院長インタビュー

断らない救急の実践、がん診療センター始動――洛和会音羽病院が目指す「大切な人を紹介できる病院」

断らない救急の実践、がん診療センター始動――洛和会音羽病院が目指す「大切な人を紹介できる病院」
黒田 啓史 先生

洛和会音羽病院 病院長

黒田 啓史 先生

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京都市山科区にある洛和会音羽病院は、同区で長年にわたり急性期の医療を担っています。
同院は2025年4月に黒田(くろだ) 啓史(ひろし)先生が病院長へ就任してから、救急医療の維持・発展はもちろんのこと、がん診療のさらなる拡充にも取り組んでおり、2026年10月を目途に「がん診療センター」の始動を予定しています。黒田病院長に、同院が果たすべき役割や注力する専門分野、そしてこれからの地域連携のあり方についてお話を伺いました。

当院を運営する洛和会ヘルスケアシステムの原点は、1950年に下京区で開院した矢野医院で、地域の方々に医療を届ける町の医院(クリニック)としてスタートしました。その後、1973年には医療法人社団洛和会を設立。この洛和会音羽病院は1980年に開設され、救急医療や急性期医療の機能を段階的に強化しながら、長きにわたって地域の医療を支えてまいりました。現在は、山科区で急性期の医療を中心に行う、44の診療科を持つ病院となっています(2026年9月時点)。

私は京都市内の別の病院に20年以上勤め、 2025年4月に当院の病院長へ就任いたしました。着任してまず感じたのは、医療職だけでなく事務部門の職員が病院運営に深く入り込み、しっかりと体制を根底から支えているということでした。こうした強固な組織力があるからこそ、山科区の方はもちろん、京都市の東部や滋賀県の大津市などの方々も当院に来院されるのだと感じています。

そんな当院のスタンスを象徴するのが、できる限り断らない救急の実践です。当院では年間でおよそ7,000件の救急搬送を受け入れており、応需率は毎月95%前後を維持しております(2025年4月から2026年3月のデータ)。24時間365日の体制を続けることは容易ではありませんが、救急科の専従医師だけが救急の患者さんにあたるのではなく、各診療科の医師が当直に入ったり、大学からの応援をいただいたりと、病院全体で支え合って救急医療に向き合っています。

なお、山科区には当院以外で400床を超えるような救急病院がないことから(2026年9月時点)、救急においては1次救急(自身で来院できるような軽症の患者さんへの救急医療)から中等症、準重症と呼ばれる2.5次救急までを幅広く受け入れています。一方で、真に重篤な3次救急が必要な患者さんは大学病院などにお願いするといった役割分担を行い、地域の消防とも密に連携をとることで、この地域の救急医療が滞りなく回るよう尽力しています。

循環器内科は、当院の大きな柱の1つです。この10年ほどで診療体制を強化してきたことで、狭心症や心筋梗塞(しんきんこうそく)に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)などの件数も増えてまいりました。心臓血管外科の医師も在籍しており、内科と外科が連携しながら循環器疾患の診療にあたる体制を整えています。

不整脈の領域では、心房細動などに対するカテーテルアブレーション治療にも対応しています。近年はパルスフィールドアブレーションという新しい方法も取り入れ、治療の選択肢を広げているところです。

スピードが求められる脳卒中の診療においても、迅速かつ適切な対応ができる体制を整えています。当院は日本脳卒中学会から、2025年に全国で200施設程度しか認定されていない一次脳卒中センター(PSC)コア施設としての認定を受けており、カテーテルを用いた脳血管内治療を行う医師のほか、開頭手術を行う医師も24時間常駐しています。それにより、急を要する状態で搬送されてきた患者さんに対し、それぞれを得意とする医師が協力して治療法を速やかに検討し、実行に移すことが可能です。

整形外科も当院の主要な診療科であり、脊椎や脊髄(せきずい)、膝、股関節(こかんせつ)、上肢など、幅広い領域の診療を担っています。救急で運ばれてくる外傷の患者さんへの対応はもちろんのこと、計画的に行う手術にも取り組んでおります。
近年では人工関節置換術の手術支援ロボットを導入するなど、設備面での充実も図ってきました。高齢化が進む地域において整形外科のニーズは高まる一方ですので、大学からの医師の派遣も含め、診療体制の維持と強化を継続して進めているところです。

