陰部の発疹(男性):医師が考える原因と受診の目安|症状辞典
メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】
陰部(股間の性器周辺)は通気性が悪く、皮膚に物理的なストレスがかかりやすい場所です。症状が出る場所の性質上、悩みを相談しにくい場所ではありますが、陰部の発疹はなんらかの病気が隠れている可能性もあることから注意しておくべき症状のひとつといえます。
陰部に発疹が出てくる原因は多岐にわたります。
こんなとき、原因としてどのようなものが考えられるのでしょうか。
陰部の発疹の原因の中には、生活を見直すことで予防できたり、改善を図れたりするものがあります。原因となる主な習慣と対処方法は以下の通りです。
陰部が不潔だと細菌が増え、感染のリスクは上がります。
お風呂などで陰部をしっかり洗い、汚れをとってあげることで感染のリスクを下げることができます。また、体を拭くタオルなどから感染する病原菌もあるため、タオルやスポンジなどは清潔なものを使用しましょう。
肌着やボディソープで接触皮膚炎を起こしていることがあります。
自分の体質にあった肌着やボディソープに変えましょう。刺激の低いものなどを選ぶことで改善されることもあります。
不特定多数との性的交渉は、性感染症のリスクが上がります。
特定のパートナーを作り、その女性以外と性交渉をしない、コンドームを必ず使用するなどの対策が考えられます。
パートナーの女性が性感染症を持っていると、それが感染し、陰部の発疹につながることがあります。
パートナーとともに性感染症の検査を受け、必要があれば治療を受けましょう。性感染症の多くはパートナーと共に治療をすることが必要です。
これらの対策を行っても症状がよくならないときには、思わぬ病気が潜んでいる可能性があります。軽く考えず、なるべく早く病院を受診して適切な診断、治療を受けましょう。
陰部に発疹ができる病気にはたくさんの種類がありますが、その中には注意すべきものもあります。
陰部の発疹は、炎症や感染症によるものである可能性があります。
何らかの物質が皮膚につくことで引き起こされる皮膚の炎症です。一般的に、かぶれと呼ばれることが多くあります。原因となるものは、赤ちゃんであればオムツ、大人であれば金属や漆など、多くのものが原因となります。
この病気では、かゆみやヒリヒリとした感覚、皮膚の発赤、水ぶくれなどを伴います。
皮膚が突然赤くくっきりと盛り上がり、しばらくすると跡を残さずに消える病気です。発疹は数十分から数時間以内で消えることが多いですが、半日から1日ぐらい続くこともあります。
症状が激しいと新しい発疹が次々に出て、常に発疹があるように見えることがあります。多くはかゆみを伴いますが、チクチクとした感じや焼けるような感じを伴うこともあります。
毛穴の奥の毛根を包んでいる部分が炎症を起こしている状態です。炎症を起こす原因は主に細菌です。毛嚢炎の発疹は、毛包に一致した赤いブツブツや盛り上がり、膿を持った発疹の周りに赤みを伴ったものです。
かゆみはないことが多いですが、発疹を押すと痛みを伴うことがあります。
陰茎の冠状溝(陰茎亀頭の下部の膨らんだ部分)に、1mmから3mmくらいのドーム状で白い発疹が並んで生じるものです。これは生理的に生じるものであるため、病的な意義はありません。ただし、尖圭コンジローマという性感染症に似ていることから注意は必要であるといえます。
水虫の原因となる白癬菌によって生じる感染症です。発疹に伴い、強いかゆみが生じます。皮膚が赤くなったり色素沈着を起こすこともあります。皮膚の変化は、太ももや性器の周囲、股の付け根、お尻の辺りまで広がることもあります。白癬菌は暖かく湿った環境を好んで繁殖する性質があるので、汗がたまりやすく暖かい環境である陰部では生育しやすいとされています。特に、太ももと陰嚢が触れる部分では通気性が悪くなりがちで、白癬菌がより増殖しやすくなります。汗をかきやすい夏場に多くみられる病気です。
伝染性軟属腫というウイルスによる感染症の一つで、幼児から小学校低学年ぐらいによくみられます。発疹は肌色からやや白色の小さなドーム状で、かゆみを感じることもあります。ウイルスのついたタオルやスポンジなどを通して感染することがあります。成人では、性交渉によって感染することもあります。
性感染症により発疹が起こることも珍しくありません。特に、不特定多数との性交渉を持つ人は注意が必要です。
ヘルペスウイルスが性器に感染して引き起こされる感染症で、陰部に水ぶくれやただれができ、痛みやかゆみが生じます。ヘルペスウイルスは、感染している人に症状がない場合でも分泌液の中には多く排泄されているため、ウイルスを持った人との性交渉があると感染します。
ヒトパピローマウイルスの感染によって生じる発疹です。発疹は性器の外側にできることが多く、先の尖った乳頭のような特徴的な形で現れます。ほとんどの場合、かゆみや痛みなどの症状は伴わず、ウイルスに感染してから数週間から数ヶ月の潜伏期間があるため、気づかないうちに病気を広げることもあり、注意が必要な病気といえます。
梅毒トレポネーマというウイルスによる感染症です。ウイルスが侵入した部位にコリコリとした小さな赤い隆起ができ、隆起は徐々に潰瘍になってきます。股の付け根のリンパ節が腫れてくることもあります。これらの症状は、3~12週間ほどで自然に消失することが多いです。しかし、放置しておくと、数か月から数年経ってから体に赤い発疹が現れることがあります。
その後、皮膚や筋肉、骨などに腫瘍が現れ、中枢神経や大動脈にも病変(病気による変化がみられる箇所)が及ぶなど、放置することにより非常に重い症状になることがあります。そのため、早期発見・早期治療が必要な病気といえます。
陰部の発疹の原因には悪性の腫瘍(がん)や難病によるものなど、見逃してはいけないものも少なくありません。
陰部の皮膚にできるがんの一種で、はっきりとした原因はわかっていません。60歳以上の方に多くみられます。発疹は赤くて湿っており、かゆみが出ることがあります。赤い病変のほかに、白や茶色の病変も混じることがあります。病気が進んでくると、病変が厚くなり、その中に結節やこぶができることもあります。
陰部の発疹のほか、陰部以外の発疹、口腔粘膜に繰り返し潰瘍ができたり、目に異常(ぶどう膜炎など)が出たりする病気です。また、関節炎、腹痛、下痢、下血などの症状を伴うこともあります。髄膜炎など、中枢神経の病気が伴うこともあります。
陰部の発疹は、気になった段階で受診を検討するのが良いでしょう。受診する科は皮膚科、泌尿器科が適しています。医師には、最近の生活の様子を性交渉の有無を含めて詳しく伝え、陰部の発疹のほかにある自覚症状(かゆみや痛み、赤みなど)をしっかりと伝えることが重要です。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。