院長インタビュー

“愛する人を安心して任せられる病院の創造”を目指す――朝日野総合病院

“愛する人を安心して任せられる病院の創造”を目指す――朝日野総合病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]院長インタビュー

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熊本市にある朝日野総合病院は、1980年に朝日野病院として開設されました。全国的な傾向と同様に急速に高齢化が進行する地域の医療ニーズに合わせ、高齢の方々の健康を守るさまざまな取り組みを行っています。2024年4月に病院長に就任した清川 哲志(きよかわ てつゆき)先生に、病院のあゆみや同院の今後について話を伺いました。

先方提供
朝日野総合病院ご提供

当院は現在、30あまりの診療科を有する総合病院で、急性期から慢性期、緩和ケアまで対応するケアミックス型の病院ですが、開設当初は内科や小児科など6つの診療科でスタートしました。1984年に医療法人として認可された後は、診療科や病棟を増設し、1994年に朝日野総合病院と名称を改めました。

熊本県でも高齢化は進んでおり、令和4年時点での高齢化率は全国平均の29.0%に対して32.1%です。市町村別で見ると半数近い方が高齢者というエリアもあり、地域医療を行う上で、高齢の方々の病気を管理し、健康を守ることは非常に重要となってきます。前院長・野村一俊先生が掲げた“連携”のキーワードは、地域の医療機関や救急機関等とのネットワークを作るため、また院内での多職種の協力体制を強化するためにも欠かせないものです。

当院のキーワードである“連携”を象徴する1つが“朝日野OLSチーム”です。

OLSとは、Osteoporosis Liaison Service=骨粗しょう症連携チームのことを指します。

骨粗しょう症は、骨密度が低下することで骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気です。自覚症状が乏しいため、転倒や重いものを持ち上げる、つまずいて手をつくなどの動作で骨折をしてしまうことがあります。一度骨折をしてしまうと、その後の1年で骨折が発生する危険性は2.7倍となるといわれています。また、骨折して入院すると痛みで動けないために筋力が落ち、骨折前の生活ができなくなることが珍しくありません。したがって、予防がとても重要です。

そこで朝日野OLSチームでは、患者さんに早めにご自身の骨や体の状態を知ってもらい、骨粗しょう症がある方には治療やアドバイスをすることで骨折を防ぐ“1次骨折予防”と、一度骨折してしまった方に骨折の治療を行いながら別の箇所の骨折を予防するための“2次骨折予防”という2つの柱でサポートを行っています。

同チームは日本骨粗鬆症学会認定医のほか、看護師、薬剤師、医療クラーク、放射線技師、臨床検査技師、管理栄養士、理学療法士など多職種が連携し、患者さんの治療にあたるのはもちろんのこと、院内外で研究発表や講演会の実施、啓発活動なども行っています。

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朝日野スタイルを実践する糖尿病治療サポートチーム(朝日野総合病院ご提供)

当院に骨折が原因で救急搬送されてくる患者さんの中には、持病として糖尿病をお持ちの方も少なくありません。骨折された場合、急性期病棟からリハビリテーションのための回復期病棟を経てご自宅に戻られるまで数か月を要することもあります。そのためこの期間に専門スタッフによって糖尿病の治療を行っています。このスタイルを当院では“朝日野スタイル”と呼んでおり、糖尿病の知識を持った看護師や薬剤師、理学療法士や視能訓練士などの医療スタッフが他の病気で入院をしている期間中も糖尿病治療をサポートしています。

また、当院にある糖尿病患者会・くちなしの会の活動に参加したり、糖尿病の子どものサマーキャンプで運動指導を行ったり、DiaMAT(糖尿病医療支援チーム)の一員として被災地で医師の問診や内服指導、運動指導などの支援の活動に参加したりしています。当院で多くのことを学び、成長したスタッフが地域の中に出ていき、さまざまな形で地域に貢献している様子を見ることは私たちにとって大きな喜びであり、後に続く者たちの励みにもなっています。

医療機関には、それぞれ役割があり、手術をはじめとする高度な医療を担う病院、早期の社会復帰を目指してリハビリテーションを行う病院、地域のかかりつけ医など、それぞれが役割分担をすることで、地域の患者さんを地域の中で切れ目なくサポートしています。

このサポートを円滑に、効率よく進めるため、患者さんごとに診療計画を作成し、治療を担当する各医療機関で情報共有することを“地域連携クリティカルパス”といいます。

この仕組みは、前院長である野村一俊先生を中心として熊本県が全国に先駆けて始めたものです。熊本県は地域連携クリティカルパスを導入した当初より、スムーズな連携を行ってまいりました。その背景には、熊本大学医学部出身の医師の活躍があるように思います。私自身も熊本大学の出身ですが、熊本の名だたる病院の院長を務めるのはいわゆる“同門”の医師ばかりです。あの病院にはどんな医師がいて、どんな治療を得意としているのか……、そういったことをお互いによく分かっているからこそ、顔の見えるスムーズな地域連携が可能になるのです。

他の医療機関と密に連携することはもちろん、院内においても多職種の連携は欠かせません。今後も地域連携を強化し、患者さんやご家族をしっかりと支えていきたいと考えています。

私は朝日野総合病院へ赴任して5年になります。

総合内科医として、高齢者医療に携わってきましたが、高齢化が進むとともに、患者さんが複数の病気を抱えていることも多く、医療も複雑化していることを痛感しています。

若い人であれば、骨折から入院、手術、リハビリ、社会復帰へと療養が進みますが、ご高齢の方の場合、入院をきっかけにもとの暮らしを根本から変えていかなくてはならないこともあります。特におひとり暮らしの場合、ご自宅に戻った後、誰が生活を支えていくのかというのは大きな問題となります。

私たちは、患者さんの病気の治療はもちろんのこと、退院後の生活を建て直すためにご家族や社会背景を含めた細やかな支援体制を整えています。患者さんがご自分の意思で“自分らしい暮らし方”を選べるよう、しっかりとサポートさせていただきます。

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