院長インタビュー

いつでも、どこでも、だれでも安心してよい医療が受けられるよう、患者さんに寄り添う耳原総合病院

いつでも、どこでも、だれでも安心してよい医療が受けられるよう、患者さんに寄り添う耳原総合病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

大阪府堺市堺区にある耳原総合病院は、主に地域の急性期医療で中心的役割を果たしている病院です。

救急総合診療科(ER)や循環器センターでの診療に取り組む同院について、院長の河原林 正敏(かわらばやし まさとし)先生に伺いました。

当院の位置する大阪府堺市は府内の中南部にあり、人口約81万人の政令指定都市です。

当院の前身は、1950年に耳原町(現在の堺市堺区協和町)で民家の2階を借りて創設した“耳原実費診療所”です。1953年には“耳原病院”を開設し、総合病院として認可を受けたのが1965年のことです。その後当院は全面建て替え工事を行い、2015年には新病院として現在の場所で診療を始めました。当院はこれまで70年以上、この地域の皆さんに支えられて診療を続けてきました。

現在、当院は386の病床と31の診療科を擁し、地域の急性期医療を担う中核的な病院となっています。大阪府の二次救急告示医療機関として二次救急(入院や手術を要する重症患者を365日24時間体制で受け入れる救急医療)を担っているほか、大阪府がん診療連携拠点病院に指定されており、がんの患者さんに対して手術療法、化学療法(抗がん薬治療)、緩和ケアなど幅広く対応しています。

救急総合診療科(ER)では“断らないER”を実践すべく、年齢、性別、重症度を問わず、さまざまな病状や病態の患者さんを24時間体制で受け入れています。当診療科の治療では、年齢、性別、重症度にかかわらずさまざまな病状をもつ患者さんを対象に、他診療科の医師たちと連携のうえ、病状の改善に向けて必要な治療を優先的に行います。

また、当院への救急搬送件数は年々増加しており、2023年度には7,500件を超えました。特に循環器疾患や消化器疾患を抱えた救急患者が多く、これらの症例に対しては、迅速かつ専門的な対応を行っております。今後も当院では救急医療体制を強化し、患者さん一人ひとりに迅速な治療を提供するため、スタッフ一同日々努めています。

当院の各センターでは、診療科の枠を越えて診療を行っています。

当院は全部で7つのセンターを設けておりますが、そのうちの4つのセンターを紹介します。

循環器センターでは、循環器内科・心臓血管外科や関連する診療科の各スタッフが、多職種間で協力しながら初診から入院、検査および手術、そして退院後の経過フォローに至るまで患者さんを診させていただいています。急性心筋梗塞をはじめとする急性期疾患については、ハートコール(専用電話)を活用し、救急スタッフと連携して24時間365日で治療に対応しています。また、循環器科治療においては虚血性心疾患の患者さんに有効な治療法である心臓カテーテル治療を行っており、メスを使わない治療のため、患者さんへの身体への負担が少ないという特徴があります。当院での2023年度の心臓カテーテル治療は年間600件を超えており、大阪府内でも非常に多くの件数となっています。

腎センターでは、透析を行う前からそれぞれの患者さんのライフスタイルに合わせた治療選択ができるように支援を行っています。当センターの入院では腎症の鑑別や腎不全教育入院、透析導入、透析患者さんの急性期疾患など多岐に渡る症例を担当しており、血液透析はもちろん、腹膜透析も行っています。特に、血液透析を行う際に十分な血液量が流れるよう、動脈と静脈を直接つなぎ合わせて血管を造設するシャント手術は南大阪でも多くの症例数を当院が担当しています。

消化器センターは、最小の負担で最大の治療効果をあげるために内科・外科・腫瘍内科が協力し、専門スタッフが科を超えて診断から治療まで一貫して行っています。消化器疾患の治療の特徴として、当院は病理医が常勤していることから迅速で的確な診断をしたうえで、患者さんに合わせた治療・手術を行っています。特に、吐血や下血で当院に救急搬送される患者さんが多く、堺市内でも非常に多くの患者さんがいらっしゃっています。

周産期ファミリーケアセンターでは出産から女性のかかるがんまで、女性がかかる病気に対する治療を行っています。出産については当院では年間750件程度の出産に対応しており、この地域には外国籍の女性も多いため、そのなかで妊娠された方の出産も数多く受け入れています。

また、当院では子宮がん検診乳がん検診を毎日受け付けています。なかでも、堺市に在住の方で40歳以上の偶数年齢の女性は乳がん検診、20歳以上の偶数年齢の女性は子宮頸がん検診を無料で受診することができます。がんの検診結果は全て郵送で行っているため、検診後に当院へ来院する必要はありません。2人に1人ががんになる時代であり、がんの早期発見・治療のためには検診を定期的に受診することをおすすめします。健診の受診をご希望の方はぜひ当院までお問い合わせください。

