院長インタビュー

神戸市の中核病院として、患者さんの立場で地域医療を実践する神戸市立医療センター西市民病院

神戸市の中核病院として、患者さんの立場で地域医療を実践する神戸市立医療センター西市民病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

目次
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地方独立行政法人神戸市民病院機構 神戸市立医療センター西市民病院(以下、神戸市立医療センター西市民病院)は、神戸市に4つある市民病院のひとつです。同院は、2013年に地域医療支援病院の指定を受け、地域の医療機関と連携しながら地域医療に貢献し続けています。その後、患者さんの立場で考える医療提供を目指し、診療内容の充実や職員教育を熱心に行っています。

患者さんの立場で考え実践する地域医療とは、どのようなものでしょうか。院長である中村(なかむら) 一郎(いちろう)先生にお話を伺いました。

外観
神戸市立医療センター西市民病院 外観

当院は神戸市市街地西部の急性期中核病院に位置付けられ、地域医療支援病院、紹介受診重点医療機関に認定されています。神戸市市街地の西部は2次救急病院、回復期リハビリテーション病院や地域包括ケア病院等が数多くありますが、総合的にどの診療科においても対応できる病院は限られていることもあり、当院は公的病院として『市民の生命と健康を守るために、安全で質の高い心のこもった医療を提供すること』を基本理念とし、医療を提供しています。

地域の高齢化が加速度的に進む中、様々な合併症を抱えながら治療を受ける患者さんが増えています。当院ではすべての患者さんに対して治療をあきらめず、各診療科、各部門のスタッフがチームとなって、患者さんの健康状態の向上に努め、最適な治療が受けられるように、治療方針決定を支援します。そして治療後の患者さんの変化に寄り添い、地域と連携してできるだけ以前と変わらない安心な日常生活を送っていただけることを目指し、低侵襲医療とADLを重視した“治し、支える、あきらめない医療“を提供しています。

このような医療のサイクルを継続するために必要なものは人材、チーム医療、地域連携です。各診療科医師や地域連携のスタッフの増員を進め、現在医師数は総勢122名(2024年4月1日現在。以下スタッフ数表記において同じ)、地域医療在宅支援室のスタッフは23名まで充足しました。今後さらに院内の全ての部門で診療機能を高め、地域の期待と要請に応える高度で専門的な医療が提供できるように努めてまいります。

当院は消化器内科、呼吸器内科を基軸とし各専門内科(総合内科、循環器内科、糖尿病・内分泌内科、腎臓内科、脳神経内科、リウマチ・膠原病内科、血液内科)から構成される9つの詳細内科、総勢43名からなる内科スタッフが、それぞれの専門領域で高度な医療を提供するとともに、後述のとおり、救急の現場ではお互い協力しながら多くの患者さんを応需し、地域の急性期、救急医療を担っています。

特に消化器内科と呼吸器内科は、地域からの救急や専門的医療の要請に対し常に積極的に応え、『消化器症状、呼吸器症状の患者さんは西市民病院に送れば何とかしてくれる』と、地域の信頼を培ってきました。

新型コロナ感染症に対しては総合内科が中心的・指導的役割を果たし、全診療科の医師が分担して多くの入院患者、発熱患者を受け入れ診療し、公的病院としての役割を着実に果たすことができたと思います。内科の各診療科がチームワークよく専門的かつ網羅的にさまざまな疾患に対応できることが当院の強みです。

内観
神戸市立医療センター西市民病院 内観

2015年より手術支援ロボットダヴィンチSiを導入し、ロボット手術を進めてきました。2022年4月から最新機種のダヴィンチXiに更新し、現在では前立腺がん膀胱がん、腎尿管がん、腎がん、胃がん、結腸がん、直腸がん肝がん、膵がん、肺がん子宮筋腫、骨盤性器脱に対応し、泌尿器科、消化器外科、呼吸器外科、産婦人科で積極的にロボット手術に取り組んでいます。現在ロボット手術が適応できる主要疾患のほとんどすべてを実施可能なことが、当院の強みです。

【ロボット手術の推移】
【ロボット手術の推移】

地域の方が求める医療は、多岐にわたります。社会の高齢化が進むにつれ、救急医療や認知症治療が求められています。一方、若い世代にとって、子育てしやすい地域づくりは欠かすことができない要素といえるでしょう。

次の項目では、地域の方の声に幅広くお応えする取り組みについてご紹介します。

当院の救急医療は、救急総合診療部・集中治療部、全科におよぶ専攻医、初期研修医が担っています(2024年4月時点)。救急総合診療部は、救急患者さんの初期診断と治療を行い、各診療科に引き継いでいます。集中治療部では、急性期の重症患者さんを多職種によるチーム医療で全身管理をしています。

