北海道札幌市白石区に位置する札幌北楡病院は、臓器移植や血液内科、人工透析治療を得意としています。開院当初から研究所を併設しており、一般診療を行いながら医学研究にも力を入れています。現場で働くスタッフの考えや提案を柔軟に取り入れ、治療に生かしている同院について、社会医療法人北楡会 札幌北楡病院 院長 目黒順一先生にお話を伺いました。
札幌北楡病院は1985年に高度先進医療を日常の診療に役立てることができる施設を目指して開院しました。病院の開設とともに人工臓器移植研究所を併設しています。病院の開設後は、診療科を拡充し、病床数の増加、建物の増改築を行ってきました。
ICU(集中治療室)の増床や緩和ケア病棟、地域包括ケア病棟を新たに開設し、医療を提供しています。また、2003年には医療法人社団 開成病院と合併し2013年には白石肛門科胃腸科病院と合併しました。白石肛門科胃腸科病院と合併したことを受けて、肛門外科を新たに開設するなど、時代のニーズに即した医療提供をするためにさまざまな取り組みを行っています。
以下の項目では、当院が行った取り組みについてご紹介します。
2003年にICU(集中治療室)や緩和ケア病棟の一部の病室を除く病室をすべて個室に変更し、患者さんのプライバシーに配慮した設計にしました。また、病室内にはバス・トイレが完備されており、入院生活のなかでも周りの方々に気を遣う頻度が減り治療に専念していただくことができます。
さらに、当院の病室はほとんど個室になっていますが個室料(差額ベッド代)はいただいていません。
地域包括ケア病棟は2016年に新たに開設しました。地域包括ケア病棟に入院される患者さんは、急性期治療の終了後に、自宅での療養や施設へ入所するにはまだ不安が残っていることがあります。そのような患者さんの在宅復帰を目標として看護やリハビリテーションを行う病棟のことを地域包括ケア病棟と呼びます。
いわゆる団塊の世代が75歳以上になる2025年をめどに、地域包括ケアシステムの構築をすることは急務でもあります。当院でも地域包括ケアシステムの一部を担い、地域のみなさまに安心して生活していただけるように努力しています。
当院の地域包括ケア病棟では、急性期治療は行わないけれど、足腰を悪くしリハビリテーションが必要な地域の方を受け入れることもあります。
緩和ケア病棟は2015年に開設しました。緩和ケア病棟の開設の背景には、がん患者さん等のお看取りの際にはふさわしい環境を作ろうといった考えがありました。
緩和ケア病棟の各個室にはバルコニーが付いており、景色や季節の花を楽しむことができます。
緩和ケア病棟は特別個室1床以外を除き、個室料(差額ベッド代)をいただいていません。
当院の診療科のなかでも特に力を入れているのは、腎臓移植外科や血液内科、小児思春期科及び、低侵襲外科手術を行う消化器外科です。また、人工透析治療の患者さんに行うバスキュラーアクセス手術も得意としています。診療科だけでなく、最新の医療機器の導入を積極的にしています。たとえば、2013年に手術支援ロボット「da Vinci(ダヴィンチ)」を導入し、泌尿器科での手術や胃がん、大腸がんなどの手術でも使用することがあります。「da Vinci(ダヴィンチ)」を導入した当初は、北海道内でも保有している施設が少なく、当院でも新たな試みでした。
さらに、放射線科ではCTやMRIをはじめとした検査機器を多く取りそろえています。また、がん治療のひとつとして行う放射線治療ではライナックナイフを用いることもあり、患者さんの治療ニーズに合わせた治療計画を立てることが可能です。
以下では、腎臓移植外科、血液内科、小児思春期科、消化器外科、バスキュラーアクセスセンターについてお話しいたします。
腎臓移植は、当院の開設当初から行っており、民間病院でも臓器移植が実施できるように施設基準の獲得をし、現在でも精力的に腎臓移植を行っています。腎臓移植外科は2009年に新たに開設し、医師だけでなく専任の移植コーディネーターを配置しました。
また、腎臓移植では内視鏡を使用した低侵襲な手術で行う頻度も多くなってきました。特に女性の患者さんに腎臓移植を提供する場合には内視鏡下手術を行うようにしています。内視鏡を用いた手術では、傷跡が小さくあまり目立たないことや患者さんへの負担が少ないことが期待されています。
血液に発生する病気のなかでも、白血病や血液がん、多発性骨髄腫、などの悪性疾患や、再生不良性貧血、溶血性貧血などの難病に指定されている病気の治療を行っています。
