院長インタビュー

山武長生夷隅地域の高度救急医療を支える東千葉メディカルセンター

山武長生夷隅地域の高度救急医療を支える東千葉メディカルセンター
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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千葉県東金市にある東千葉メディカルセンターは、地域の高度救急医療を担うために設立された三次救急病院です。2024年で設立10周年を迎えた同院の地域での役割や今後ついて、センター長である岩立 康男(いわだて やすお)先生に伺いました。

東千葉メディカルセンターは、地方独立行政法人東金九十九里地域医療センターによって2014年(平成26年)4月1日に開設されました。2024年4月で10周年を迎えた、まだ若い病院といえます。

当センターは東金市の西端にあり、15分も歩けば千葉市緑区に行ける立地ですが、当センターがカバーするのは九十九里の海岸線に沿って横芝光町から東金市、勝浦市まで連なる山武長生夷隅医療圏です。ここには救急医療を積極的に行う医療機関がほとんどなく、そのような地域で高度急性期医療を担うことを目的に当センターが設立されました。

病院内観

2018年(平成30年)以降、救急患者の受け入れ件数は年間3,000人を超えており、救急医療の面では一定の信頼を得ているといえるでしょう。一般医療に関しても、開院当初から診療科数を徐々に増やして現在は18の診療科があり、手術件数も年々増加傾向にあります。

アクセスはJR成東駅、千葉駅、大網駅からバスを利用するか、自家用車での来院が主な交通手段となっています。そのほかに、東金市役所、九十九里町保健センターを結ぶ無料送迎車両が運行されていて、予約なしで利用できます。

開院から10年、地域の方々から「東千葉メディカルセンターがあるから安心」と思っていただけるような病院を目指してきました。今後もその信頼感を繋いでいけるよう、スタッフ一丸となって誠心誠意尽くしてまいります。

外観

当センターは、地域の高度救急医療を担うというコンセプトで設立された病院です。そのため建物や設備も救急医療に特化して設計されています。災害などの際にも医療サービスが滞りなく提供できるよう、建物の設計段階から考えられて造られました。特に吹き抜けになっていて広々とした玄関ロビーが印象的で、さまざまな医療ドラマのロケ地としても使われています。

この1階はすべて救急医療ゾーンとなっています。救急患者さんが上下移動することなくスムーズに治療を受けられるよう動線を考えて、救急外来の診察室や集中治療室(ICU)、手術室、検査室を1階に配置しました。当センターにはヘリポートがありますが、大規模災害などの際には自衛隊の大型ヘリコプターが着陸できるよう地面が補強されています。

救急科・集中治療部には、専任の医師7名、非常勤医5名が在籍。看護師、薬剤師、臨床工学技士、理学療法士、管理栄養士、メディカルソーシャルワーカーなどとも連携して、24時間365日絶え間ない救急医療を行っています。

当センターは地域災害拠点病院でもあり、院内には災害派遣医療チームDMATも持っています。その責務を果たすため、日頃から防災計画を立案し、定期的に防災訓練を行って、いついかなる時も災害医療を提供できるよう心がけています。

ドクターヘリ

脳神経外科・脳神経内科では、脳血管障害を中心とした神経救急疾患の診療を行っています。なかでも患者数が多い疾患は、日本人の死因として第3位にランクインする脳卒中です。

当センターの脳神経外科には5名、脳神経内科には3名の常勤医師が在籍しています。また急性期の脳卒中専用の集中治療室(SCU)を12室設置し、脳神経内科、脳神経外科専門医、脳血管内治療専門医がチームを組んで24時間体制で治療に当たっています。

なお、山武長生夷隅医療圏には、複数の脳神経内科医が常勤している医療機関がほぼありません。この地域のパーキンソン病筋萎縮性側索硬化症多系統萎縮症といった脳神経の難病治療については、当センターが支えていると自負しています。

当センターの属する山武長生夷隅医療圏は、高齢化率が36%と全国平均より10ポイント近くも高くなっています。そのため、関節がすり減り形が変わってしまう変形性関節症、腰や足が痛む坐骨神経痛五十肩といった、加齢により起こりやすい疾患の患者さんが少なくありません。

当センターの整形外科は、外来患者数、入院数、手術数のいずれも非常に多い数になっています。在籍する医師は11人もの大所帯となっており、患者さんをなるべくお待たせしないよう毎日奮闘しています。

関節疾患や脊椎・神経系疾患をはじめ、転倒や転落による骨折捻挫・靭帯損傷といった外傷については、診療数もかなり多いため経験豊富と言ってよいでしょう。またスポーツ障害の専門医も在籍していて、治療からスポーツへの復帰までサポートしています。

