院長インタビュー

信頼される医療を提供し、社会に貢献することを目指す――山形病院

信頼される医療を提供し、社会に貢献することを目指す――山形病院
メディカルノート編集部  [取材]

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全国に140の病院を展開する国立病院機構のうち、山形病院はてんかんをはじめとした神経難病と重度心身障害者(児)医療に特化した病院です。専門性の高い診療を実践する一方、行政や大学病院などと連携し新しい治療法の開発にも取り組んでいます。

そんな同院が担う役割や今後の展望について、院長である宇留野 勝久(うるのかつひさ)先生にお話を伺いました。

当院は2つの国立療養所(左沢光風園・山形晴山荘)が統合し、1974年に国立療養所山形病院として開設されました。当初は病床数410床のうち結核病床が156床あり、重症心身障害者(児)を多数受け入れていたことも相まって、療養型病院としての色合いが強い病院でした。1995年に神経内科医の木村先生が院長になったことを機に、神経難病に特化した病院へと転換していきました。

その後2004年には独立行政法人化に伴って現在の国立病院機構 山形病院となり、新たなスタートを切りました。治療薬の開発や衛生環境の改善などによって結核患者さんが減少した現在は、結核モデル病床6床を含む病床300床を備え、地域の皆さまに信頼される医療の提供に取り組んでいます。

当院は神経疾患に特化した病院として、山形県より神経難病分野(神経・筋疾患)の拠点病院に指定されています。神経難病として知られる筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病筋ジストロフィーなどについて、適切な検査・診断から慢性期の治療、回復期のリハビリテーションまでを一貫して担当しています。

山形県の委託事業はこのほかに高次脳機能障がい者支援センター、認知症疾患医療センターなどがあります。高次脳機能障がい者支援センターでは障害者の社会復帰の支援を行い、認知症疾患医療センターでは地域の医療機関や介護施設などと連携して、患者さんご本人やご家族が安心して生活できるような環境づくりをお手伝いします。

今の医療では認知症を完全に治すことはできませんが、軽度認知障害(MCI)の段階で介入できれば認知症への移行を遅らせたり、認知機能の回復が期待できたりします。MCIの治療には認知症治療薬・レカネマブが有効ですから、私たちとしても地域のクリニックなどと連携してMCIの早期診断に力を入れています。

当院では神経疾患に対する適切な診断を行うためにMRIを導入しており、脳の血流状態を確認する検査(ASL)によって、より質の高いてんかん診療につなげています。ASLは意識障害の原因を調べる際にも役立ち、過去には高齢患者さんの意識障害に診断がついた事例もありました。私がてんかんを専門にしていることもあり、抗てんかん薬の治験への参加はもちろん、新薬をいち早く導入していることも特徴です。

最近のトピックスとしては、神経難病の患者さんに対する緩和ケアが挙げられます。これまでがんの終末期における緩和ケアを慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)の患者さんに応用するケースはあったようですが、神経難病の患者さんに実施するようになったのは当院が初めてかもしれません。これは副院長を務める山川 達志先生が発案者で、1人でも多くの患者さんを苦しみから救いたい……、そんな気持ちで緩和ケアに取り組んでいます。

神経疾患に対する専門的な医療を行っていることに加えて、聴覚に障害のある患者さんに向けた手話外来を開設していることも特徴です。2020年4月にスタートした手話外来は医師・患者さん・手話通訳士の3者で行うものではなく、手話通訳士の資格(厚生労働省認定)を持つ脳神経外科医が診療にあたります。

病気のことや治療内容については専門用語なども多く、一般の方でも難しさを感じることがあるかもしれません。当院の手話外来は豊富な医療知識と高度な手話技術を兼ね備えた医師が担当しておりますので、耳の不自由な患者さんにも安心してかかっていただけるのではないでしょうか。

手話外来を担当する朽木 秀雄先生は、山形県内における医療手話通訳の7割ほどを担っており、看護師やリハビリテーションスタッフの中にも手話を学び始めたスタッフがいます。障害のある人も・ない人も、全ての人が平等に良質な医療を受けられるよう、私たちの取り組みがその一助となれば幸いです。

私は山形県上山市に生まれ、山形大学医学部を卒業して医師になりました。神経内科医として一貫しててんかん診療に従事し、研究のためにアメリカへ留学していた時期もありました。

前院長からのバトンを引き継いで院長となった今は、当院の理念である“患者さんに優しく、信頼される医療で社会に貢献します”を実現するべく取り組んでいます。山形県における神経難病センターとして、障害のある方やご高齢の方の暮らしを支える病院として、今後も引き続き良質な医療を提供してまいります。

*病床数や診療科、医師、提供する医療の内容等についての情報は全て2024年9月時点のものです。

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