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白内障とはどのような病気? 原因や発症のしくみ、検査方法について

白内障とはどのような病気? 原因や発症のしくみ、検査方法について
増田 洋一郎 先生

東京慈恵会医科大学附属病院 眼科 講師・診療医長

増田 洋一郎 先生

目次
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白内障は、目の中でレンズの役割を担う“水晶体”という器官が濁り、視機能の障害をきたす病気です。多くの場合は加齢により発症しますが、外傷や全身疾患などが原因となる場合もあります。気になる症状があるときは、症状の程度や治療方針などを確認するために、視力検査をはじめとした詳細な検査を受けることが大切です。

今回は、白内障の原因や発症のしくみ、検査、手術が必要なケースなどについて、東京慈恵会医科大学附属病院 眼科 講師・診療医長の増田(ますだ) 洋一郎(よういちろう)先生に伺いました。

白内障とはどのような病気?

眼球の前方には、水晶体とよばれる透明な器官があります。この水晶体がすりガラスのように濁る病気を白内障といいます。白内障になると、濁った水晶体を通して見ることになるため、視界がかすみ、視力が落ちてきます。また、外からの光が目の中へ入るときに光の乱反射を発生させ、まぶしさを感じるという自覚症状が出てきます。

白内障の患者数は大変多いと考えられていますが、統計データが存在しないため正確な数は分かっていません。その理由として、白内障を発症した方が必ずしも眼科を受診するわけではないことが挙げられます。白内障の手術件数は、日本で年間約130万件を超え、その件数は年々増加しています。

白内障の原因としては、次のようなことが挙げられます。

もっとも多いのは加齢による白内障ですが、外傷や病気などが原因で若い方でも白内障を発症する場合があります。赤ちゃんに生まれつきの白内障がみられることもあります。

若いときに白内障を発症した患者さんに多い原因は、たとえば“ボールを目にぶつけたことがある”というような、目の外傷です。受傷した当時は一時的な痛みなどで軽快し、視力障害が出なかった、もしくは手術が必要にならなかったにもかかわらず、その後の経過で白内障が進行し手術が必要になるケースがあります。外傷の後に白内障を発症するまでの経過は個人差があります。

もう1つ、若い方の白内障の主な原因として、アトピー性皮膚炎*などの全身疾患があります。たとえばアトピー性皮膚炎の場合、皮膚の炎症に関わるサイトカインというタンパク質の影響や、患者さんがかゆみを和らげるために目の周辺を強くこすったりたたいたりすること、また治療に用いるステロイド薬などが白内障発症の原因と考えられています。

*アトピー性皮膚炎:かゆみを伴う湿疹が皮膚に生じる病気

白内障を発症する原因やプロセスが違っても、結果として引き起こされるのは、水晶体の“クリスタリンタンパク”という透明なタンパク質の混濁です。

たとえば加齢による白内障の場合、年齢を重ねるとともに水晶体の端から水晶体上皮細胞が分裂し、それがクリスタリンタンパクとなって水晶体の中心に入っていくことが発症に関わっています。クリスタリンタンパクは何層にも重なって、中心部分にある核は年齢とともに密集していきます。それが徐々に黄色っぽく変性することにより、白内障をきたします。

水晶体は、眼球の前方でレンズの役割をしている器官です。レンズが濁ると、視機能の障害をきたします。すりガラスを通して物を見るような状態をイメージすると分かりやすいかもしれません。

具体的には、視力検査表の小さな文字が読めないというような視力の障害、まぶしく見える羞明(しゅうめい)、明暗や色彩の差が分かりにくくなるコントラスト感度の低下などをきたします。

白内障の見え方(イメージ)

白内障の進行は患者さんによってさまざまです。たとえば加齢性の白内障は、長い年月をかけて徐々に進行していきます。“今まで見えていた景色が見えにくくなった”、“読めていた本が読みにくくなった”と自覚して診断されるケースは、多くの場合で加齢性の白内障です。アトピー性皮膚炎外傷が原因で起こる白内障は、徐々に進行するケースもあれば、ある頃から急に片目が見えなくなるといった経過をたどるケースもあります。

