放射線治療中には、皮膚にさまざまな変化が起こるときがあります。主な症状は赤くなる、痒み・痛みを感じるなど、日焼けに類似するものです。このようなとき、皮膚のケアはどのように行えばよいのでしょうか? また、どのようなことに注意していけばよいのでしょうか? 湘南藤沢徳州会病院の永野尚登先生にお聞きしました。
IMRT以降、皮膚に対する副作用も減りつつあります。それでも、放射線治療を長期間受けるとき(場合によっては長期間受けないときも)などは、照射部位の皮膚に下記のような4つの変化が起こります。ただし、多くの場合、これらの変化は放射線治療が終了してから1~2ヶ月経つと元に戻ります。
皮膚炎、発赤:新しい日焼けのように皮膚が赤くなります。前述のとおり、放射線の副作用で皮膚が赤くなる現象と、日焼けのメカニズムは類似しています。これらはどちらとも光線に対する皮膚の反応と考えましょう。また、りんごのように赤くなることもあります。対策としては、かかず、こすらず、冷やすことが大切です。
皮膚の乾燥:皮膚がカサカサに乾燥してきます。粉が吹いてくることもあります。
皮膚剥離(皮膚が剥がれてしまうこと)・水ぶくれ:皮膚がジクジクしてしまったり、水ぶくれのようになることがあります。やけど程度にまで悪化することはほとんどありませんが、皮膚が剥離していくこともあります。ただし、ここまでいくことはそう多くはありません。
色素沈着:日焼けのあとのように、黒く色素沈着が残ることがあります。これを「ピグメンテーション」と言われます。
1) 冷やすことが大切
特に「皮膚炎、発赤」の段階ではこれがもっとも大切です。日焼けへの対応と同様です。
皮膚がほてって熱くなったり、かゆみやヒリヒリ感がある場合にはとにかく冷やしましょう。冷やす際は氷やアイスノン、濡れタオルを用います。なお、アイスノンは皮膚に当たったときに刺激になってしまうことがあるため、なるべく柔らかい製品を使用しましょう。
冷やすことは、それ自体に副作用の予防効果があるわけではありませんが、「日焼けの悪化」を防ぐためにも大切な対策です。
2)ローションや軟膏を使うとき
「皮膚の乾燥」までの間には乾燥がメインなので、ローションを使います。「皮膚剥離・水ぶくれ」の段階に到達し、皮膚がむけはじめてからは軟膏を使います。
軟膏を使うときには注意が必要です。なぜなら、皮膚の状態次第では軟膏を使うことにより皮膚の症状を悪化させてしまうことがあるからです。軟膏により皮膚を刺激せず、そのまま経過をみていくことが適切なときもあります。むやみに軟膏などの薬に頼らないよう気をつけましょう。
3)創傷被覆剤を使うとき
皮膚剥離が起きてしまったときには創傷被覆材(そうしょうひふくざい)を使用することもあります。また、洗う必要があるときには、ぬるめの食塩水で洗浄するとしみにくくなります。真水はしみやすいため、できる限り避けます。
日焼けした皮膚をこするのが良くないのと同様、こするのも掻くのもよくありません。
軟膏のところでも述べましたが、悪化につながることがあります。基本的にはできる限り避けた方がいいです。薬や化粧品は、厚く塗れば塗るほど副作用が強くなります。特に、塗り薬をつけたまま放射線治療をしてしまうと危険です。具体的に述べると、厚さとして3mmくらいを超えたあたりから急激に照射線量が上がってきます。さらに、化学物質が放射線で活性化されてしまうこともあります。
また、日焼け止めを塗るのも放射線治療にはよくありません。日焼け止めが放射線の光線を吸収してしまうからです。患者さんに日焼け止めや化粧水・塗り薬の使用を尋ねられた時、私は「わざわざ使うことはありません」と説明します。
記事1:放射線治療とは―目的、メカニズム、準備
記事2:放射線治療の方法―外部照射について
記事3:放射線治療の方法―内部照射について
記事4:放射線治療のメリットと効果
記事5:少なくなりつつある放射線治療の副作用と有害事象
記事6:放射線治療の副作用―急性期の具体的な副作用
記事7:放射線治療中の日常生活―注意すべきこと
記事8:放射線治療中の日常生活―皮膚の副作用と皮膚ケアについて
湘南藤沢徳洲会病院 放射線科 主任部長
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