公立藤岡総合病院は、群馬県・藤岡多野地域を中心に、埼玉県北部までを含めた地域の中規模病院として、地域医療に貢献し続けてきました。急性期医療の対応はもちろん、2017年に新病院として開設してからは地域包括ケアなど地域の福祉にも貢献しています。
同院の特色ある診療科や、地域との連携などについて、病院長の塚田義人先生にお話を伺いました。
当院は藤岡多野地域に位置する公的病院として、群馬県内だけでなく埼玉県北部地域からの患者さんも受け入れ、藤岡地域の二次医療圏を受け持っています。
また、当院は二次救急病院として、救急センターで24時間365日体制の救急医療に対応しています。特に脳血管障害や急性心筋梗塞などの患者さんについては、周辺地域の医療機関と連携を取りながら、積極的に受け入れを行っています。公的病院として欠かすことのできない小児、周産期医療にもスタッフを確保し、地域の要望に応えています。地域がん診療連携拠点病院として、さまざまな領域のがん患者さんを受け入れ、集学的な治療を行っています。
当院の救急センターは外来のほかに、HCU (High Care Unit:高度治療室)を保有しており、術後の患者さんを一時的に収容する際に利用するほか、夜間の緊急入院に対応できる体制となっています。これは一般入院病棟のスタッフの過度な負担を減らし、本来の業務に集中できるようにする目的もあります。
当院は27の診療科を持つ総合病院ですが、病床数は399床(いずれも2019年8月現在)の中規模病院です。この特徴を活かして、異なる診療科同士・職種同士の垣根が低く、スムーズな連携体制が形成されています。連携体制を形成したメリットは、患者さんへの対応力の高さという形に表れるように努めています。
例をあげると、毎月行われる合同カンファレンスです。この集まりは複数の診療科のスタッフが参加することが必須になっており、参加している全ての診療科が、症例を当番制で発表します。異なる診療科・職種のスタッフが、1つの症例についてさまざまな角度から検討を行い、患者さんに適した治療法や対応について、ディスカッションしています。
当院を訪れる患者さんは、1つの病気だけを持っているのではなく、複数の病気を抱えていらっしゃるケースが多々あります。そのような患者さんに対しては、複数の診療科のスタッフがチームを組んで多方面から診療を行っています。当院では、このようなチーム医療を行える土壌によって、患者さんもスタッフも安心できる医療の提供に努めています。
内科領域の診療科については、消化器内科や循環器内科、呼吸器内科だけでなく、心療内科や神経内科、糖尿病内科など、幅広い病気に対応できるような診療科を揃えていますが、特に血液内科、腎臓・リウマチ膠原内科に関しては、両方の診療を行える病院であることが当院の強みと考えます。
当院の血液内科は、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などをはじめとする血液がんに対しては、化学療法や分子標的療法、放射線療法などの代表的な治療法のほか、造血幹細胞移植も行っております。
当院の腎臓・リウマチ膠原病科は、軽度の腎機能障害がある患者さんをはじめ、ネフローゼ症候群と併発する患者さん、慢性腎不全の患者さんなど、種類が多岐にわたる腎臓病やリウマチ性疾患を診る中心的な施設としての機能を担っています。
また総合病院の透析室のメリットを活かして、ほかの医療機関で透析を受けている患者さんで合併症を発症した方の受け入れも積極的に行っております。
循環器内科、呼吸器内科では、日本内科学会が認定する総合内科専門医や日本循環器学会が認定する循環器専門医、日本呼吸器学会が認定する呼吸器専門医などの専門医を抱え、地域の基幹病院として昼夜を問わず患者さんの診療に当たっています。
当院は地域の災害拠点病院としての役割も担っています。大規模災害を想定した訓練も定期的に行っており、DMAT(Disaster Medical Assistance Team:災害派遣医療チーム)を最大2部隊、組織できる体制になっています。
当院は地域がん診療連携拠点病院として、厚生労働省の認定を受けております。認定病院としての役割を果たすため、がん患者さんだけでなく地域の方々も対象とした、がんについての講演会や市民講座などのイベントを開催しています。今後は、がん以外の病気についても、地域の方々に理解を深めてもらえるよう、さまざまな公開講座に取り組みたいと考えています。
また、病気の解説やお知らせなどを掲載する『ささえあい』という病院広報誌を発行しており、当院のことをより広く知ってもらえるような取り組みも行っています。
当院は中規模の総合病院であるため、急性期の病気や厳密な管理・治療を必要とする病気に対応するという使命を持っています。そのため、プライマリケアを必要とする地域の方々を全て受け入れることは難しい状況です。
この問題を解消するため、当院のある周辺地域で開業しているクリニックの医師たちとの連携を積極的に行っています。これによって、一般的な病気など緊急性の低い病気については地域のクリニックで、クリニックでは診ることが難しいような専門的な病気は当院を含めた総合病院で、という住み分けが可能となっています。
当院では総合病院としての強みを生かし、このような連携体制によって地域クリニックから来られた重症の患者さんや急性期の患者さんに対しても責任をもってケアを行っています。また、当院での治療が終わったら地域のクリニックに移っていただくことで、スムーズで継続的なケアにつなぐことができています。
当院は毎年、初期研修医の受け入れを行っています。大学の先輩や後輩のつながりで、学生実習の受け入れも増えてきており、臨床実習に来てくれた学生がそのまま初期研修に当院を選んでくれるケースも増えています。
中規模の総合病院のメリットを活かして、先程述べたような定期的な全体カンファレンスやレクチャーを頻回に行っており、特に全ての初期研修医が達成するべき目標である、“総合的な診療能力を効率よく身につける”ことができる環境が整っています。全スタッフで研修医を育てる雰囲気があり、研修医を半人前の医師として扱うのではなく、1人のスタッフとして組織の中できちんと役割が果たせるように配慮しています。
また、後期研修を行う専攻医にとっても、急性期や重症の患者さんを診て専門性を高めることができるという魅力に加え、さまざまな診療科との連携によって、多方面から臨床を学ぶことができます。
当院は感染症を中心として診る病院からスタートしましたが、現在は生活習慣病からさまざまな領域のがん診療、そして高齢化に起因する老年病症候群まで、当院が診療を使命とする病気は広範囲にわたります。これからも地域の皆さんの健康を守る病院として、地域クリニックの医師たちと連携しながら、“地域住民から信頼される医療”を実現できるよう、スタッフ一丸となって努力していきたいと思っております。
現在の研修制度は、総合的な臨床能力を育てることを重視したプログラムになっていますが、研修から数年経つと専門に分化していき、特定の領域だけに特化した医師になる傾向は依然として続いています。しかし、患者さんが多方面からの診療が必要とされる病気を持っている現状は変わりません。つまり、専門的な臨床能力と同時に、総合的な診療能力も必要とされているのです。
当院は中規模病院の特性を活かして、専門領域の症例経験を積みながら、合同カンファレンスなどで総合的な診療能力を身につけることができる環境が整っています。研修を通して、専門性を究めると同時に、患者さんの全身を総合的に診る力が重要であることを感じてほしいと思います。
公立藤岡総合病院 腎臓・リウマチ科 病院長
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