救急車による搬送数は、図で示したように増加の一途をたどっています。このような状況に対応すべく、これからも救急総合診療部・集中治療部を中心に各診療科と連携し、24時間365日体制で地域の救急医療を担ってまいります。

救急車受け入れ件数

整形外科では、脊椎・人工関節手術に注力しています。また、骨折に対する手術も数多く行っています。

最近の特徴は、外傷に伴う骨折のみならず、骨がもろくなっている高齢者の転倒による骨折などが増加していることです。そのため、骨折をきっかけとする寝たきりや要介護生活を防止するための回復期リハビリテーションに力を入れて、ご自宅への早期復帰を支援しています。

妊娠や出産に伴い、どなたでも不安に感じることや出産や育児について知りたいことが生じるでしょう。当院では、その際に気兼ねなく参加できる教室を多数ご用意しています。

お母さんを対象とした「ほのぼの教室」では、妊娠中の過ごし方や出産準備の講習をしています。ご家族で参加できる「両親教室」では、育児に関する講習を受け、実際におむつ交換や抱っこの練習ができます。

また、出産後にもお悩みを抱え込んでしまうというご相談を受け、産後外来と母乳外来を実施しています。育児相談に留まらず、お母さんの心のケアまで行っていますので、一人で不安な気持ちや悩みを抱え込まず、助産師にご相談ください。

さらに当院は日本医学会が認定したNIPT(新型出生前診断)の認証施設として母体血液による非侵襲的出生前遺伝学的検査を行っています。

当院は、これらの取組みによって、若い世代の方が安心して住むことができる地域づくりに貢献していきます。

小児科では、アレルギー治療に特に力を入れています。アレルギーは、食物アレルギーアトピー性皮膚炎気管支喘息など多種多様な病気を包括しています。そこで、医師・看護師・管理栄養士など多職種の職員で小児アレルギーチームを組織し、多方面から治療を実施しています。小児アレルギーチームでは、小児科・皮膚科・呼吸器内科の医師がチームに参画し、それぞれの専門分野での知識や技術を活かして治療に当たっています。

小児アレルギーチームは、対象は保育園や小学校に通われているお子さんをお持ちの保護者の方や施設関係者に向けた小児アレルギー講習会を、2023年度から年6回、神戸市保健所と共催しています。小児科では、小児アレルギーチームを中心に、アレルギーの予防から治療まで正しい知識の普及に励んでまいります。

社会の高齢化と共に、神戸市でも認知症患者さんが増加傾向にあります。当院は、神戸市から認知症疾患医療センターの指定を受け、認知症の早期発見・早期治療を目指しています。また、患者さんやご家族の要望に沿う治療を提供するために、地域の医療機関や介護施設などとの連携を強化したいと考えています。

今後は、地域の医療機関や介護施設と情報共有していき、地域の認知症治療ネットワークの構築に尽力していきます。

当院では、妊娠・出産・産後育児に関わる赤ちゃんとご家族をサポートするために、(株)ファミリア様と提携しており、赤ちゃんが生まれてはじめて着る肌着としてファミリア社製ウェアを使用しているほか、出産後の退院時には同社のおくるみをお贈りしています。

入院されている患者さんに、「がんばって」という思いをご家族やご友人が届けることができるお見舞いカードサービスを実施しています。当院のホームページ(https://nishi.kcho.jp/message)からお名前やメッセージをご記入いただくと、当院のスタッフが専用カードにプリントアウトして患者さんのベッドまでお届けするもので、ご利用は無料です。ぜひご活用いただき、患者さんに思いを届けていただければと思います。

当院は病床数358床の中規模病院です。以前より各診療科、各部署間の垣根が低く、風通しがよくスタッフが働きやすい職場だと、医師はじめ病院見学の学生さんや、研修医、メデイカルスタッフの方々も口をそろえて言っていただいています。これは形や数字で表しにくいものですが、当院が長年積み上げ培ってきた風土といえるもので、すばらしい長所、強みだと思います。一朝一夕にできるもではありません。これを守り、さらに良くして、目に見える実績、成果につなげていくことが院長の務めだと思っています。

また、当院は2029年ごろに新長田駅の近くへ新築移転を予定しています。現在の病院よりも1床当たりの床面積が広く、より高度な医療に対応する病院となり、さらに地域の皆さんに必要とされ信頼される病院になりますので、ご期待ください。

実績のある医師をチェック

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