院長インタビュー

すべては患者さんのために-発展を続ける総合東京病院

すべては患者さんのために-発展を続ける総合東京病院
渡邉 貞義 先生

総合東京病院 院長

渡邉 貞義 先生

この記事の最終更新は2017年07月13日です。

総合東京病院は、2010年に中野区立江古田の森公園に隣接する慈生会病院をリニューアルする形でスタートしました。開設から5年目の2014年には地下1階地上8階建てのA棟を建設し、250床から343床へと増床。

そのわずか3年後の2017年4月には、A棟の隣の6,000平方メートルの敷地にB棟を新設。A棟・B棟の合計病床数は451床になり、中野区北部地区の急性期医療を担う中核総合病院としてスケールアップし、小児から高齢者まで、さらに多くの患者さんを受け入れることができるようになりました。

総合東京病院外観

外観

総合東京病院外観 画像提供:総合東京病院

このB棟には最新鋭の診断・治療機器と手術室が導入され、脳卒中、心臓病、がんの3大疾病に対する高度先端医療を提供できる体制を整備しました。

最新鋭の装置は、

・一度の検査で全身のがんの早期発見が可能なPET-CT 2台

・血管内治療など可能なハイブリッド手術室 2室 

(血管撮影装置はトータル 5台)

・脳血管障害や腫瘍、心臓病などの診断に有用なSPECT装置

・頭部や脊椎などの病変を鮮明に抽出するMRI(3.0T 1台、1.5T 2台)

・多機能のマルチスライスCT (64列2台、320列 1台)

といった豪華なオーダーです。

病院の開設以来、「救急患者を断らない」という方針を掲げ、自らも脳血管内治療医として救急医療も率いてきた渡邉貞義院長にお話しを伺いました。

内観

スタッフステーション 画像提供:総合東京病院

新設したB棟には、救急治療センター、脳神経センター、リハビリテーションセンター、心臓血管センターなど、専門性の高い治療センターがずらり揃い、さながら治療センター棟の感があります。

いずれも総合東京病院の特色となるもので、地域から求められている救急医療と急性期医療を一段と充実させて、これまでより一層、地域の期待と信頼に応えていけると確信しています。

救急車

7年前、私の着任当初は救急医療の実績はほとんどありませんでした。創立以来、「救急の患者さんを断らない」という当グループの方針があり、それを地道に実践していこうと、3人の脳神経外科医師で当直を交代しながら救急治療センターをスタートしました。

その積み重ねを経て、どうにか地域や救急隊から信頼していただけるようになりました。毎年、救急搬送患者数や時間外受診者数が増加しており、年間5,000件に迫っています。

救急医療においては、容体の急激な悪化も珍しくなく、瞬時の的確な対応が要求されます。当センターでは新たに320列のCTを導入致しました。このCTは検査時間の短縮や心臓、細い血管などの撮影に適しており、高解像度の画像が得られます。センターには別の最新鋭のCTやMRI装置なども導入し、迅速な診断治療へとつなげています。

脳卒中脳梗塞脳出血くも膜下出血など脳血管障害の総称ですが、年間で約30万人が発症し、約12万人が亡くなります。わが国の死因別死亡率では第4位です。そのおおよその内訳は、脳梗塞が60%、脳出血が30%、くも膜下出血が10%です。脳卒中は要介護の原因疾患の第1位でもあります。もっとも多い脳梗塞の発作直後の治療は、1980年代に血栓溶解薬t-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)が開発され、2005年にようやく国内承認され、2012年に8月には、治療開始可能時間が発症後、3時間から4.5時間以内への延長が保険適応となりました。しかし、実際に使用できている割合は発症者数の4~5%にすぎません。さらにこのt-PAの有効性は約40%弱であり、また大きな動脈(主幹動脈)の閉塞には、あまり有効ではないこともわかってきました。

大多数の患者さんは、治療が後手に回ることで片麻痺・構音障害・失語・認知機能障害といった後遺症のリスクにさらされてしまうのです。当センターではできるだけ迅速に対応し、主幹動脈閉塞の場合には、t-PA の使用と同時にカテーテル室へ行き、血管内治療で血栓の回収を行っております。このように血管内治療体制をきっちりと整えることで、後遺症のリスクを大幅に軽減しています。

当院には日本最大級の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が合計約200名在籍しており、また、専門医も4名在籍しています。急性期の患者さんが手術後に後遺症を残さないためにも、リハビリテーション科の担う役割は非常に大きく、在宅期にも対応できる体制も整えています。

2008 年より東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座のグループが、TMS という治療と集中的リハビリ訓練を組み合わせた療法を開始し、麻痺に対する改善効果が示されるようになりました。TMS 治療は、頭の上に固定したコイルから磁場を発生させ、大脳の表面を直接的に刺激する治療法で、左右の大脳の活動性を整える狙いがあります。当院では15日間の入院にてこの併用療法を採用・実施していますが、これまでに多くの患者さんで麻痺が改善しました。

