院長インタビュー

治療からリハビリテーション、さらに予防まで─地域に根ざした医療を提供する心臓病センター榊原病院

治療からリハビリテーション、さらに予防まで─地域に根ざした医療を提供する心臓病センター榊原病院
榊原 敬 先生

社会医療法人社団十全会 理事長、心臓病センター榊原病院 院長

榊原 敬 先生

目次
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この記事の最終更新は2019年04月04日です。

社会医療法人社団十全会 心臓病センター榊原病院は、岡山県岡山市にある循環器疾患の診療を柱とした急性期病院です。心臓血管外科の発展に大きく寄与した同院の創設者の意思を継ぎ、心臓病に苦しむ患者さん(病客)の治療に力を注いでいます。心臓病の治療において大きな実績を持つ同院の歴史、そして現在について、理事長と院長を兼任している榊原敬先生にお話を伺いました。

心臓病センター榊原病院 外観
心臓病センター榊原病院 外観

当院は、私の祖父である榊原亨が、1932年に開院しました。開院以前の祖父は、岡山医科大学(現岡山大学医学部)助教授・教授代行として心臓に対する研究を進め、1926年には、臨床講義で胼胝(べんち)性心膜炎の手術を世界で初めて局所麻酔下に行いました。1936年12月、心臓外傷(匕首による刺傷)によって大量出血していた患者さん(病客)を救うために、祖父は出血している場所をガーゼで圧迫して止血する手術(綿紗点絡止血術)に成功しました。刺された患者さん(病客)を救命でき、刺した男も死刑にならずに済みました。この止血方法を巡って、小沢凱夫阪大教授との論争が起きたことで、日本の心臓外科の歴史がスタートしたと言われています。さらに1939年には世界初の心臓鏡を開発し、1941年には僧帽弁閉鎖不全症の手術に成功しました。1943年開業医であった亨に対し、日本外科学会から宿題報告の栄誉が与えられました。大学教授以外では空前絶後のことでした。また、1951年には、弟である榊原仟(東京女子医科大学教授)と協力し、祖父は日本初の動脈管開存症の手術を成功させました。その後、仟が心臓手術の研究を受け継ぎました。

心臓外科の黎明期の歴史は、当院の歴史とも重なります。当院は、心臓外科を切り拓いてきた病院ともいえるでしょう。

手術風景
手術風景

当院は、患者さん(病客)の体にかかる負担を軽減するために、低侵襲治療を推進しています。そのなかでも、MICS低侵襲心臓手術)、TAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)、およびPCI(冠動脈ステント治療)という3つの治療法について、簡単にご紹介いたします。

当院で実施しているMICS(低侵襲心臓手術)は、肋骨(ろっこつ)と肋骨の間を5~7cmほど切開して手術する「肋間小開胸」がほとんどです。従来の「胸骨正中切開」と異なり、切開部分が小さいため、出血量が少なく、患者さん(病客)の体への負担を減らすことができます。そのため、早期リハビリの実施や早期社会復帰が可能です。当院では、いくつかの条件を満たせば、ほぼすべての弁膜症(大動脈弁、僧帽弁)や冠動脈バイパス手術に、MICS(低侵襲心臓手術)を取り入れています。

TAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)は、重症の大動脈弁狭窄症に対する新しい治療法です。従来の外科的人工弁置換術(手術)に比べて、人工心肺を使用せず、開胸もしないため、体への負担が少なく、高齢の方でも治療が可能です。TAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)には、主に肋骨の間を小さく切開して心臓の先端から細長い管(カテーテル)を挿入する方法と、太ももの付け根の血管から挿入する2つの方法があります。どちらの方法でも、傷は小さく、治療時間は短く済みます。

PCI(冠動脈ステント治療)は、狭心症心筋梗塞などの虚血性心疾患に対する治療法です。虚血性心疾患は、動脈硬化などが原因で血管が狭くなり、心臓へ流れる血液が不足することで生じることが多いといわれています。PCI(冠動脈ステント治療)では、カテーテルを手首の血管または太ももの付け根の血管から挿入し、血管が狭窄している部位まで進めます。狭窄している部位で、管の先端についているバルーンを膨らませ、次にステントと呼ばれる筒状の網を血管内に留置することで、血管が広がり、血液が正常に流れるようになります。

