は医師数が2倍近くに増え、よりいっそう充実した医療をご提供できるようになりました。

兵庫県のほぼ中央に位置する北播磨医療圏の人口は、他の地方都市と同様に減少傾向にあり、高齢化も着実に進んでいます。今後はさらに地域の各医療機関との連携を強化し、それぞれが役割分担をしながら、地域に暮らす皆さまの暮らしを支えていくことが私たちの使命だと考えています。

当センターは開院当初からがん治療をはじめとした専門性の高い医療を担ってまいりました。この実績が認められて2023年4月には厚生労働省より“がん診療連携拠点病院”の指定を受け、がんに対する専門的な診療を行っています。

がん治療の選択肢には、手術、化学療法(抗がん薬治療)、免疫療法などがあり、手術については体への負担が少ない低侵襲治療(ていしんしゅうちりょう)に積極的に取り組んでいます。また、放射線治療、緩和ケア、セカンドオピニオンなどにも幅広く対応し、遠くの大学病院などへ足を運ばずとも地域の中で質の高いがん治療をご提供できることも特徴です。

二次救急医療機関の役割を担う当センターの救急科は、常時医師2人体制で対応しています(2024年2月時点)。地域柄、救急車で運ばれて来る患者さんの多くはご高齢の方で、肺炎尿路感染症など内科的な病気を診ることが多いでしょうか。こうした“よくある病気”にしっかりと対応できるのはもちろんですが、脳卒中心筋梗塞(しんきんこうそく)など“命に関わる病気”についても専門的な治療を行えることが強みです。

脳卒中を担当する脳神経外科・内科のチームは365日24時間体制で救急対応し、脳梗塞に対する血栓回収療法などを行っています。また、心臓や血管の病気を担当する循環器内科でも365日24時間体制で、急性心筋梗塞に対するカテーテル治療に対応するとともに、大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう)に対するTAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)なども行っています。かつては胸を大きく切って手術をする必要があった病気も、カテーテルを使った血管内治療を行えるケースが増えてきました。そうした低侵襲手術に対応できる血管内治療が得意な医師が在籍していることも、当センターの特徴と言えるでしょう。

先端医療センター内の“ロボット手術部門”では、手術支援ロボット(ダヴィンチ)を活用して体への負担が少ない手術に取り組んでいます。センター長には神戸大学より、前立腺がん治療を専門とする医師が着任し、泌尿器科を筆頭に各診療科において良好な治療成績を得ています。

2015年のダヴィンチ導入当初は前立腺手術のみが保険適用となっていましたが、今日までに保険適用範囲が拡大し、前立腺がんに加えて胃がん大腸がん肺がん、腎がんなどの手術などにおいてもダヴィンチを使用できるようになりました。ダヴィンチによる手術は傷口が小さく出血が少なく済むため、術後の痛みが軽減され回復が早いなどのメリットがありますので、さらに保険適用範囲が広がっていくことを期待しています。

外観
提供:北播磨総合医療センター

救急車で運ばれて来る患者さんや、発熱などの症状がある急性期の患者さんは、必然的に医療につながることになります。一方で慢性疾患のある方の中には、適切な医療を受けられていない方も少なくありません。私の専門は呼吸器なのですが、呼吸器の代表的な病気である喘息の患者さんは日本人の10%を占めるといわれます。このうち5%の患者さんは重症喘息とされ、たとえ発作が起こらなくても日常生活が制限されてしまいます。

患者さんの中には「仕方がない」「こんなものだ」と受け入れている方もいらっしゃいますが、適切な医療介入を行うことで生活の質が大きく改善するケースもあります。当センターで適切な検査行って診断をつけた後、その後のフォローはかかりつけの先生に担っていただくなど、一人の患者さんを地域の中で支えていく仕組みづくりができたらいいなと考えています。

小野市と三木市を中心に北播磨医療圏の5市1町、約28万人の命と健康を守っていくためには、当センター単独では難しい面もあるでしょう。私たちが急性期医療や専門性の高い医療を担うことはできても、残念ながら退院後のリハビリテーションや在宅支援までは手が回りません。当院に入院された患者さんが、一日でも早く元の生活に戻れるように支援していくことも私たちの大事な役割だと考えています。

救急対応やがん治療において質の高い医療をご提供するのはもちろんですが、今後はさらに地域医療連携を強化し、地域の中で切れ目のない医療をご提供したいと思います。医療の質を担保しつつ、患者さんの安心感や納得感を得られるように、力を尽くしたいと考えています。

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