救急医療や、一刻を争う脳卒中・心臓の病気の治療を支えるうえで欠かせないのが、緊急手術に対応できる体制です。当院ではこの1年で麻酔科医*を増員し、夜間や休日など時間外の手術にもしっかり対応できるようになりました。非常に重い状態の場合は大学病院などのより高度な医療機関へ転送することもありますが、多くのケースは当院で治療を完結できる体制を整えています。
*麻酔科標榜医 谷美登利、市林良浩、大西和宏、篠原慶子、高田久美、岩本奈穂子、小川理恵子、清水綾子、須賀友子、智多昌哉、中村美也子、林裕志

当院ではこれまでも、それぞれの診療科で熱心にがん診療にあたってまいりました。今後はそれをさらに一歩進めるため、2026年の10月を目処に「がん診療センター」を始動させます。センターという名称にしたのは、診療科の枠を超えた横断的な連携をさらに深めたがん診療を提供するためです。

各診療科の体制も拡充を進めており、たとえば消化器内科は常勤医が2名から5名へと増員されました(2026年9月時点)。これにより、胃や大腸といった消化管から肝胆膵領域まで、より幅広く対応できるようになりました。
婦人科では卵巣がんや子宮頸(しきゅうけい)がん、子宮体がんなどの悪性腫瘍(あくせいしゅよう)の診療にあたる医師が加わり、泌尿器科や呼吸器領域についても、それぞれの科ががんの診療にあたっています。乳がんについては、大学とも連携しながら乳房再建にも対応し、センターとして充実した医療の提供を行っています。

もちろん、がん診療のための設備も充実させています。今年度(2026年度)は、放射線を多方向からピンポイントに照射することで、正常な組織の損傷を少なくしつつがん細胞を死滅させる放射線治療装置(リニアック)を最新の機種に更新する予定です。また、手術についても体への負担が少ないロボット手術を適応のある患者さんに行っています。

がん診療の入口である健診についても、グループ内の健診センターと診療科との連携をこれまで以上に密にし、早期発見、診断、手術、薬物療法、放射線治療、そして緩和ケアまでを一連の流れとしてつなぐ、切れ目のないがん治療を提供していきたいと考えています。

現在の日本の医療では、急性期の治療を行う病院、かかりつけのクリニックの先生など、各医療機関が役割を分担しつつ連携することで患者さんを地域全体で診る体制づくりが進められています。当院も以前から、紹介してくださるクリニックの先生と当院の医師の双方が患者さんの主治医となる「二人主治医制」という考え方を大切にしています。

二人主治医制は、日常的な診療は地域のかかりつけの先生にお願いし、専門的な検査や急な入院加療が必要になった場面で当院が受け入れ、状態が安定すれば再び地域の先生のもとへお返しする体制です。そのような医療の連携をスムーズに行うために、現在当院では、紹介状のやり取りを分かりやすく整備したり、予約システムや入院経過の情報共有を電子化したりといった改革を進めています。

このような取り組みによって、地域の先生方も患者さんの最新の状況を把握でき、何かあった場合は当院に相談していただきやすくなるはずです。そのような医療のあり方は、地域の患者さんにとっても安心感のあるものではないでしょうか。
当院はこれからも、地域全体で一人ひとりの患者さんを支えていく仕組みを加速させていきたいと考えています。

当院はこれからも、山科区における急性期総合病院としての役割をしっかりと果たしていきたいと考えています。そのために、地域の医療機関の先生方との確かな信頼関係のもと、断らない救急に努めるという長年培ってきたスタンスを大切に守り、がん診療をはじめ、脳、循環器、消化器、整形外科などの各診療体制をさらに充実させていく予定です。

当院が掲げるビジョンは、「地域から信頼され、大切な人を紹介できる病院へ」です。私自身、この言葉に深く共感しており、地域の方々はもちろん、医療従事者から見ても、自分の家族や大切な人を安心して任せられる病院でありたいと強く願っています。

地域の皆さんに、いざというときにはこの病院を頼ろうと思い浮かべていただけるよう、治療をして終わりではなく、その後の生活までしっかりとフォローできる体制を築いてまいります。

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