筑波大学附属病院 水戸地域医療教育センター
梶 有貴 先生
群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 ...
徳田 安春 先生
Choosing Wisely
首の前側には、「頸動脈」という二本の大きな動脈があり、脳へと血流を供給しています。頸動脈のうち一本でも血流が悪くなると、脳梗塞につながる可能性があります。
動脈硬化により狭窄や閉塞の起こった動脈を’通す’ための手術は「頸動脈内膜剥離術(CEA:carotid endarterectomy)」と呼ばれています。狭くなった動脈が見つかれば、CEAを受けるべきか考える場合もあるでしょう。しかし、もし症状がないのであれば、CEAを受けるか否かは慎重に検討する必要があります。以下にその理由を記します。
脳梗塞や脳梗塞の前触れ(一過性脳虚血発作:TIA)などを起こしたことがある場合、CEAはさらなる脳梗塞を防ぐのに有効でしょう。動脈の流れが非常に悪い場合も、有用である可能性は高いといえます。
しかし、このような場合でなければ、手術を受けるメリットは少ないかもしれません。脳梗塞の危険性を減らすためなら、生活習慣の改善や薬の内服などの方法も有効です。
CEAを受けることで、脳梗塞や心筋梗塞、重大な合併症を発症することがあり、ときには死亡する例もあります。年齢が75歳以上の方や以下に当てはまる方の場合は、合併症のリスクはより高くなります。
・糖尿病
・重大な心・肺疾患
・心不全
・心筋梗塞の既往
以下のような場合は、CEAを受けることを考慮してください。
・頸動脈の血流が非常に悪く、すでに脳梗塞やTIAを起こしている場合。こういった場合は、手術によって再発リスクが劇的に減少します。
・頸動脈の流れが中程度に悪く、脳梗塞やTIAの既往がある場合。左記疾患の発症後すぐに行うのであればCEAは有効でしょう。
・頸動脈の流れが非常に悪く、脳梗塞・TIAの既往がない場合で、年齢が40~75歳であれば、手術による合併症の危険性は低いでしょう。
CEAを行う場合、担当の外科医は無症状の患者の手術合併症の発症率が低いことを確認しておきましょう。合併症発症率は3%未満であるべきとされており、それ以下の数値であることが理想です。
<自分自身を脳梗塞から守る>
手術をしても動脈の流れは再び悪くなる可能性があります。これを防ぐために、以下の方法を考えてみましょう。
●血圧のコントロール
最低でも一年に一回は血圧を測定してください。数値が高ければ、生活習慣の改善や内服薬の服用でコントロールしましょう。
●コレステロールを下げる
5年ごとに検査を受けましょう。必要ならば、コレステロールを下げる薬を飲むかどうか医師と相談しましょう。
●糖尿病のコントロール
年齢が45歳以上で血圧も高ければ、3年ごとに血糖値を測りましょう。糖尿病のリスクが高い場合はより高頻度での検査を受けるべきでしょう。血圧とコレステロールのコントロールは糖尿病において特に重要です。
●血栓を予防する
もし動脈の流れが悪ければ、血栓予防のためのアスピリン内服について医師に尋ねてみましょう。また、診察のたびに脈拍を測定してもらいましょう。脈拍のリズムの異常は血栓形成につながりやすく、特に65歳以上の場合は危険性が高まります。
●健康的な生活習慣を心がける
-果物や野菜をしっかり食べましょう
-低脂肪の酪農品、赤身肉を食べましょう
-塩分、飽和脂肪酸、精製糖を制限しましょう
-週に5回以上、最低30分以上の有酸素運動をしましょう
-余分な体重を落としましょう
-禁煙しましょう
-アルコールは、男性は1日2杯、女性は1杯までにしましょう
<脳梗塞の兆候を知る>
脳梗塞を予防するために重要です。もし以下のような症状が突然現れたら、すぐに911(★日本では119番)に電話してください。
・身体の片側のしびれや虚脱
・顔の片側が垂れ下がる
・見たり、しゃべったり、会話を理解したりすることが困難である
・めまいや協調運動の障害がある
・原因不明のひどい頭痛がある
※本記事は、徳田安春先生ご監修のもと、米ABIMによる “Choosing Wisely” 記事を翻訳し、一部を日本の読者向けに改稿したものです。
翻訳:Choosing Wisely翻訳チーム 大阪大学医学部付属病院 佐竹祐人
監修:梶有貴、徳田安春先生
群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 客員教授、筑波大学 客員教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of Hospital General Medicine 編集長
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