白内障は治療によって回復が期待できる病気ですが、世界では失明*原因の1位が白内障となっています。その理由として、発展途上国では治療を受けられない方が多いことや、地域によっては紫外線を浴びやすいことなどが考えられています。

*失明:世界保健機関(WHO)では“視力がよいほうの目の矯正視力が0.05未満”と定義。

白内障の検査では、白内障の程度、乱視の程度、白内障以外の病気がないか、といったことを詳しく調べます。当院では、白内障の診断に必須である視力検査のほか、次のような検査を組み合わせて行っています。

細隙灯顕微鏡検査()は、眼科医が行う顕微鏡の検査です。目に光を当て、水晶体の濁りや厚みの程度、水晶体を包むカプセル(水晶体嚢(すいしょうたいのう))や水晶体周囲組織の構造や脆弱性など、目の中の異常を調べます。この時点で水晶体を支えるチン小帯という部分の脆弱性が明らかに認められた場合、手術の難易度が非常に高くなるため後述する低侵襲手術(ていしんしゅうしゅじゅつ)による治療方針を計画します。

目の中を観察しやすいよう、瞳孔を広げる作用がある散瞳薬(さんどうやく)という目薬を用いて行いますが、『難症例に対する低侵襲な白内障手術——東京慈恵会医科大学附属病院の取り組み』で述べる急性緑内障発作のリスクになるため患者さんの目の構造によっては使用を控える場合もあります。

前眼部OCTは、水晶体を含めたそれより前方の部分(前眼部)で断層写真を撮影する検査方法です。水晶体の厚みや位置異常、目の中の房水という液体の排出口にあたる隅角(ぐうかく)の形状、乱視の強さや軸度(角度)などを計測します。

乱視の計測について

乱視の強さや軸度については、屈折度測定装置や白内障手術支援システムも利用して詳しく計測します。

また、当院における白内障手術支援システムを利用した手術では、手術用顕微鏡を外来の検査機器とネットワークでつなぎ、乱視矯正用眼内レンズの適切な設置位置を術中にリアルタイムで確認できることから、より精度の高い手術を行うことが可能です。

東京慈恵医科大学附属病院 白内障手術支援システムを用いた手術の様子
東京慈恵会医科大学附属病院 白内障手術支援システムを用いた手術の様子

白内障では物の濃淡(コントラスト)を判別する力が低下することから、コントラスト感度の計測を行うことがあります。

眼底検査では、白内障とは別の病気がないかを確認するため、網膜や視神経の状態を調べます。

角膜内皮細胞数が少ないと白内障手術後に水疱性角膜症(すいほうせいかくまくしょう)を発症し、視力が低下して角膜移植手術が必要になることがあります。

当院では、事前に角膜内皮細胞数が少ないことが判明した場合、角膜によりいっそう負担の少ない手術に努めています。また、術後に角膜移植を行う可能性が高い場合は、白内障の手術前に当院の角膜を専門とする医師と相談し、適切な対応を取れる体制としています。

“今まで見えていたのに見えづらくなった”、“見えにくくて生活に支障をきたしている”というような場合には、眼科の受診をおすすめします。また、ゆっくりと進行する加齢性の白内障や、右目と左目の見え方が異なるケースなどは、自分で白内障と判断することが難しい場合があります。そのような場合も眼科を受診していただき、白内障であるのか、ほかの病気であるのか明確な診断をつけることが必要です。

白内障は、診断と自覚症状によって治療の適応が決まります。重要なのは、詳細な検査を行って適切な診断をつけることだと考えています。まずは、日本眼科学会専門医などの眼科疾患を専門とする医師に、診断と治療の必要性について説明を受けてください。そして、患者さん自身がしっかりと納得したうえで、白内障の治療を受けるかどうかを選択されることをおすすめします。

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