ふくらはぎのむくみ:医師が考える原因と対処法|症状辞典

ふくらはぎのむくみ

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • 片足だけが急激にむくみ、強い痛みがある
  • むくんでいる側の足の色がおかしい、異常に熱い、冷たい
  • 強い息苦しさがあり、横になる事ができない

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • むくみが長期間続いている、ひどくなっている
  • 顔や手、体など他の部位にもむくみがある

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 短時間でよくなり、その後繰り返さない

ふくらはぎを含む脚のむくみは日常的によく起こりますが、場合によっては注意が必要なこともあります。

  • むくみのある足の血管が浮き出てきた
  • ふくらはぎにむくみが出てきてから、なんだか体もだるくなった気がする
  • むくみのある足がジンジンと痛み出し、熱を持っているような感じもする

このような場合に考えられる病気や、受診の目安とはどのようなものでしょうか。

ふくらはぎなど足のむくみは、病気の症状のひとつとして現れることがあります。主な病気には以下のようなものがあります。

心不全

心不全とは、何らかの原因によって心臓のポンプ機能が低下する状態のことを指します。

心臓から十分な血液が送り出せなくなることで、息苦しさや疲れやすさなどの症状が現れるほか、水分が体内に貯留すると体重の増加や足にむくみが生じることがあります。

むくみ以外で息苦しさや疲れやすさなどの症状が出たら、早めに受診するようにしましょう。

腎不全/肝不全

腎臓の機能が著しく低下した状態を腎不全、肝臓の機能が著しく低下した状態を肝不全といいます。

腎不全であれば足・顔のむくみ、尿量の減少、息苦しさ、体のだるさ、吐き気、食欲低下など、肝不全であれば全身のむくみ、皮膚が黄色くなる黄疸、お腹に水が溜まる腹水などの症状が主として現れます。

腎不全・肝不全ともに命にかかわることもあるので、症状に心当たりがあれば早期の受診が必要です。

甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症とは、甲状腺の炎症などによって甲状腺ホルモンの分泌が少なくなってしまう病気のことで、女性に多いといわれています。

甲状腺ホルモンの分泌が少なくなることで、イライラや抑うつ、情緒不安定などの精神症状がよく現れます。また、食欲が低下するにも関わらず体重が増えるのも、甲状腺機能低下症の特徴的な症状です。

他の症状としては、むくみ(主に足やまぶた)や皮膚の乾燥、声のかすれ、月経異常(女性の場合)などが現れることもあります。

月経前症候群

月経前症候群とは、月経前の3~10日の間に続く体と心の不調のことを指し、症状は精神症状、自律神経症状、身体症状に大別されます。

よくみられるのは、精神症状としてイライラや抑うつ、不安、情緒不安定、睡眠障害など、自律神経症状として体のだるさやのぼせ、めまい食欲不振・過食など、身体症状として頭痛や腹痛、腰痛、むくみ、乳房の張りなどです。

薬の副作用

解熱鎮痛薬や漢方薬、降圧剤、ステロイド剤といった薬の服用後に、副作用としてむくみが生じることがあります。

初めて飲む薬を使用してむくみが出た場合には、勝手に中止せずすぐに処方された病院で相談するようにしましょう。

下肢静脈瘤

下肢静脈瘤とは、足の静脈が太くなって瘤(こぶ)のように浮き出た状態をいいます。

静脈が浮き出るのは、主にふくらはぎ、ひざの裏、太ももの内側で、浮き出た部分がむくむこともあります。また、多くの場合、足に痛みやだるさを感じたり、こむらがえり(ふくらはぎの筋肉の痙攣)が起こったりします。

