福岡県大牟田市にある大牟田市立病院は、30の診療科をそろえ、断らない医療を目指している病院です。
有明医療圏の急性期医療も担っているほか、地域がん診療連携拠点としても機能している同院の役割や今後ついて、院長である鳥村 拓司先生に伺いました。
当院は、1937年に開所した「大牟田市診療所」を前身とし、1950年に「大牟田市立病院」として開設したのが始まりです。現在は全30の診療科を有し、一般病床320床を備え、地域の中核的な医療機関として機能しています。CCU、ICU、HCU、腎センター、化学療法センターも備えており、高度医療にも可能な限り対応できる体制を整えています。
また、当院は地域医療支援病院、地域がん診療連携拠点病院、災害拠点病院、救急告示病院などの指定を受けており、地域の医療ニーズに幅広く対応しています。
来年度にはMRIの更新を予定するなど、医療機器の導入も積極的に進め、新しい医療設備と豊富な専門知識を持つスタッフにより、地域住民の皆さんに質の高い医療を提供し続けられるよう努めています。
2023年5月に、南筑後地域では初となる手術支援ロボット“ダ・ヴィンチ”を導入しました。ダ・ヴィンチによる手術の利点は、通常の手術と比較して出血量が少なく、術後の回復が早い点です。これまで、外科では大腸がんと胃がんの手術、泌尿器科では前立腺の手術、婦人科では良性の子宮全摘出手術においてダ・ヴィンチ手術を行っており、約1年間で症例数は100例に達しました。患者さんの負担軽減のため、今後は術式を拡大するとともに、術者についても増やしていきたいと考えています。
そのほか、当院では定位放射線照射を実施することができる放射線治療装置も導入しており、各種がん疾患での治療に活用しています。また、当院で対応が困難な3次救急については、久留米市内の大学病院等に搬送を行っているところですが、高齢者が非常に多い地域でもありますので、遠方への移動は患者さんやご家族の負担となります。そういう意味からも、今後も様々な治療に対応することができる機器をそろえ、高度医療が必要な場合でもできる限り対応できる体制を整えていきたいと考えています。
当院では2015年に内視鏡センターを開設し、“お腹を切らない、お腹に穴を開けない”治療を行っています。近年は消化管の早期がんに対する治療に力を入れており、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)で、咽頭・食道・胃・十二指腸・大腸とあらゆる臓器の治療に当たっています。大腸がんでは2023年の手術実績は90件(腹腔鏡手術、ロボット支援下手術の合計数)となったほか、内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD)は39件となり、2024年7月には読売新聞「病院の実力」(九州・山口編)にも治療実績が掲載されました。また、当センターはNTT東日本関東病院を始め、複数の大学病院とも共同研究を進めており、今後もさらに高いレベルの治療を提供できるよう尽力してまいります。
当院のある地域では、子どもの救急診療に対応している病院が限られています。特に夜間における小児救急ニーズに対応するため、地域医師会と共同で行う平日夜間小児急患事業に参画し、制度の体制維持に協力しているところです。毎週月曜と木曜は19時から21時、土曜は土曜14時から22時に、医師会を通じて内科又は小児科の先生が来院され、当院においてセンター化方式による運営が行われています。
また、地域で脳外科がある病院も非常に限られています。当院は日本脳卒中学会認定の1次脳卒中センターであり、地域の回復期リハビリテーション病院と連携して“有明地区脳卒中連携パス”を運用しています。当院には5名の脳外科医がおり、脳梗塞の初期治療は薬ではなくカテーテルを用いて積極的に血栓を除去する治療を行うこと24時間体制で行うことが可能です。
当院の患者総合支援センターには、直通電話システム・“ドクターライン”を設置し、平日時間内における地域の開業医や介護施設からの入院・転院相談や急患対応の窓口として運用しており、紹介患者の円滑な受入れを図っています。
現在、開業医や他施設から月平均150件の連絡を受けており、医師が常駐する日勤帯では、適切な担当医師にすぐにつなぐよう対応しています。ドクターラインから実際の受診につながる割合は、95%にも上っています。
この取り組みにより、救急車による搬送から入院に至るケースも増加しており、2023年の年間対応件数は2,000件を超え過去最多となりました。ドクターラインの導入は地域の医療機関との連携強化と緊急時の迅速な対応を可能にし、“断らない医療”の実践に重要な役割を果たしています。
私は常々、「患者さんに愛される病院を目指そう」とスタッフに話をしています。それは当院の理念でもあり公立病院としての役目だと考えています。
当院に来る初診の患者さんは、地域の開業医からの紹介がほとんどです。紹介されたとしても、患者さんに行きたくないと思われてしまえばそれまでです。安心して受診していただけるよう、私たちは安心・安全な医療の提供と、断らない医療の提供に努めることを行動指針の一つとして日々の診療に当たっています。
また、いくら私たちがよい医療を提供できる体制を持っていたとしても、それを知ってもらわなければ、意味がありません。情報発信に力を入れるべく、当院では2023年4月に広報室を新設し、今年度にはインスタグラムのアカウントも開設しました。(以下からご覧いただけます)
https://www.instagram.com/omutacityhp/
これからも、日本一愛される病院を目指し、最適な医療の提供と地域の皆さんへの積極的な情報発信に取り組んでまいります。