
東京都立小児総合医療センター 小児科 前医員、新潟大学 小児科 医員
相澤 悠太 先生
WHO Western Pacific Region Office, Field Epidem...
堀越 裕歩 先生
子どもの夏風邪として代表的な疾患のひとつである、記事1『手足口病の症状や対処法、予防-手足や口に発疹が現れたら?』について、前回東京都立小児総合医療センターの相澤 悠太先生にお話しいただきました。今回は、同じく子どもの夏風邪の一つであり、手足口病と症状が似ている「ヘルパンギーナ」の症状や対処法について、前回に引き続き、相澤先生にお話をお伺いしました。
ヘルパンギーナは、エンテロウイルスが原因となる感染症です。主に5歳以下の乳幼児を中心に夏に流行し、風邪症状と、口の中に発疹が出ます。幼稚園・保育園などの集団生活の場や、家庭内でひろく感染するため、幼いお子さんのいるご家庭では気をつけたい病気のひとつです。
ヘルパンギーナの感染経路は接触感染と飛沫感染が知られています。
接触感染
便に排泄されたウイルスが手などを介して感染する
飛沫感染
咳やくしゃみに含まれるウイルスによって感染する
毎年5月頃より増加し始め、7月頃にかけてピークに達し、9~10月にかけて減っていきます。5歳以下の乳幼児に多く発症します。
38度~40度近い高熱が出て、口の中に水疱性の発疹が現れるほかに、咳や鼻・喉の炎症、下痢などの症状がおこります。通常の風邪や、水疱性の発疹が手や足にも出る手足口病記事1『手足口病の症状や対処法、予防-手足や口に発疹が現れたら?』と初期には見分けがつかないこともあります。突然の高熱とともに、食事をとらない、口の中の痛みを訴える・口内にのみ水疱性の発疹が出る、の症状が出た場合、ヘルパンギーナを疑います。
通常、水分補給をしっかりとし、安静にしていれば、熱は1日~3日程度で下がり、口の中の発疹も1週間程度で治まります。
ヘルパンギーナには劇的に効く治療薬がなく、症状を和らげるための対症療法が基本です。ですから、症状が重くなければ自宅療養で回復します。ヘルパンギーナはかかり始めの3日間ほどは熱が高く、子どもにとってつらい病気ですが、水分補給と十分な休息、解熱剤等を服用することで、数日間で回復に向かいます。
病院でも基本的に風邪と同じ対症療法を行います。熱が高ければ解熱剤を処方し、脱水症状がひどく自力で水分補給が困難であれば点滴治療を行います。
ヘルパンギーナはエンテロウイルスが原因の感染症です。抗生物質が効かず、特効薬がありません。基本的に症状が軽い病気のため、風邪をひいたときと同じように十分安静に過ごしましょう。
ヘルパンギーナによって口の中に発疹ができた場合、発疹は時に痛みを伴い、食事をとることや飲み物を飲むことが困難になります。
子どもの場合、年齢が幼くなるほど体内の水分量の割合が多く、脱水によるダメージは大きくなってしまいます。お子さんが水分補給をうまくできずぐったりする場合は、すみやかに医療機関を受診しましょう。
ヘルパンギーナで口内にできた発疹は痛みを伴うことがあり、子どもは普段のように食事をとることを難しく感じたり、嫌がったりすることがあります。その場合は無理に食べさせず、刺激が少なく消化しやすい食事(おかゆ、うどん、雑炊など)にするなど工夫をし、水分補給をきちんとしてあげることが大切です。
ヘルパンギーナは症状が落ち着いたあとも2~4週間は便からウイルスが排出され続けます。そのため、子どもに排便後の手洗いを徹底させること・(乳幼児の場合であれば)おむつ等を適切に処理し、保護者の皆さんも手洗いを徹底することが大切です。
合併症をひきおこすことがあり、代表的なものとしては熱性けいれん、髄膜炎(ずいまくえん)、心筋炎があげられます。けいれん、頭痛、嘔吐やぐったりするなどお子さんに普段と違う様子が見られた場合、すみやかに医療機関を受診しましょう。
発熱や発疹が出る最初の数日は保育所や幼稚園、学校を休み、解熱して食事をとれるようになったら登園・登校してかまいません。症状の軽快後に医師の診断が必要な病気ではありませんが、場合によっては登園・登校許可証が必要なこともあります。
また、症状が治まったあとも便からはエンテロウイルスが排出され続けるため、感染を拡げないように手洗いをきちんと行うことを心がけましょう。
ヘルパンギーナの原因となるエンテロウイルスにはたくさんの種類があります。一度ヘルパンギーナにかかり、抗体が作られたとしても、次の流行時には違う種類のエンテロウイルスによってヘルパンギーナに再び感染する可能性があります。
一度かかったからもう大丈夫と考えず、2回以上感染する可能性のある病気であるということを覚えておきましょう。再感染を防ぐ意味でも日頃からの手洗いが大切です。
ヘルパンギーナに有効なワクチンが日本にはありません。また、病気の原因となるエンテロウイルスは、子どもから大人まで、年齢を問わず感染していても症状が出ないことがあります。そのため、感染していることに気づかなかった人の便から手を媒介し、他の人へ感染が拡がってしまいます。そのような感染を防ぐためには、有効な手段である「手洗い」をしっかりと行い、予防を徹底することが大切です。
また、以下の点にも気をつけましょう。
・おむつ等の排泄物は適切に処理し、手洗いを徹底する
・他の家族と箸やスプーン、食器、タオルなどを共有しない
お子さんに正しい手の洗い方を教えてあげると同時に、ぜひご家族みんなで実施するようにしてみてください。正しい手洗いはヘルパンギーナだけではなく、あらゆる感染症の予防策となります。
ヘルパンギーナと手足口病は、どちらも子どもに「発熱」と「発疹」という症状をもたらしますが、手や足など体にも発疹が現れる手足口病と違い、ヘルパンギーナは口内にのみ発疹が発生します。また、40度近くの高熱が出るヘルパンギーナと違い、手足口病の発熱は全体の3分の1程度にとどまり、高熱がでることはあまりないのが特徴です。
手足口病の詳しい症状や、対処法に関しては記事1『手足口病の症状や対処法、予防-手足や口に発疹が現れたら?』をご覧ください。
WHO Western Pacific Region Office, Field Epidemiologist、東京都立小児総合医療センター 感染症科 非常勤
日本小児科学会 小児科専門医・小児科指導医日本小児感染症学会 暫定指導医米国感染症学会 会員欧州小児感染症学会 会員米国小児感染症学会 会員米国病院疫学学会 会員米国微生物学会 会員
小児患児に感染症が多いにも関わらず、それぞれの診療科が独自に感染症診療を行うという小児医療の現状を変えるべく、2008年トロント大学トロント小児病院感染症科に赴任。感染症症例が一挙に集約される世界屈指の現場において多くの臨床経験を積むとともに、感染症専門科による他診療科へのコンサルテーションシステム(診断・助言・指導を行う仕組み)を学ぶ。2010年帰国後、東京都立小児総合センターに小児感染症科設立。立ち上げ当初、年間200件~300件だったコンサルタント件数は現在1200件を超える。圧倒的臨床経験数を誇る小児感染症の専門家がコンサルタントを行うシステムは、より適正で質の高い小児診療を可能にしている。現在は後進育成にも力を注ぐ。
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