白内障の治療は、より小さい傷口、患者さんにとってより小さい負担を目指した結果、素晴らしい手術が行われるまでに発展しました。手術器具や使用する器械の発展とともに、水晶体の代わりとなる眼内レンズもまた発展しています。
1949年に最初に生まれた眼内レンズは、イギリスの眼科医ハロルド・リドレー先生が発明したPMMA(ポリメチルメタクリレート)というプラスチックでできた硬いレンズでした。このレンズは値段が安いため、発展途上国や国内でも使用している施設があります。しかし、直径6ミリある眼内レンズをそのまま入れるとなると、傷口も6ミリ広げなければなりませんが、傷口はなるべく小さくする必要があります。なぜ傷口の大きさにこだわる必要があるかと申しますと、炎症や傷口からの細菌感染を防ぐという目的に加え、切った大きさの3乗に比例して起こる「乱視」を防ぐためです。乱視は、目の表面の角膜にひずみがあることで生じます。つまり、大きく切ってしまうと、術前に乱視がなかった眼にも、手術によって乱視を作ってしまうことになるのです。せっかくきれいな眼内レンズを入れても、角膜のひずみで焦点が一点に合わないために、遠方に眼内レンズを合わせた場合、景色はぼけてしまいますし、近方に合わせた場合には字はぶれて読めません。結局、乱視を矯正するためのメガネが必要になってしまいます。乱視のメガネは、床が浮いて見えたり、壁が傾いて見えたり、非常にかけにくいものです。
乱視は、傷口が2ミリ以下だと発生しないという研究結果があります。2ミリを超えなければ角膜をまったくもとどおりの状態に復帰させることができるからです。しかし、超音波乳化吸引術によって時間が短縮でき、傷口が小さくでき、患者さんの負担も減らすことができるようになっても、どうしてもネックになっていたのが眼内レンズの硬さです。そこで、小さな傷口からも入れることができる、シリコン製あるいはアクリル製のやわらかい、折りたためる眼内レンズが登場しました。6ミリのレンズを半分に折れば、3ミリの傷口からも入れることができます。しかし、以前はピンセットを使って眼内レンズを入れていたため、レンズの幅の問題に加え、レンズを折った分の厚みとピンセットの幅の厚みも考慮すると4ミリ近くの傷口が必要でした。シリコンに比べ、屈折率の高いアクリルのほうが厚みを抑えることができますが、小さい傷口から安全かつ確実にレンズを入れる方法をもっともっと追求する必要がありました。
そこで、2004年インジェクターという器具をつくりました。眼内レンズをこよりのように丸めて傷口から挿入できる器具です。インジェクターは昔からあった器具ですが、小さな傷口からレンズを挿入できるような性能はなく、入れる技術も十分ではありませんでした。昨年2015年は10,398件のフェイコ・プレチョップ手術を行いましたが、すべて1.8ミリの傷口で行いました。このインジェクターがなければ実現できませんでした。
2005年ベルリンの学会でこの小さく切って大きな眼内レンズを入れる「極小角膜切開超音波乳化吸引手術」を発表したのですが、発表した当時はそんな事ができるとは誰も信じませんでした。手術のビデオを見ても聴衆はただ唖然として拍手もまばらで、そのうち嵐のような喝采が巻き起こりました。2ミリ以下の小さな傷口から白内障を手術し、6ミリのレンズを移植するなど、常識では考えられないことなのです。ある日の学会では、コンピュータグラフィックとヤジが飛んだこともあります。しかし「本当にそんなことができるのならばやって見せてくれ」と、今までに世界66ヵ国の学会から招聘を受けて満演や公開手術を行ってきました。それからずっと、「1.8ミリの傷口で白内障を取り除き6ミリの眼内レンズを移植する」という方法が私の標準的な術式になっています。世界中どこの病院を探しても、これだけ小さい傷口からこれだけ早いスピードでこれだけ多くの手術を安全かつ確実に行っている所は他にありません。
三井記念病院 元眼科部長、日本橋白内障クリニック・秋葉原アイクリニック 委託執刀医
三井記念病院 元眼科部長、日本橋白内障クリニック・秋葉原アイクリニック 委託執刀医
日本眼科学会 眼科専門医
「手術で目を治す医師になりたい」という少年期からの夢を一心に追い眼科医に。外来、手術に明け暮れ、1992年、誰でも簡単に安定して白内障手術を行えるフェイコ・プレチョップ法を生み出し、4年後の1995年にはオリジナル手術器具プレチョッパ―を開発。特許申請をせず、世界中どこのどんな医師でも患者に負担の少ない質の高い手術を行えるよう、術式と器具の普及に努める。世界66ヵ国で手術法や技術を教える傍ら、2015年度は年間10,398件もの白内障手術を執刀した。「よりよく見えるように治す」患者第一主義の眼科医として臨床の道をひた走る。
赤星 隆幸 先生の所属医療機関
関連の医療相談が25件あります
白内障手術後
11月に強度近視からくる白内障手術を受け虹彩偏位になったがかかりつけ医に戻された。かかりつけ医はすぐに再手術しないととれにくくなると言われ白内障手術をした病院で再手術を12月に行った。虹彩整復・瞳孔形成術をしてから日数は経っていないが、夜ふとした時やサイドミラーから後ろの車のベッドライトや対向車のライトや街灯などから光の線が視えるようになった。車のフロントガラスが割れているような感じです。右目で、右から左へ効果線のようなものが1つの光に対して20〜30本前後全てがキラキラと光り、虹色が混じっている。白内障手術後に眼鏡を作ったが度があっていないからであろうと言われた。眼鏡を作りかえても裸眼でも視える。診察まで2週間あるが、だんだんと視えるのが酷くなってきた。眼内レンズもズレていないから大丈夫と言われていたが本当に大丈夫か心配。
白内障の手術について
見えにくさから検査を受けましたら白内障と診断されました。いずれは手術になるかと思いますが先進医療での手術と今までの手術はどう違うのかよくわかりません。 先進医療対応の眼科を選べば良いですか?
レンズの入れ替えは、しないほうがいいでしょうか?
右目を5月15日、左目は、5月22日に手術をしました。手術した直後は、右目1.2が、今、0.4です。両目で、0.9です。手元は、老眼鏡を使用しています。中には、手術時、どうしても微妙にレンズがずれることが、あるとのことで、メガネで調整するしかないそうです。レンズを入れ替えすることは、出来ないでしょうか?執刀して頂いた先生は、リスクがあることや、大学病院でないと出来ないと、言われました。
眼内レンズについて
白内障の手術にあたり、眼内レンズを多焦点にするか単焦点にするか悩んでおります。 費用的な問題ではなく、どちらにするか悩んでいます。 現状は、左右とも強い近視で、矯正しないと全く見えません。 仕事は、事務系でほぼパソコンを使います。 通勤に片道40分車の運転があります。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「白内障」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。