術後リハビリの様子
術後リハビリの様子

病気に対する入院治療は終了したものの、ご自宅や施設などの療養に不安の残る患者さん(病客)に、地域包括ケア病棟で退院後の生活に向けたサポートを実施しています。医師、看護師、薬剤師、理学療法士、および医療ソーシャルワーカーなど多職種のスタッフが連携を取りながら、患者さん(病客)にとって効果的な医療、リハビリ、在宅・施設復帰⽀援を行います。

当院のリハビリは、入院前と同じような生活を送ることができるようになることを目指し、土日も含めて毎日実施しています。また、心臓だけでなく、呼吸器や脳血管のリハビリも積極的に行っています。

メディカルフィットネスの様子
メディカルフィットネスの様子

治療を終えた後に病気の再発を予防するためには、食事指導だけでなくしっかり運動し、それを習慣づけることが大切です。そのため、当院では、医師の指導のもとで運動するメディカルフィットネスを実施し、患者さん(病客)の病気の再発予防に取り組んでいます。

当院のメディカルフィットネスは、6か月ごとに循環器内科の医師によるメディカルチェックを実施し、その結果によって医師が安全で有効な運動量を決めた運動処方箋を発行します。患者さん(病客)には、運動処方箋に基づいた運動を行っていただきます。また、管理栄養士による栄養指導を実施し、体力に応じたカロリー計算など、普段の生活に活かせるアドバイスをします。運動と食事の両方からアプローチをします。

また、メディカルチェックに基づいたコースごとに時間帯を区切っているため、同じ仲間と一緒に楽しく運動をすることができます。メディカルフィットネスがきっかけとなり、地域の皆さんの新たなコミュニティづくりにも貢献できることを願っています。

メディカルフィットネスの入会は、教室コース、フリーコースともに10,800/月です。

当院は、循環器病専門の病院として、循環器内科や心臓血管外科、糖尿病内科などの各診療科が連携して治療にあたっています。現在は、地域の高齢化が進み、複数の病気を抱えている患者さん(病客)が多くみられるようになりました。そのため、他科(人工透析内科など)と緊密な連携を取りながら治療する体制を整えています。そのなかでも特徴的な点は、外科と内科の垣根が低い点です。たとえば、虚血性心疾患の患者さん(病客)は、状態によって外科的なバイパス手術が適している場合と、内科的なPCI治療が適している場合があります。当院では、外科と内科が合同でカンファレンスを行うことで、患者さんに適した治療方法を選択しています。自分の専門分野とは異なる視点からの意見を聞くことは、知識を深めていくことにもつながるでしょう。

カンファレンスの様子
カンファレンスの様子

当院は、経験豊富な多くの医師から、さまざまな技術や知識を学べる環境だと言えます。同じ手術を実施しても、先輩医師によってテクニックが異なります。そのテクニックを一つひとつ間近で見られることは、若手医師にとって大きなメリットだと思います。若手医師として経験を積む時期に、さまざまなテクニックを知ることで、医師としての引き出しが増えます。それは今後の医師としての人生のなかで、きっと役に立つはずです。

若手医師は、意欲を持ってさまざまなことに取り組んでほしいと思います。これからの医療は、人の手技だけでなく、医薬品、医療機器やAIなどを含め、どんどん進歩していきます。また、医療だけでなく、時代にも大きな変化が訪れるはずです。そのなかで、自分は何をするべきなのか、周りから何を求められているのかをしっかり考えてください。逆境に立っても、自分の道は自分で切り拓くことのできる強さを持ってほしいと思います。先輩医師から多くのことを学び、必要とされ期待に応えることのできる医師を目指してください。

榊原先生

当院は、病気の治療からリハビリ、在宅・施設への復帰、さらに予防まで、一貫した医療を提供できる体制を整えています。「心臓の病気なら榊原病院に行こう」と思っていただけるように、専門性の高い医療の提供や、かかりつけ医、多職種連携のきめ細やかなサポートをしていきます。

患者さん(病客)が、ご自宅や施設に復帰後、食事や運動、薬などの面から困らないように、栄養バランス、1日の運動量や運動方法、薬の飲み合わせなど入院中からしっかりと指導しています。

当院には、周辺地域だけでなく、遠方からも患者さん(病客)が来院してくださいます。しかし、遠方の患者さんには、かかりつけ医や多職種連携できめ細やかなサポートが難しくなることがあります。遠方の患者さん(病客)が普段の生活のなかで困らないように、栄養バランス、1日の運動量や運動方法、薬の飲み合わせを指導し、習慣づけできるようなサポートをしていきます。

 

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  • 社会医療法人社団十全会 理事長、心臓病センター榊原病院 院長

    榊原 敬 先生

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