足の付け根が痛い:医師が考える原因と対処法|症状辞典

足の付け根が痛い

國府田 正雄 先生

筑波大学医学医療系整形外科 准教授

國府田 正雄 先生

足の付け根が痛い

足の付け根にある股関節は、立つ・座る・歩くなど日常の動作で頻繁に動く部位であることから、体の中でも特に負担がかかりやすく、痛みが出ることが多くあります。

  • 最近、歩く時や座って足を組む時などに足の付け根に痛みを感じるようになった
  • 急に足の付け根が痛くなった…気にせず過ごしていたら痛みが強くなってきた
  • 朝起きた時だけ足の付け根がこわばる感じがあったり痛みがでる

このような場合に考えられる原因には、どのようなものがあるでしょうか。

足の付け根に強い痛みが生じている、痛みが長く続いている、歩くのが難しい場合には、何らかの病気が原因となっていることがあります。

足の付け根に痛みが現れる病気の多くが骨や関節、筋肉に関連しています。

変形性股関節症

変形性股関節症とは、股関節の軟骨がすり減って関節が変形する病気のことをいいます。

初期には足の付け根やお尻、膝の上部にこわばりや重い感じを自覚し、主に立ち上がりや歩き始めといった動作で痛みを感じるようになります。

進行すると痛みが強くなることが多く、昼夜を問わず常に痛みが続くことも少なくありません。日本では大部分は、小さい頃に先天性股関節(亜)脱臼があった方が、その影響で成人してから変形性股関節症を発症するといわれています。

股関節脱臼

正常な股関節は、太ももにある大腿骨(だいたいこつ)の大腿骨頭と呼ばれる骨が、骨盤のくぼみにはまり込む形で形成されています。この骨とくぼみが完全に外れている(脱臼)、または外れかかっている(亜脱臼)と、足の付け根に痛みが現れるようになります。

一般的に先天性のものとは異なり、強い衝撃や力が加わった時に起こるケガとされており、強い痛みのため歩行できなくなります。緊急に整復(脱臼を戻すこと)しないと後日大腿骨頭壊死になってしまう危険性が高いと言われています。足の麻痺を合併することも少なくないので注意を要します。

 

大腿骨近位部骨折

大腿骨近位部骨折とは、太ももにある大腿骨の骨盤に近い部位(大腿骨近位部)に起きる骨折のことを指します。

大腿骨近位部が骨折すると足の付け根に強い痛みが現れ、ほとんどの場合、痛みの影響から立つことや歩くことができなくなります。

 

関節リウマチ

関節リウマチとは、関節の内面を覆う滑膜(かつまく)と呼ばれる部分に炎症が起きる病気です。手足の指関節に起こりやすいといわれていますが、頻度は少ないながら股関節にも発症します。

関節の痛みや腫れ、朝のこわばりが主な症状として現れますが、微熱や体のだるさ、食欲不振といった全身症状が伴うこともあります。

特発性大腿骨頭壊死症

特発性大腿骨頭壊死症とは、大腿骨頭の血流が悪くなり骨が壊死(骨組織が死んだ状態)して骨折する病気です。

足の付け根に急に痛みが現れるのが一般的ですが、腰や膝、お尻の痛みから始まる場合もあります。

腰椎椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症

腰椎(ようつい)とは背骨の腰の部分を構成している5つの骨のことで、骨と骨の間に椎間板(ついかんばん)というクッションの役割を果たす軟骨があります。この椎間板が何らかの原因によって正常の位置から外れて、後方の脊髄や神経根(脊髄からでる神経線維)を圧迫する病気のことを腰椎椎間板ヘルニアといいます。

腰椎椎間板ヘルニアになると、多くの場合、腰痛のほかにおしりから足にかけて痛みやしびれが現れます。まれに尿が出にくくなる排尿障害、便が出にくくなる排便障害が起こることもあります。

腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)とは、背骨の中にある脊髄が通る空間が狭くなる病気のことです。

