院長インタビュー

豊かな自然環境のもとで地域医療の充実を目指す、大津赤十字志賀病院

豊かな自然環境のもとで地域医療の充実を目指す、大津赤十字志賀病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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滋賀県大津市にある大津赤十字志賀病院は、2002年の開設以来、地域密着型の医療を展開してきました。大津赤十字病院や地域の医療機関との連携を密にする同院の役割や今後について、院長である土井 隆一郎(どい りゅういちろう)先生に伺いました。

当院は、結核医療施設として開設された国立療養所比良病院の後を引き継ぐ形で2002年に開院いたしました。国立病院・療養所の再編計画によって同院が廃止対象となった1985年、当時の志賀町にお住まいの方々によって署名活動が行われ、これを日本赤十字社がサポートする形で大津赤十字志賀病院が設立されることとなりました。

「私たちは人道・博愛の赤十字精神にのっとり、患者さんの人権と意志を尊重して、最善の医療を提供し、地域の人々の健康増進に務めます」との理念は、開院から20年あまり経過した2024年現在も変わることはありません。今後も引き続き、地域の医療機関との連携を大切にしながら患者さんに寄り添った医療を行うことで、地域の皆さまに安心してお過ごしいただけるよう努めてまいります。

2002年に新築された鉄筋鉄骨コンクリート4階建ての建物には、一般病床100床(急性期病床50床/地域包括ケア病床50床)と療養病床50床(医療型)の合計150床を備えています。

診療科は内科・糖尿病内分泌内科・呼吸器内科・循環器内科・小児科・外科・心臓血管外科・整形外科・泌尿器科・産婦人科・リハビリテーション科などがあり、各分野のスペシャリストが日々の診療にあたっています。また、2019年には総合診療部を新設し、“病院内の小さな診療所”として1人の患者さんを全身的に診療しています。

当院の糖尿病内分泌内科には、名誉院長の岡本 元純先生をはじめ高い専門性を持った医師が在籍し、糖尿病、高血圧症、内分泌疾患などさまざまな病気に対応しています。“日本糖尿病学会認定教育施設I”として専門的な糖尿病診療を行うのはもちろん、日本糖尿病学会研修指導医のもとで後進の育成にも力を注いでいます。

当院は、廃止が決定した国立療養所比良病院を何とか存続させようと地域の方々が立ち上がり、多数集まった署名に後押しされるようにして設立された経緯があります。現在でも、ボランティアの方々がマイクロバスで患者さんを運んでくださるなど、地域の方々に支えられている面が多々あり、非常にありがたいことだと思っています。

こうした生い立ちがあることから、私たちがこの地域への医療にかける思いは非常に強いものがあり、当院だけという枠を越えたさまざまな取り組みを行っています。その1つとして、大津市蔓川坊村町にある大津市国民健康保険蔓川診療所への医師派遣があります。蔓川診療所には常勤医師がおらず、診療を継続することが難しくなっていました。大津市からの要請を受けた当院は2020年の4月から、当院より医師を毎週火曜日に派遣することを決め、診療所の存続を支援いたしました。

このほかにも、来るべき大地震に備えて地域で災害訓練を行うなど、地域全体の連携強化をさらに進めていきたいと考えています。

私が京都大学医学部を卒業したのは1980年でしたから、医師になってもう40年以上になるでしょうか。この間、外科医として京都府や滋賀県で診療にあたり、3年間のアメリカ留学なども経験しました。

外科医としてのキャリアを語るうえで切り離すことができないのが、膵臓(すいぞう)がんの手術です。膵臓がんは “見つけにくいがん”として知られていますが、発見するのと同様に治療するのが難しいことも膵臓がんの治療成績を悪くしています。今から30年前、膵臓がんの術式の1つ“膵頭十二指腸切除術”で死亡する患者さんは欧米では3割にものぼりました。また、たとえ手術で命をつなぐことができても、術後5年間生存できる患者さんは全体の1割いるかどうかという時代でもありました。

私はさまざまな工夫を凝らして膵臓がんの手術方法を確立し、学会発表などを行うのはもちろん、全国を飛び回って啓蒙活動にも力を注ぎました。膵臓がん手術においては、直径2mmにも満たない膵管と小腸とをぴったりと縫い合わせる(吻合)必要があり、非常に高い技術を要します。近年のロボット手術の技術進歩は目覚ましいものがありますけれど、膵臓がん手術に関しては膵臓の位置がロボットに向かないこともあり、人の手による手術には敵わないだろうと思います。

振り返れば黎明期といわれる時代から膵臓がん治療に携わり、無作為化比較試験の結果を論文にまとめる作業が最初の仕事でした。その後医学は着実に進歩し、膵臓がんに有効な抗がん剤の登場によって、膵臓がんの治療成績は大きく向上いたしました。これまで母校の附属病院や大津赤十字病院で1,000件を超える膵臓がん手術を手がけ、膵臓がんの診療ガイドラインの初版(2006年)から現在作成中の第6版まで作成委員として携わってきたことは、外科医としての誇りであります。

当院は大津市和邇(わに)の坂の上にあり、病室の窓からは四季折々の豊かな自然を眺めることができます。“患者さんの体と心を同時に癒やす”ことをコンセプトにした院内の廊下は広々としており、病室もゆとりのある設計になっています。

診療科としては内科と外科に幅広く対応し、地域の方々の健康維持・増進を支えると同時に、病気の早期発見・早期治療に努めています。今後も急性期、回復期、慢性期の切れ目のない医療をご提供することにより、この地域の医療をしっかりと支えてまいります。

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