赤星先生は、傷口を2ミリ以下にできれば、もとの角膜の状態を保持したままで乱視を起こさずに手術をすることができる、ということを自らの技術開発をもって証明されました。しかし、もともと乱視を持っている眼の方が手術を行った場合、術後にその乱視がそのまま残ってしまうという課題に直面します。白内障の治療だけでなくもともとあった乱視まで治すために、患者さんのより高いQOV(クオリティ・オブ・ビジョン/視力の質)をめざして新しい挑戦を続ける三井記念病院赤星隆幸先生に、最新眼内レンズの種類についておうかがいします。
患者さんのQOVを上げるためには、白内障だけを治療するだけでは十分でないと考えます。たとえば、もともと近視の強かった方が白内障の手術を行った場合、従来の屈折度数と同じ眼内レンズだと術後でもものすごく厚い近視用のメガネをかけなければなりませんでした。しかしそれだけでは、患者さんの「白内障」という部分の負担を軽減することはできても、より高い満足を感じてもらうことはできません。現在では、患者さんのご希望に合わせて、望ましい屈折状態になるよう眼内レンズで近視や遠視の度数を調節することができます。もとが強い近視で牛乳瓶の底のようなメガネをかけていた方は、眼内レンズにより40センチの手もとの距離が裸眼で見えるようになり、日常かけるメガネも極めて薄いものになります。また、コンタクトレンズを使っていた方は、コンタクトを入れなくても同じように遠方が見えるようにすることができるのです。
さらに、乱視においてもそれを矯正できるトーリックレンズが登場しています。乱視にはひずみが起こっている方向があるのですが、そのひずみの方向に合わせて眼内レンズをセットすると乱視を消すことができます。ただし、この眼内レンズの角度が1度回転すると乱視矯正の効果が3パーセント失われてしまいます。このひずみの角度にぴったり合わせることができないと、さらに乱視を悪化させてしまうことになりかねません。ですから、トーリックレンズを使用する場合は非常にデリケートで高度な手術技量が要求されます。成功すれば裸眼視力の質を大幅にアップさせることが可能なのです。
乱視矯正用のレンズは、わずかなずれもあってはなりません。従来のマーキングは、大工さんが使っている水準器のような器具を使って行われていました。ガラス管に泡が入っていて、傾けると泡が移動してズレがわかります。その水準器をつけたマーカーを使って目に印をつけるという手術をしていたため、マーキングの精度も非常に低いものでした。そこで、今から5年ほど前、電子式トーリックマーカーというマーキング用の機器も僕がつくってしまいました。
傾いていると「ピッピッピッ」と音が鳴り、LEDランプがオレンジに点灯します。水平だと音が鳴らずランプが緑に点灯します。この機器は、0.1度の精度で乱視の軸をマーキングすることができます。昨年私が行った10,398件の白内障手術のうち、4,074件にトーリックレンズを使った手術を行いました。この数は世界一の症例数です。この機器の導入によってすごくよい結果が得られています。
三井記念病院 元眼科部長、日本橋白内障クリニック・秋葉原アイクリニック 委託執刀医
三井記念病院 元眼科部長、日本橋白内障クリニック・秋葉原アイクリニック 委託執刀医
日本眼科学会 眼科専門医
「手術で目を治す医師になりたい」という少年期からの夢を一心に追い眼科医に。外来、手術に明け暮れ、1992年、誰でも簡単に安定して白内障手術を行えるフェイコ・プレチョップ法を生み出し、4年後の1995年にはオリジナル手術器具プレチョッパ―を開発。特許申請をせず、世界中どこのどんな医師でも患者に負担の少ない質の高い手術を行えるよう、術式と器具の普及に努める。世界66ヵ国で手術法や技術を教える傍ら、2015年度は年間10,398件もの白内障手術を執刀した。「よりよく見えるように治す」患者第一主義の眼科医として臨床の道をひた走る。
赤星 隆幸 先生の所属医療機関
関連の医療相談が25件あります
白内障手術後
11月に強度近視からくる白内障手術を受け虹彩偏位になったがかかりつけ医に戻された。かかりつけ医はすぐに再手術しないととれにくくなると言われ白内障手術をした病院で再手術を12月に行った。虹彩整復・瞳孔形成術をしてから日数は経っていないが、夜ふとした時やサイドミラーから後ろの車のベッドライトや対向車のライトや街灯などから光の線が視えるようになった。車のフロントガラスが割れているような感じです。右目で、右から左へ効果線のようなものが1つの光に対して20〜30本前後全てがキラキラと光り、虹色が混じっている。白内障手術後に眼鏡を作ったが度があっていないからであろうと言われた。眼鏡を作りかえても裸眼でも視える。診察まで2週間あるが、だんだんと視えるのが酷くなってきた。眼内レンズもズレていないから大丈夫と言われていたが本当に大丈夫か心配。
白内障の手術について
見えにくさから検査を受けましたら白内障と診断されました。いずれは手術になるかと思いますが先進医療での手術と今までの手術はどう違うのかよくわかりません。 先進医療対応の眼科を選べば良いですか?
レンズの入れ替えは、しないほうがいいでしょうか?
右目を5月15日、左目は、5月22日に手術をしました。手術した直後は、右目1.2が、今、0.4です。両目で、0.9です。手元は、老眼鏡を使用しています。中には、手術時、どうしても微妙にレンズがずれることが、あるとのことで、メガネで調整するしかないそうです。レンズを入れ替えすることは、出来ないでしょうか?執刀して頂いた先生は、リスクがあることや、大学病院でないと出来ないと、言われました。
眼内レンズについて
白内障の手術にあたり、眼内レンズを多焦点にするか単焦点にするか悩んでおります。 費用的な問題ではなく、どちらにするか悩んでいます。 現状は、左右とも強い近視で、矯正しないと全く見えません。 仕事は、事務系でほぼパソコンを使います。 通勤に片道40分車の運転があります。
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