当院は大阪府がん診療連携拠点病院に指定されています。がんの患者さんに対して手術療法、化学療法(抗がん薬治療)による集学的治療のご提案を行うほか、緩和ケア病棟を完備し、終末期の患者さんに対しても丁寧にサポートしています。

また、治療については手術支援ロボット(ダヴィンチXi)を導入しました。ロボット支援手術は患者さんへの身体の負担が少ない腹腔鏡下手術と同様に、お腹に1cm程度の穴を開けて、ロボットアームにつながれた腹腔鏡やさまざまな鉗子をお腹の中に入れて行う手術です。この手術は、開腹手術に比べて傷口が小さく、術後の回復が早いとされることから患者さんへの身体の負担が少ない、手術の安全性が高い、従来の腹腔鏡下手術では難しい部位の手術も可能などの特徴があります。以上の特徴から、ロボット支援手術はロボットを用いてより安全で精密な手術ができる新しい技術として、近年多くの病院で導入が進んでいます。当院では2024年の4月からロボット支援手術を開始し、大腸がんなどの消化器領域、前立腺がんや腎がんなどの泌尿器科領域、婦人科領域の疾患に対応しています。

当院では“希望のともしび”をテーマに院内の随所にアートを展開しており、職員やアーティスト、地域住民の協力を得て、病棟や待合室などに作品を展示しています。新病院の建設にあたって、患者さんがどのような病院を求めているのかという議論を交わした際、“病を治すだけでなく、患者さんの心にも希望の明かりを灯したい”という思いから、ある看護師が「ホスピタルアートを取り入れてほしい」と提案したのが始まりです。アートは院内それぞれの場所に合わせて飾っており、たとえば患者さんにとって怖い、痛い、不安という検査室や待合室の空間には、少しでも居心地がよいと思ってもらえるよう堺市にちなんだモチーフや花のイラストをシールにして壁に装飾しています。

これらのアートは当院のスタッフ自身の「ここにもこんなアートがあったらいいな」という提案から作られており、院内にいるアートディレクターが職場スタッフたちの意見を聞いてコンセプトを固め、実際のアート制作にもスタッフたちが参加しています。アートによって患者さんの心をほぐすだけにとどまらず、ここで働くスタッフにとっても仕事での気付きが増えたり、心地よく働けることにもつながれば嬉しいですね。

なお、ホスピタルアートは絵画やイラストのほか、誰でも気軽に弾けるピアノをエントランスに置くなどして音楽などにもジャンルを広げつつあり、医療従事者と地域住民の交流の場にもなっています。
2024年の12月には当院のこのような取り組みを評価していただき、アートで癒やしと安らぎの場を提供している医療機関に贈られる“癒しと安らぎの環境賞 2024”を受賞しました。今後もアートを院内に取り入れる取り組みを続けていきたいと考えています。

先方提供
手術ホールの壁面のアート(耳原総合病院ご提供)

当院1階(入院窓口横)にあるサポートセンターでは、患者さんやご家族、地域の方々、開業医の先生方からのさまざまな問い合わせに対応しています。サポートセンターは、患者相談室、医療福祉相談室、入退院支援室、地域連携室、がん相談センターの機能を集約したものです。地域の医療機関から患者さんを紹介していただいたり、そのような医療機関に病状が安定した患者さんを紹介したりして、連携を図るなどしています。

今後、2030年の堺市の人口は60歳以上が最多層になって超高齢社会を迎え、高齢者の医療需要は増加していくとみられます。そのような状況に対して社会医療法人同仁会は、今後の地域社会の姿を見据えた事業構想“みみはら2030年の樹”に基づき、さまざまな取り組みを進めています。

具体的には、引き続き救急・急性期機能を強化するとともに、がんへの対応・診療機能を強化します。その一環として、患者さんへの身体の負担が少ない手術を行うことのできる手術支援ロボット(ダヴィンチXi)の導入を行ったほか、ハイブリット手術室(手術台と心・血管X線撮影装置を組み合わせた手術室)の整備を検討中です。さらには、かかりつけ医との連携強化や在宅医療を支えるための地域包括医療病棟の導入にも取り組みます。

また、当院では“病気にならない・重症化させない予防”の機能も強化し、病気の早期発見で重症化を防ぐための取り組みも進めていきます。

この構想の実践・実現は、この地域で引き続き無差別・平等の医療・介護を提供し、 地域の方々の医療・介護ニーズに応えていくために不可欠の取り組みと考えています。 引き続きいつでも、どこでも、だれでも安心してよい医療が受けられるよう、これからも全力で取り組んでまいりますので、ご支援をお願い申し上げます。

この記事は参考になりましたか?
記事内容の修正すべき点を報告
この記事は参考になりましたか?
この記事や、メディカルノートのサイトについてご意見があればお書きください。今後の記事作りの参考にさせていただきます。

なお、こちらで頂いたご意見への返信はおこなっておりません。医療相談をご要望の方はこちらからどうぞ。

メディカルノートをアプリで使おう

iPhone版

App Storeからダウンロード"
Qr iphone

Android版

Google PLayで手に入れよう
Qr android
Img app