腰痛や足の痛み・しびれなどが症状として現れますが、足の痛みやしびれは安静時にはまあまり感じず、立ったり歩いたりした時に痛みが生じ、座って休むと症状が軽快する傾向にあります。

どちらの場合も、腰の神経が刺激されて足の付け根に痛みが出ることもよくあります。この場合、足をねじったりあぐらをかいたりしても痛みは変化しません。

  

上で挙げた病気のほかにも、鼠径ヘルニアや鼠径リンパ節炎なども原因として考えられます。

鼠径ヘルニア

鼠径ヘルニアとは、腸などが足の付け根の筋肉の隙間から飛び出してしまう病気のことです。

初期症状としては、足の付け根に違和感や痛みが現れることが多く、痛みは長時間の動作で徐々に表れてくるのが特徴です。進行すると、腸などが飛び出したことによるふくらみを自覚するようになります。

 

鼠径リンパ節炎

鼠径リンパ節炎とは、ウイルスや細菌などによって足の付け根のリンパ節に炎症が起きる病気です。

足の付け根にズキズキとした痛みや腫れ、しこりが現れるのが一般的で、炎症が強いと熱を持つこともあります。

痛みが強い場合、軽い痛みでも続いている場合、歩行が難しい場合には、股関節や大腿骨の病気が疑われます。このような症状があれば一度、整形外科への受診を考えましょう。

受診の際には、どのような時に痛むのか(歩く時に痛い・何もしなくても痛いなど)、いつ痛むことが多いか(朝・夜など)、股関節が動かしにくくなっているか、他にどのような症状があるかなど、分かる範囲で詳しく伝えましょう。

足の付け根に痛みが現れるのは、病気が原因になっているだけでなく、肥満や運動不足、血行不良といった生活習慣が関係していることもよくあります。

股関節は、体重を支えるために重要な役割を果たしており、歩行時に体重の約3倍、起立時に体重の約6〜7倍かかるといわれています。

体重が重くなると股関節への負荷が大きくなることから、体重が重いほど痛みが現れやすくなります。

正しいダイエットをするには

痩せるためには、食事の制限と運動の実施が基本となります。

極端な食事制限や偏った食事などで無理に体重を減らすと健康に害を及ぼす可能性がありますので、ダイエットがうまく行かない人は一度医師に相談してみると良いでしょう。

股関節の周囲には、腸骨筋や大腰筋、長内転筋といった筋肉があります。運動不足などによって股関節周囲の筋力が低下すると股関節への負担が大きくなり、関節軟骨がすり減って摩擦が起きやすくなります。そして、その摩擦が炎症を引き起こし痛みとして現れます。

運動不足を解消するには

痛みがあると運動をさらに控えてしまいがちですが、運動不足が原因であれば、運動して股関節周囲の筋力を鍛えることが重要となります。ウォーキングやストレッチ、体操など、軽い運動から始めるのが良いでしょう。

ただし、痛みがある時に運動すると、かえって痛みが強くなってしまう可能性があります。痛みのない時に無理のない程度で行うようにしましょう。

体が冷えると血管が収縮するなどして筋肉に老廃物が溜まり、筋肉が硬くなります。硬くなった筋肉は血管を圧迫して血行不良になり、血行不良からますます筋肉が硬くなります。

股関節の周囲にはさまざまな筋肉がありますが、血行不良からその筋肉が硬くなって動きが鈍くなり、いつも以上に関節に負担がかかることで、関節に痛みが生じるとされています。

冷えや血行不良を防ぐには

日常生活で体を冷やさないようにする、体を温めるようにすることが大切です。具体的な対策としては、冷房を控える、体が冷えやすい服装を控える、体を温める食べ物を摂取する、軽い運動を取り入れる、入浴するなどです。冷えが原因だと感じる場合には、これらの対策を実施してみましょう。

上で挙げた対処法を試してもよくならない場合、思わぬ原因が潜んでいる可能性もあります。一度整形外科で相談してみましょう。