また麻痺が生じて硬く緊張した筋肉にボツリヌス菌が作り出す毒素を注射して筋肉の緊張を軽減させるボツリヌス治療も実施しています。TMS治療と集中リハビリと組み合わせるプログラムで、より効果を上げる試みも行っています。

さらに、最近では、最新鋭のロボットも導入し、さらなるリハビリの向上に取り組んでいます。TMS治療とボツリヌス治療にはそれぞれに適応基準があって、治療を希望される方は事前にお問い合わせいただければと思います。

狭心症心筋梗塞などに対しては、インターベンションセンターを設置し、カテーテル治療専門医チームが治療を行います。また2017年4月より不整脈専門医2名も加わり、不整脈に対する専門的加療も可能となりました。

新しいカテーテル室(2017年4月開設)には世界で初めてのアンギオ装置を2台新規導入して合計3室のカテーテル室となりました。従来の装置と比較して放射線被曝量が約半分に抑えられ、より鮮明な画像が得られるようになりました。

このカテーテル室は病棟と同じフロアーにあり、また救急外来から専用エレベーターですぐに入室が可能であり、緊急時に早期治療も可能です。患者様に最善の治療が提供できるようになります。また、ハイブリッド手術室1室も近々増設するので、循環器疾患すべてに対応できるようになります。

アンギオ

アンギオ

アンギオ装置 画像提供:総合東京病院

当院のカテーテル治療は心臓だけでなく、末梢下肢動脈、頸動脈、腎動脈などにも行っております。不整脈については専門医による「不整脈外来」を行っており、ペースメーカー植え込み術と植え込み後の「ペースメーカー外来」も行っています。薬剤抵抗性不整脈に対するカテーテルを用いた心筋焼灼術も行います。

その他、専門外来として「動脈硬化外来」「足病治療外来」を設置、また救急対応「ハートライン」は24時間対応体制をとり、地域医療に貢献できる心臓血管医療を提供致します。

総合東京病院外観

総合東京病院外観 画像提供:総合東京病院

総合東京病院は、福島県郡山市にある「総合南東北病院」を本院とし、南東北グループの医療法人財団健貢会に所属しています。全国に総合病院や診療所、介護老人保健施設、訪問看護ステーション、通所リハビリテーションなど、約60の施設を展開しています。

グループは創立以来、先端医療の医療機器や技術の導入と、医療界をリードする知見の習得に努めてきました。本院に併設設置されている陽子線治療センターがその象徴で、先進医療機器として国の認可を得ています。陽子線を照射する治療室は、自由な角度から照射できる部屋が2つと、水平ポートという固定式の部屋が1つあります。がんの種類によって部屋を使い分けることで、ピンポイントの精度がより高くなります。「切らずに治すだけではなく、切れないがんをも治す」、「郡山から全国・世界へがん治療の光を放つ」という目標のもと、陽子線治療の臨床・研究に日々あたっています。

さらに、現在、治験中である中性子による治療(ホウ素中性子補足療法:BNCT)は、夢の治療であり、細胞単位でのピンポイント治療が可能です。

また脳腫瘍センターの福島孝徳医師の脳神経外科手術症例は24,000人に達し、そのうち脳神経外科頭蓋底手術は16,000例以上で、これは世界記録です。難しい頭蓋底脳腫瘍やでも10,000例の手術成績があります。また小児脳腫瘍は患者数の少ない小児脳神経外科において、さらに絶対数の少ない領域であり、高度の経験を持つ医師は限られています。当院では福島孝徳医師を中心にして、治療困難な小児脳腫瘍、小児脳血管障害の患者さんの治療を行っています。

最高の医療と福祉サービスの本質は『人間愛』にあるとの信念のもと、『すべては患者さんのために』という南東北グループ法人共通の理念の具現化を目標にしています

渡邉貞義院長

中野区に委託され、当院では2017年5月より、「病児保育」を開始しました。中野区に在住しているか中野区の保育園に通っている1歳から小学校就学前までの児童を、病院に併設された施設で一時的にお預かりする制度です。

利用には

  • 病気の回復期であるが、まだ保育園での集団保育が困難な児童
  • 保護者が勤務等の都合により家庭で看病することが困難な場合

という条件があります。

また2017年6月からは小児救急医療も開始しました。これまで日中の通常外来のみだった小児科において、小児初期救急事業として準夜間帯の外来も行っています。

私は新規採用の面談において若い医師やコメディカルスタッフによく言う言葉があります。

「病院はまだまだ発展途上にあって、今、まさしくデベロップ中だ。これからあなたたちと一緒につくっていこう」

開設から7年、ここまで病院をつくるのは大変でした。これからも大変なことがあると思いますが、スタッフ全員が一丸となってチャレンジ精神を忘れずに、よい病院をつくっていきます。総合東京病院はもっと良くなります。

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