足が動いてしまう:医師が考える原因と対処法|症状辞典
急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。
国立精神・神経医療研究センター病院 脳神経内科診療部 医長、医学博士
向井 洋平 先生【監修】
ストレスや不安感が高まったときなどにじっとしていられなくなり、無意識のうちに足が動いてしまうという症状は日常的によくみられる症状の1つです。しかし、足が自分の意志とは関係なく動いてしまうといった症状は、足の運動を担う脳、神経、筋肉などの異常によって引き起こされるケースも少なくありません。
これらの症状が現れるとき、原因としてどのようなものが考えられるでしょうか?
自分の意志とは関係なく足が勝手に動いてしまう症状は、以下のような病気によって引き起こされることがあります。
足の動きを促したり抑えたりする脳の機能に異常が生じる病気によって、足が動いてしまうという症状が引き起こされることがあります。
具体的には以下のような病気が挙げられます。
舞踏運動とアテトーゼは、運動を調節する大脳基底核の機能に異常が起こることで生じる動きであり、舞踏運動は足や体幹など体の一部に不規則で早い不自然な動きが繰り返し起こります。一方、アテトーゼは体の一部がゆっくり流れるような動きをするのが特徴で、両者は同時に生じることも少なくありません。
遺伝性の病気であるハンチントン病のほか、全身性エリテマトーデス、甲状腺機能亢進症、脳出血や脳梗塞、薬の副作用が主な原因となります。
体の動きを制御する脳の視床下核と呼ばれる部位が脳出血や脳梗塞などによって損傷することで起こる病気で、発症すると片脚や片腕を突然投げ出すような激しい動きが生じます。
舞踏運動の一種と考えられていますが、舞踏運動よりもダイナミックな動きが生じ、歩行など日常生活のさまざまな場面で支障をきたすようになるのが特徴です。
足などの筋肉に瞬時的な素早い収縮が生じる症状のことです。
健康に問題がない場合でも眠りかけたときなどに日常的に生じる症状ではありますが、肝不全・腎不全・血糖値異常・電解質異常・低酸素血症・頭部外傷・アルツハイマー病・クロイツフェルトヤコブ病・てんかんなどの病気が原因で引き起こされることも少なくありません。足を踏み出すなどの動作が引き金となり、円滑な動作に支障をきたすこともあります。
神経伝達物質の一種であるドーパミンの作用低下や鉄分不足などによって、脚に原因不明の不快感が生じる病気です。
脚を動かすと不快感が軽減するため絶えず脚を動かしたいという欲求に駆られ、安静にしていると症状が強くなるのが特徴です。重症な場合には物事に集中できない、睡眠が浅いといった症状を引き起こすことも多く、治療や薬物療法が主体となりますが、鉄分の補給など日常生活の習慣に注意する必要もあります。
抗精神病薬を長期間服用することによって運動を調節する大脳基底核の機能に異常が生じ、体の一部に自分の意志とは関係のないおかしな運動が繰り返される症状の総称を指します。具体的には、口をモグモグさせる・舌を左右に動かす・唇をしぼめる・手足に力が入る・足が勝手に動いて歩行に支障をきたすなどの症状が特徴です。
これらの症状は抗パーキンソン病薬などでも生じることがありますが、遅発性ジスキネジアとは区別されています。
足が無意識に動いてしまうという症状は、精神的な病気によって引き起こされることがあります。具体的には次のような病気が挙げられます。
発達障害の一種であり、脳の機能に何らかの異常が生じることで不注意・落ち着きがない・じっとしていられないといった症状が生じる病気のことです。
授業中などにじっと座っていられず、足を動かしたり席を立ったりすることも多く、学業や仕事に支障をきたすなど円滑な社会生活を送ることができなくなるケースもあります。
精神的な問題が身体的な症状に置き換えられることで、医学的に説明できないさまざまな症状を引き起こす病気です。
うつ病や神経症、パーソナリティ障害などが原因となることが多く、手足や顔が勝手に動く・力が入らない・震えが止まらない・立ち上がることができない・声が出ないといったさまざまな症状がみられます。
足が無意識のうちに動くという症状は、緊張感や不安感などを覚えて落ち着きを失ったときによくみられる動作の1つです。しかし、中には上述したような病気が背景にある可能性もあるため注意が必要です。
特に、自分の意志で足の動きを止めることができない、日常生活に支障をきたしている、ほかの随伴症状がある、抗精神病薬や抗パーキンソン病薬を長期間内服しているなどの場合はできるだけ早めに医師に相談しましょう。
初診に適した診療科は脳神経内科や精神科ですが、どこを受診すればよいか分からない場合はかかりつけの内科や小児科で相談するのも1つの方法です。
受診の際は、いつから症状が現れているのか、どのような場面や状況で症状が現れやすいのか、どのような症状を随伴するのかについて詳しく医師に伝え、内服中の薬剤があるときは全て医師に報告するようにしましょう。
足が動いてしまうという症状は日常生活上の好ましくない原因によって引き起こされることがあります。具体的には次のような原因が挙げられます。
過度なストレスや疲れがたまると交感神経が過度に刺激されることなどによって足や手に小刻みな震えが生じることがあります。
社会生活を送るうえでストレスや疲れを完全に避けることはできません。しかし、十分な休養や睡眠を確保し、熱中できる趣味などで適度な気分転換をすることでストレスの蓄積を防ぐことが可能です。
過度な緊張感や焦りを覚えると“居ても立っても居られない”という状態になり、いわゆる“貧乏ゆすり”と呼ばれるような足の動きが生じることがあります。
緊張や焦りを感じるような出来事、場面に遭遇したときは好きな音楽を聴く・読書・入浴など気分を紛らわせることでリラックスすることができます。また、ゆっくり深呼吸をしたりストレッチをしたりするのもよいとされています。
日常生活上の習慣を改善しても症状がよくならないときは、上述したような思いもよらない病気が背景にあることが考えられます。軽く考えず、できるだけ早く医療機関を受診するようにしましょう。