蜂窩織炎

蜂窩織炎(ほうかしきえん)は、傷やアトピー、湿疹水虫などが原因で皮膚のバリア機能が破れ、細菌に感染して起こる皮膚の感染症です。

感染した部分にむくんだような腫れや熱感、痛みが現れることが多く、発熱や寒気、関節痛、体のだるさといった全身症状が伴う場合もあります。

深部静脈血栓症

深部静脈血栓症は、身体の深くにある静脈に血栓(血のかたまり)ができて詰まってしまう病気で、脚に起こることが多いといわれています。

深部静脈血栓症になると、詰まった部位の周辺に腫れやむくみ、痛み、熱感、発赤(皮膚が赤くなる)などの症状が現れることがあります。

リンパ浮腫

リンパ浮腫とはリンパの流れが悪くなることで、リンパ管の中にリンパ液が過剰に溜まって起こるむくみのことです。

体のさまざまな部位に起こりますが、ふくらはぎに起こることも多く、片側だけむくむこともあれば、両側がむくむこともあります。また、むくみによって重さやだるさを感じる場合もあります。乳がんなどのリンパ節郭清など手術の影響で症状が出現することがあります。

ふくらはぎのむくみ以外に、痛みなど何かしら気になる症状があれば受診しましょう。また、片方のふくらはぎだけがむくんでいるような場合にも一度受診しておくとよいでしょう。

上で挙げた原因それぞれで専門科目が異なるため、まずは近くの内科やかかりつけの医療機関などで相談してみるとよいでしょう。受診の結果専門の科目を紹介されることもあります。

受診の際には、むくみはいつから続いているのか、きっかけの有無、むくみ以外の症状などについて、医師に詳しく伝えましょう。

日常生活が原因となって、ふくらはぎがむくむこともあります。日常生活上で考えられる原因は以下のようなものが挙げられます。

仕事などで長時間立つ姿勢が続くと、足の血液やリンパ液の循環が悪くなり、細胞の隙間などに水分が停滞することでむくみが生じます。

立ち仕事が続く時は

立つ姿勢が続くことでむくみが生じる場合は、弾性ストッキングの着用で予防ができるといわれています。弾性ストッキングの着用を検討してみましょう。

また、じっとしている状態が続く時には、足の血流を良くするために、時々足首を回したり立ち踏みをしたりして筋肉を意識的に動かしてあげるのもよいでしょう。

ふくらはぎの筋肉は、心臓に血液を送り返すためのポンプの役割を果たしていますが、筋力が低下するとポンプ機能が低下して、血液をうまく送り返すことができません。その結果、血液中の水分が停滞してむくみとなって現れます。

筋力不足によるむくみを予防するには

ふくらはぎの筋力不足を感じているなら、ウォーキングや筋力トレーニングなどを定期的に行って、筋力を鍛えるようにしましょう。身近なトレーニング法としては、つま先で立ち、かかとを下す動作を繰り返すことで、ふくらはぎの筋力を鍛えることができます。

水分を摂りすぎると、血管の中の水分量が増えて血管の外に浸みやすくなります。また、塩分は体内に水を蓄えるはたらきがあるので、摂りすぎると水分がうまく体外に排出されなくなります。このような理由から、水分・塩分のいずれも摂りすぎることで、むくみを引き起こします。

水分や塩分を摂りすぎてしまったら

塩分の元となるのがナトリウムで、カリウムにはナトリウムを排出するはたらきがあります。塩分を摂りすぎてしまったら、野菜やワカメ、イモ類、リンゴやバナナなど、カリウムを多く含むものを食べるとよいでしょう。

また、食生活の改善も大切です。日頃から水分や塩分を摂りすぎないように注意し、塩分においては減塩食を取り入れる、水分に関してはがぶ飲みしない、熱めのお湯・お茶を飲むなど工夫するようにしましょう。

アルコールを飲むと血管の浸透性が高まり、血管中の水分が染み出して、むくみを引き起こすとされています。

アルコールを飲みすぎてしまったら

アルコールを飲むことで体内の水分が減少し、脱水状態になります。飲みすぎてしまったら、まずは水分を摂取するようにしましょう。

また、自分にとって適切な飲酒量を知り、適量を守る、飲酒の頻度を減らして、飲みすぎないように注意することも大切です。

自分で対策をとるのが難しい場合、対策をとっても良くならない場合には、一度病院を受診することを考えましょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。