当院は骨髄バンクや臍帯血バンクの移植認定施設に認定されているため、血液疾患に対する移植を多く行うことができます。また、1986年に北海道内ではじめて同種骨髄移植という移植方法を実施した実績があります。
血液内科では主に成人を対象とした治療を行っていますが、小児の血液疾患の治療は小児思春期科で行っており、患者さんのなかには道内のみならず海外から治療を受けにいらっしゃる患者さんもいます。
胃がん、大腸がん、肝がん、胆石症、鼠径ヘルニア等多くの手術を内視鏡下で行っています。2017年1月から12月の内視鏡外科手術の実績は170件でした。多くの患者さんの早期社会復帰を目指して努力しています。
バスキュラーアクセスとは、血液透析を行う患者さんに造設する血液の経路のことを指します。血液透析は、体内から一度血液を取り出し、浄化した血液をもう一度患者さんの体内に戻します。バスキュラーアクセスセンターでは、バスキュラーアクセスとなる自己血管内シャントの作製や人工血管の移植手術、バルーン拡張などの経皮的血管治療を行います。
同センターではバスキュラーアクセスの作製だけでなく、修復も得意としています。バスキュラーアクセスが細くなってしまった、詰まってしまったなど北海道中から緊急で来院される患者さんも多くいらっしゃいます。
若手医師には、なぜ自分が医療者の道を選んだのか、自分の医師になりたいと思った最初の気持ちを大切にしてほしいと思います。病気で苦しんでいる患者さんをよくしたい、と思い、医療の道に進んだのではないでしょうか。その思いを維持するために、患者さんを主体にして色々なことを考えることができる医師になってほしいと思います。
また、当院は一般診療を行いながら、臨床研究や学会活動、論文の発表に力を入れている医師が多く在籍しています。たとえば、血液内科や小児思春期科、さらには腎臓移植外科の医師は国際学会に定期的に論文を発表したり、シンポジウムに招集されたりなど多くの実績を残しています。さらに、麻酔科の医師は人工透析患者さんに手術をする際の全身麻酔の方法を確立させた論文を発表しています。これは全国の麻酔科*の医師が透析患者さんの手術をする際のスタンダードになっています。
繰り返しますが、自分が医療者の道を志したときの気持ちを忘れずに、手技や知識を深めていってほしいと思います。
麻酔科標榜医:中尾康夫先生
札幌北楡病院は、地域のみなさまに親しんでもらえる病院を目指しています。その取り組みのひとつとして、地域包括ケア病棟の新設やリハビリテーションスタッフの増員を行いました。また、がんサロンや患者会をつくり、定期的に患者さんやそのご家族と病院スタッフがお話しをする機会も設けています。お気軽にご参加ください。
現場のスタッフは、患者さんによりよい治療を受けていただくために日々さまざまなことを考え、工夫しています。また、工夫したいことを私に提案してくれるスタッフもおり、よりよい治療を提供するために努力を惜しまない姿勢を感じています。スタッフ一同今まで以上に努力を重ねていきますので、今後も札幌北楡病院をよろしくお願いいたします。
社会医療法人北楡会 札幌北楡病院 院長
社会医療法人北楡会 札幌北楡病院 院長
日本外科学会 指導医日本消化器外科学会 消化器外科指導医日本透析医学会 透析指導医日本医師会 認定産業医・健康スポーツ医
1974年に医学部を卒業後、北海道大学医学部第一外科教室に入局。消化器外科を学び始める。医局に所属しながら、道内の大小の病院勤務と大学での勤務(短期出張あり)を繰り返す生活であった。
大学以外で勤務した病院は、旭川厚生病院外科、上湧別厚生病院外科、町立厚岸病院外科、足寄町立国保病院外科、池田町立病院外科、市立芦別病院外科などであり、スポット的には長万部町立病院外科や、帯広協会病院外科にも出張した。
1984年の市立芦別病院在籍中に、札幌北楡病院の設立のお誘いを受け、翌年から札幌北楡病院での勤務を開始した。外科部長、副院長を経て現在に至る。この間の1988年には、肝移植の臨床を見聞する為に、西ドイツ(当時)のHannover医科大学移植外科に2ヶ月弱滞在した。翌年の1989年11月にベルリンの壁が崩壊したことを、印象深く思い出す。
移籍後には、臨床とともに、病院に当初から併設されている人工臓器・移植・遺伝子研究所で動物実験等を行っていたが、そのうちの一つの、家兎腎を用いた常温下灌流保存実験を行い、この成果により1993年に医学博士号を授与された。
現在は院長職のかたわら、北海道医師会常任理事(救急医療部長)として、二足のわらじで活動している。
目黒 順一 先生の所属医療機関
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。