太ももが痛い:医師が考える原因と対処法|症状辞典
急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。
熊本回生会病院 院長補佐
中村 英一 先生【監修】
歩きすぎたときやスポーツの後など、太ももの痛みを感じたことのある人もいるのではないでしょうか。自然とよくなる場合もありますが、いつまでもよくならない場合や他の症状が伴うときには注意が必要なこともあります。
このような症状がみられるとき、考えられる原因にはどのようなものがあるでしょうか。
太ももの痛みには、何らかの病気やケガが原因となって起こっているものもあります。
骨や筋肉・神経が原因で太ももの痛みが引き起こされている場合、考えられる病気やケガには主に以下のようなものがあります。
背中の骨には、神経や血管が通っている脊柱管という場所があります。この脊柱管が細くなり、神経や血管が圧迫されるようになったものが脊柱管狭窄症です。
圧迫された神経が太ももにつながるものであった場合、太ももの痛みやしびれを引き起こします。また、長い時間歩くことができず、休むと痛みやしびれが回復するという間欠性跛行も特徴的な症状です。
背骨はいくつもの骨が連なってできていますが、このうち腰の骨にあたる腰椎がずれることで脊柱管を圧迫する病気が腰椎すべり症です。
やはりこの病気も神経を圧迫することから、太ももなど下半身に痛みやしびれが現れます。
背骨の骨と骨の間でクッションの役割をしている椎間板が、本来あるべき位置からずれて飛び出した状態です。飛び出した椎間板が神経などを圧迫すると、太ももをはじめ下半身に痛みやしびれが現れます。
肉離れは、筋肉が収縮した状態から急激に引き伸ばされたダメージで筋肉が断裂するケガです。特に太ももに起こりやすいとされ筋肉の断裂の度合いによって痛み方も異なります。筋肉が断裂することで腫れや内出血を起こすことが多くあります。
骨や筋肉、神経の病気やケガ以外が原因で太ももの痛みが起こることもあります。主な原因には以下のようなものがあります。
蜂窩織炎は、皮下の脂肪組織などが細菌に感染した状態です。
一般的にはケガなどの傷口から起こることが多いですが、虫刺されや自分では意識しないほどの小さい傷、傷がない場所にも発生することがあります。
蜂窩織炎は細菌感染による炎症であるため、痛みのほかに患部の赤みや腫れ、程度によっては全身の発熱などが伴います。
線維筋痛症は原因不明の病気で、全身に強い痛みを生じるものです。骨や筋肉の変異ではなく、脳内の痛みを感じる機能の異常により起こるといわれています。
痛みのほかにうつ状態や睡眠障害を引き起こすことがあります。また疲れやすい、患部がこわばるといった症状を訴えるケースもあります。
原因としては、低体温、低血圧、低血糖、甲状腺機能低下、生活環境にあるストレス(頑張りすぎる、責任感が強い、何もかも一人で背負っている状況)、運動量の低下など、さまざまなものが挙げられます。
検査では特別な異常がないのが特徴で、線維筋痛症と診断できる検査はありません。適切な診断を受けるために、早めに専門医に相談することが大切です。
スポーツなど、なんらかのきっかけがあり突然強い痛みが起こった場合には早めに受診しましょう。また、なんとなく痛みが続く・悪くなる、しびれなど他の症状があるときにも受診しておきましょう。
原因によって受診科目は分かれますが、太ももの痛みやしびれなどを主な症状として受診する場合には整形外科が適しています。また、自分では区別が難しい場合もありますので、迷ったときにもまずは整形外科でよいでしょう。
また医師に症状を伝えるときは、いつ頃から痛むか、歩行などに影響されて痛むか、きっかけの有無など、詳細をできるだけ具体的に伝えるのがポイントです。
日常生活での習慣などによって太ももの痛みが起こっている場合もあります。
ずっと立ちっぱなしの仕事など、足を酷使している場合には筋肉に疲れがたまりやすくなり、痛みの原因となることがあります。
足を使いすぎて太ももなどに痛みを感じたら、太ももやお尻のマッサージ、ストレッチなどを試してみるとよいでしょう。また、お風呂にゆっくり浸かるなどで温めるのも方法のひとつです。
筋肉痛は、筋トレなど筋肉を酷使したときに一時的に筋線維が損傷し、軽い炎症が起きている状態です。特に太ももの筋肉は大きく、運動時に負荷がかかりやすいため筋肉痛がよく起こる箇所です。
筋肉痛になったときは、安静にするよりもむしろストレッチやマッサージ、入浴などで血行を促進し、筋肉の修復を促すことが大切といわれています。ただし、痛みのある間はハードなトレーニングは控えましょう。
上記のような方法を試しても太ももの痛みが改善しないときは、思いもよらない原因が潜んでいる場合もあります。一度整形外科で相談してみましょう。