院長インタビュー

茨城西南医療センター病院が担う地域医療の役割

茨城西南医療センター病院が担う地域医療の役割
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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茨城県猿島郡にある茨城西南医療センター病院は、三次救急医療や周産期医療を中心に地域の医療ニーズに取り組んできました。同院の診療体制や今後について、院長の上杉 雅文(うえすぎ まさふみ)先生に伺いました。

当院は1946年に組合病院として開設されたことから始まり、2年後の1948年には茨城県厚生連に移管。その後診療科が徐々に新設されて、1991年には総合病院としての認可を受けました。そして、1994年に現在の“茨城西南医療センター病院”に名称を変更しています。

当院は茨城県の南西端、千葉、埼玉、栃木、群馬の各県に隣接する県境にもほど近い境町にあります。358の病床、28の診療科を擁しており、県南西地域の医療の中核的な役割を担っています。

なかでも当院は地域の三次救急医療機関の指定を受けており、直ちに治療が必要な重症の患者さんを救命救急センターにて24時間365日体制で受け入れています。また、当院は地域周産期母子医療センターの指定も受けており、ハイリスクな妊婦さんの分娩等も可能です。

さらに当院は茨城県がん診療指定病院でもあり、手術療法、化学療法(抗がん薬治療)、放射線療法のがんの3大療法を兼ね備えた集学的治療を患者さん一人ひとりに合わせて行っています。

当院のある古河・坂東医療圏は医師数が少なく、医療資源に恵まれているとは言い難い地域です。そのような地域で当院は救命救急センターを設置して三次救急医療を担い、生命の危機を直面する重篤な患者さんを各診療科と連携のもと、24時間体制で対応します。

また、当院は2019年よりドクターカーの運用を開始し、古河・坂東医療圏を中心に医師や看護師が同乗して現場で直ちに処置を行える体制を整えています。さらに当院では茨城県ドクターヘリと連携してヘリコプターによる患者さんの搬送を受け入れており、今後も救命救急活動においてより迅速かつ適切な対応がとれるよう設備の拡充を図っていきたいと思っています。

当院は茨城県の地域周産期母子医療センターとして、24時間365日、必ず産婦人科医・小児科各1名が病院内で待機する体制を整えています。健康な妊婦さんからリスクの高い患者さんまで当院周辺や県外から妊婦さんを幅広く受け入れており、安心して出産を迎えていただくための周産期医療を提供しています。周産期(妊娠22週から生後満7日未満までの期間)やその前後は、母子共に異常が生じやすく、母体や胎児、新生児の生命に関わる事態となる恐れがある期間です。そのような突発的な事態に対応するため、当院は何らかの病気がある赤ちゃんを集中的に治療する新生児集中治療管理室(NICU)を備え、新生児の診療や退院後のケアを行っています。

また、当院の産婦人科は“安全に母児とも経過・退院していただきたい”をモットーとしており、たとえば帝王切開率は周産期センターとしてかなり低い2割程度とする、会陰切開をできるだけ行わない、といった対応をしています。

当院は茨城県がん診療指定病院として、がん治療に対する包括的なアプローチを提供しています。当院のがん治療では予防から診断、手術療法、化学療法(抗がん薬治療)、放射線療法の3大療法を兼ね備えた集学的治療から緩和ケアまで一貫した医療体制を整えており、筑波大学附属病院や国立がんセンターなどと連携しつつ専門的な知識や技術を組み合わせ、患者さん一人ひとりに合わせた治療を提供します。

また、当院は治療以外にもがんに関するさまざまなご相談を無料で受け付ける“がん相談支援センター”を設置しており、治療費やセカンドオピニオン、終末期医療などの不安や疑問にお答えしています。相談は直接のご来院やお電話で対応しており、ご利用にあたっては事前のご予約が必要です。

さらに当院では、がん診療に関わる医療スタッフ全員が緩和ケアの基本的な知識と技術を習得するための研修を受けており、多職種で構成された緩和ケアチームが患者さんとご家族の苦痛を和らげる医療を提供しています。緩和ケアが必要な方はぜひご相談ください。

都道府県別にみると、茨城県の医療施設に従事する医師数(人口10万人あたり)は全国ワースト2位です(「令和4年茨城県医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」より)。そして、当院の位置する古河・坂東医療圏は県内においても医師不足地域となっています。

この問題に対処するため、当院は筑波大学と連携し、2020年に当院の中に筑波大学附属病院古河坂東地域医療教育センターを設置しました。センターでは、地域の医療資源を活用し、持続可能な救急医療システムの構築と医師教育を推進しています。2024年現在は4名の専門教員が在籍し、救急医療の指導や耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、消化器外科の診療体制の整備を行っており、地域医療の充実と医療体制の強化が進行中です。さらには院内外での医学教育研修を通じて、医療従事者や一般市民、学校、コメディカルスタッフへの教育も行い、地域の医療・保健・介護・福祉分野に幅広く貢献していく予定です。

これまでさまざまな機能を整備してきた当院ですが、今また時代の変化に合わせ、新しい取り組みが求められています。時代の変化と社会的なニーズに対応し、当地域の地域医療構想を念頭に、医療提供体制の充実や地域連携を進めて、持続可能な地域医療の提供体制を構築してまいります。

この地域の医療をこれまで以上に充実させることができるよう、皆さんのご協力をお願い申し上げます。

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