院長インタビュー

超高齢社会では、地域とのコミュニケーションを高めた医療が欠かせない~いずみの病院の診療体制

超高齢社会では、地域とのコミュニケーションを高めた医療が欠かせない~いずみの病院の診療体制
メディカルノート編集部  [取材]

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高知県高知市にあるいずみの病院は、1979年に四国勤労病院として設立されました。2001年に法人内合併により新たにいずみの病院として設立され、急性期から回復期、在宅(訪問看護・訪問リハビリテーション)まで途切れることのない医療の提供を続けています。そんな同院の役割や今後について、院長の清家 真人(せいけ まさと)先生に伺いました。

当院は、1979年に四国勤労病院として設立され、2001年に法人内合併により新たにいずみの病院として発足しました。現在の病床数は急性期病棟が118床、障がい者病棟が48床、緩和ケア病棟が12床、回復期リハビリテーション病棟が60床で、併わせて238床になります。診療科目は内科、神経内科、循環器内科、糖尿病内科、外科、脳神経外科、整形外科、血管外科など17科目です。専門的な診療が必要になる症例については、パーキンソン病外来や甲状腺外来、もの忘れ外来、禁煙外来、神経難病センターなど、専門外来やセンターを開設して診療にあたっています。ベッド数20床の透析室もあり、月曜日から土曜日まで患者さんを受け入れています。

そのほかでは、高知市指定の救護病院として災害医療にも取り組んでいます。救護病院は災害発生直後の医療救護活動を行う医療機関として市町村が指定し、重症患者と中等症患者の処置と収容を行い、中等症患者については一定の完結した医療を提供することが求められます。また、2017年には高知県より“高知DMAT(ディーマット・災害派遣医療チーム)指定医療機関”に指定され、天災や大規模事故などが発生した際には被災地に駆けつけ、緊急治療や病院支援ができる体制を整えました。

高知県は高齢化率が全国2位、高齢単身世帯率にいたっては全国1位といった超高齢社会を迎えています。そのような中、高知市を中心にしたエリアで急性期医療から回復期医療、さらにリハビリテーション医療、在宅(訪問看護、訪問リハビリテーション)までシームレスに提供し、地域医療を支えていると自負しています。

神経内科では、パーキンソン病筋萎縮性側索硬化症ALS)などの神経変性疾患、ギラン・バレー症候群慢性炎症性脱髄性多発神経炎などの末梢神経疾患(まっしょうしんけいしっかん)認知症、脳血管障害、筋ジストロフィーなどの診療に力を入れています。

神経難病については神経難病センターを発足させて、初期治療から進行期まで、治療とリハビリテーションをシームレスに提供できる医療体制を整えました。神経難病とは、筋萎縮性側索硬化症やパーキンソン病、多系統萎縮症脊髄小脳変性症(せきずいしょうのうへんせいしょう)多発性硬化症など治療が難しい神経疾患の総称です。中でも難病中の難病といわれている筋萎縮性側索硬化症の治療に注力しており、マスク式の人工呼吸器や気管切開を行っての人工呼吸器導入なども行います。神経難病の患者さんの入院数については、全国でもかなり多いのではないでしょうか。

患者さんの数が増加傾向にあるパーキンソン病の治療経験も豊富で、通常の内科的治療ではコントロールが難しい症例では、脳神経外科による脳深部刺激療法(DBS)を行うなど、専門的な治療も行っています。高知には神経内科医が少なく、郡部になると専門的な治療を受けるのが難しいケースがあります。一方、当院には専門外来“パーキンソン病外来”があり、患者さんの多様なニーズにお応えできるのが強みです。

リハビリテーション部では、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、音楽療法士が在籍し、総勢120名でリハビリテーションを行っています。診療スペースは理学療法室・作業療法室・言語療法室を合わせると500平方メートルの広さになり、快適な環境でリハビリテーションに取り組んでいただけるのではないでしょうか。また、パーキンソン病のリハビリテーションについては、私がパーキンソン病の手術を数多く手がける中で、かねてからその重要性を感じていた分野です。幸い当院のリハビリテーション部のスタッフが充実していることから、すぐに充実した診療体制を整えることができました。同時に、当院が主導して“高知パーキンソン病リハビリテーション研究会”を立ち上げ、定期的に勉強会を開催しています。その成果もあって当院のリハビリスタッフの知識はとても豊富で、パーキンソン病のリハビリテーションに関しては指導者も務まるほどです。

当院では緩和ケアにも力を入れています。5階の緩和ケア病棟は12床で、「人が生きることを尊重し、誰にも例外なく訪れる死への過程に敬意を払う」「死を早めることも死を遅らせることもしない」「痛みやその他の不快な症状を緩和する」「精神的・社会的な援助を行い、患者に死が訪れるまで、生きていることに意味を見いだせるようなケアを行う」「家族が困難を抱えてそれに対処しようとするとき、患者の療養中から死別した後まで家族を支える」ことを念頭にケアにあたっています。ご自宅で療養されておられるのと同じように、気兼ねなくご家族と過ごしていただけるよう、病床は全て個室にしました。事前にお届け出が必要になりますが、可愛がっていらっしゃるペットのお見舞いも可能です。また、緩和ケア外来では、他の病院で治療を受けていらっしゃる患者さんも受診いただけます。緩和ケア病棟への入院を検討されている患者さんやそのご家族には、緩和ケア病棟見学もございますので、ご相談いただければと思います。

当院が中心になってさまざまな医療情報を発信することで、地域医療の底上げに貢献できたらと考えています。たとえば、先述した高知パーキンソン病リハビリテーション研究会では、リハビリテーションに関する情報交換や症例検討会を実施しています。最近ではパーキンソン病の患者さんに対して、リハビリテーションがもたらす効果について発表しました。今後も研究会を通してパーキンソン病の患者さんの生活の質向上と、地域医療の福祉向上につなげていきたいと思っています

そのほかでは市民を対象にした公開講座も開催しています。新型コロナの感染拡大を受け、開催の頻度が減ってしまいましたが、昨年(2023年)は製薬会社の主催で開催し、私が座長を務めました。当院からは、主任看護師が“病棟看護師の立場から見たサポート”について、理学療法士が“家でできる運動療法”について、パーキンソン病の患者支援の観点から講演しました。今後も公開講座についてお声がけいただけましたら、積極的に協力させていただきたいと思います。

高知県は高齢化が進んでおり、高齢単身世帯率においては全国1位です。このように超高齢社会を迎える中で、地域が必要としている医療に変化が訪れており、それに合わせて私たち医療機関も変革が求められています。そこで当院では、急性期医療から在宅復帰を目指した回復期医療とリハビリテーション医療まで、退院後は訪問看護、訪問リハビリテーションまで、シームレスに医療を提供することで地域医療に貢献したいと考えています。また、得意としている神経難病についてはより専門的な医療を提供し、「神経難病になっても、いずみの病院にかかっていれば安心だね」といわれる病院を目指していきます。今後も高知市の地域医療を支える病院として精進してまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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