院長インタビュー

親切で小回りの利く総合病院を目指して―明和病院の取り組み

親切で小回りの利く総合病院を目指して―明和病院の取り組み
山中 若樹 先生

医療法人信和会 明和病院 理事長

山中 若樹 先生

目次
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医療法人信和会 明和病院は、兵庫県西宮市にある総合病院です。もともとは川西航空機という企業の社員のために作られた付属の鳴尾病院でしたが、戦後は地域住民の支えとなる病院として運営されてきました。

病床数257床という中規模病院ながら、ERやがん診療など急性期医療や周産期医療など中心に地域住民のニーズに幅広く対応しています。また2024年元旦に、第2病院である “めいわリハビリテーション病院”が開院しました。第2病院では慢性期のケアを一手に担っており、回復期リハビリテーション病棟・透析室・療養病棟・地域包括ケア病棟を備えています。急性期から慢性期まで、地域で幅広い役割を担う明和病院の特徴や取り組みについて、同院の理事長である山中 若樹(やまなか なおき)先生にお話を伺いました。

明和病院は、戦前から西宮市に建ち、救急医療やがん医療を中心とした急性期医療を地域住民に提供し続けています。

西宮市は人口増加地域ではありますが、高齢化も徐々に進んできています。そうした地域の幅広いニーズに対応するため、各診療科に加え複数の専門外来を設け、地域を支える医療機関として機能の充実に努めています。

また、冒頭にもあったとおり2024年元旦には、慢性期医療を中心とした第2病院が開院しました。これにより、明和病院ではより急性期に特化した医療提供を行い、第2病院では慢性期医療を提供するという体制が整いました。これからは2つの病院で密に連携を取りながら、より強固に地域医療を支えていければと思っております。

元旦にオープンしためいわリハビリテーション病院は、療養型病院である坂上田病院の療養病棟と明和病院の地域包括ケア病棟などの3病棟が合わさって生まれました。現在、回復期リハビリテーション病床、地域包括ケア病床、療養型病床として全部で153床を擁し、透析医療も含め、専門のスタッフがチームで患者さんを支えられるよう体制を整えています。

当院は、2021年10月より“がん診療連携拠点病院”として兵庫県より指定を受けています。以前より、がん診療には力を入れて取り組んでおり、特に肺、肝臓、胆道、膵臓、胃・大腸、乳腺・甲状腺、頭頚部のがん診療は積極的に取り組んでいる医療の1つでもあります。手術を軸としたがんの集学的治療を推進すべく明和キャンサークリニックを併設しています。そこで放射線治療装置やPET-CT検査、温熱療法などを行うことができます。

さらに、外来化学療法室、がん患者の患者会、腫瘍精神外来など、がん医療に関連する環境を整備して、よりよいがん医療を提供できるよう努めています。

明和キャンサークリニックにある“温熱療法(ハイパーサーミア)”とは、電磁波によりがん細胞を加温することで、がん組織だけを死滅させる治療法であり、化学療法などほかの治療法と併用することでがん治療の効果を高めることが期待されます。同クリニックでは、厚生労働省より認められた、保健適用になっている治療装置を使用しているので、安心して治療を受けていただけるのではないかと思います。

外科では2001年より内視鏡下手術を開始しており、現在では肺、消化管、肝臓や膵臓、胆のうに対して内視鏡下による手術を行っています。そして2023年10月には、さらなる安全性の向上や低侵襲(ていしんしゅう)性を目指して、手術支援ロボット“hinotori”を導入しました。

hinotoriは国産の手術支援ロボットで、アームが従来のロボット機器より改良されており、より緻密かつ繊細な動きが可能となっています。現在、胃・大腸がん手術に適用していますが、今後、骨盤臓器脱、前立腺手術、肝胆膵手術、肺にも拡大していく予定です。

産婦人科では、婦人科領域の病気の診断・治療に加え、妊婦健診や分娩・出生前診断などにも対応しています。希望に応じて無痛分娩も行っています。

小児科に加えて小児外科も標榜しています。小児科の医師不足が叫ばれる現在、小児外科の存在は民間病院ではなかなか希少ではないかと思います。小児外科では、鼠径ヘルニア虫垂炎、腸重積など小児特有の手術などを行っています。

当院の強みの1つとして、スポーツ整形も挙げられます。なかでも膝前十字靱帯損傷半月板損傷の治療には定評があります。施設内にかなり広い明和アスレティックリハビリテーションセンターで医師や理学療法士、アスレティックトレーナーが協力して治療やリハビリテーションを行い、良好な成績を収めています。その実績が評価され、FIFAメディカルセンターとしても認定されています。

地域密着型病院を掲げる当院では、北米型ERを採用し、1~2次救急まで幅広く対応しています。救急搬送数は年間2,000~3,000件、受診者総数は約7,000~8,000名に昇ります(2010年度~2021年度)。その約半数が、60歳以上の高齢者です。高齢者救急の大部分は誤嚥(ごえん)による肺炎心不全、転倒、骨折、感染症などです。超高齢化社会が進み、在宅医療の現場や施設から多くの高齢者が運ばれてきますので、高齢者救急に応えることが地域医療として肝要です。

2010年に総合健診センターを開設し、予防医療にも力を入れています。特定健診から人間ドック脳ドックやPET-CTなどさまざまな健診コースを取りそろえ、年間30,000名ぐらいの方に利用していただいています。

この健診センターは、病院に併設されているため、何か異常が指摘されればすぐに治療につなげることができるというのが利点です。病気の予防や早期発見、治療を一貫して行うことで、地域の方々が元気に長く生きるためのサポートができればと考えています。

これからは西宮市にもさらに超高齢化が進んできます。ご高齢の方は、さまざまな病気をお持ちのため、その都度違う病院を受診するのは大変です。できる限り専門を持ちながら総合診療のできる医師を育てたいと思います。高齢者に便利なように、院内処方としています。

当院の経営方針は理念浸透型・健康経営です。2021-22年に健康経営優良法人として認定されました。職員が健康でなければ、理念である信頼と親切に基づいた医療を提供できません。職員の健康管理推進のため、管理者レベルの方には人間ドック受診を進めています。乳腺・子宮検診などは低額で受けられるように配慮しています。

山中 若樹先生

若手の医師に伝えたいことは、若い頃には診療の幅を広く持てるような土台を作っておいて欲しいということです。早くから専門領域に自分を閉じ込めることなく、幅広く診療できるように勉強してほしいと思います。どんな患者さんでもみようという貪欲な姿勢が必要です。専門領域に関しては、それから磨けばよいと思います。総合診療能力の高い、親切で信頼できる医療を提供できる医師になってください。 

地域住民のみなさまに伝えたいことは、我々は小回りの利く親切な総合病院でありたいということです。そのために、「明和病院に来ると皆やさしくて雰囲気が明るい、小回りが利く」といわれるような病院を目指したいと思います。

*病床数、診療科、提供する医療の内容等についての情報は全て2024年4月時点のものです。

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