近年、全国的に産婦人科・小児科の数が減っていることが問題となっています。当センターの属する山武長生夷隅医療圏も例外ではなく、特に小児科の病院は数えるほどしかありません。

当センターの産婦人科には4人、小児科には3人の常勤医師が在籍し、ときに連携をとって出産、小児医療を行っています。産婦人科は夜間・休日も当直していて、緊急の出産や手術にも対応しています。

住民の方々からのニーズを受けて、産婦人科では2023年から不妊治療もスタートしました。小児科は発達障害に対する発達検査も行っています。

地域医療を維持していくためには後進の育成が欠かせません。当センターは、山武長生夷隅医療圏では唯一の臨床研修病院として、研修医・専攻医の育成に力を入れています。臨床研修病院となるには、一定以上の病床数、一般的な疾患から高度な治療まで幅広く対応しているなど、さまざまな条件が求められており、当センターは基幹型臨床研修病院として認定されています。

当センターでは千葉大学医学部と連携し、院内に千葉大学医学部附属病院 東金九十九里地域臨床教育センターを設置しています。教官として千葉大学の特任教授などの特任教官が常時30人ほど在籍し、研修医・専攻医の教育に当たっています。内科系診療科では、当センターオリジナルの研修プログラムも用意しています。

また、職場環境として、当センターは千葉市に近いため、千葉市街からの通勤も可能です。院内には無料宿舎もあり、自宅と宿舎の併用できるなど、研修医に対して柔軟に対応しています。

地域医療の現場では、患者さんを総合的に診られる総合内科医や、さまざまな疾患や外傷に幅広く対応できる救急医が求められています。特に救急医療は、医療ドラマより現実のほうがドラマチックというくらいやりがいを感じられる分野だと思うので、ぜひ若手の医師にチャレンジしていただきたいと思っています。

一般の人々にとって、病院はあまり足を運びたくない場所ではないでしょうか。しかし、健康管理や疾病予防の他、どんな疾患であっても、早期発見・早期治療が重要です。そのためにも普段から病院に親しんでもらい、足を運びやすい場所にすることが大切だと考えています。

当センターでは以前から広報誌を発行していましたが、2023年に誌名を「しずく」に変更し、内容も刷新しました。写真やカラーイラストをふんだんに掲載することで、読みやすく分かりやすい広報誌になったと考えています。

また、新型コロナ禍で休止していた市民公開講座を、2024年から再開しました。生活習慣病など身近な疾患をテーマに、今後は月1回の頻度で開催していく予定です。

市民公開講座についてはこちらでご案内しているのでご確認ください。

当センターの玄関ロビーは吹き抜けになっていて、広々とした明るい雰囲気が特徴となっています。当センターの宝ともいうべき白いグランドピアノも設置されているので、今後はコンサートなどにもどんどん活用していくつもりです。

病院夜景外観

千葉県は東京都の東隣にありますが、それだけに医療リソースの流出が激しい地域でもあります。その証拠に、人口あたりの医師数を見ると、千葉県はワースト5に入るくらい少なくなっています。

すぐに解決することは難しくても、将来的な人材確保につながればという思いから、当センターでは若手医師の育成に力を入れています。各領域の専門家とともに、さまざまな疾患を満遍なく診られる医師も地域医療の現場で求められているという考えから、当センター独自の研修プログラムも用意しました。現在、当センターで研修を受けている医師の多くが山武長生夷隅医療圏に残ってくれればと願っています。

私自身、脳神経外科医として脳卒中で運ばれてきた患者さんを数多く診療してきました。来院したときには意識がなかったのに、治療の結果、普通に歩いて退院していく患者さんの姿を見て、医師になってよかったとやりがいを感じたことも何度もあります。ただ、残念ながら助けられなかった患者さんもいました。そういった経験から、病気になってから来院するのではなく、そもそも病気にならないようにすることが重要だと感じています。病気を予防するための情報や知識の発信です。

当センターとしても、できるだけ親しみを持っていただけるよう、さまざまな取り組みを行っています。地域の皆様には、ぜひ気軽に来院して疾患の予防につなげていただきたいと思います。山武長生夷隅にお住まいの方だけでなく、近隣の地域からの来院も大歓迎です。

1つだけ皆様に覚えていてほしいのは、脳の病気を防ぐには睡眠時間の確保が大切だということでしょう。睡眠不足になると脳血管に負担がかかったり、脳が炎症を起こしたりといった問題が起こることが分かっています。

また、何か趣味をもつことも大切です。研修医の健康状態を調べた研究では、趣味のある人のほうが無趣味の人より健康状態がいいという結果が出ました。ひとつのことに集中するのではなく、脳を広く使ったほうが脳が活性化され、判断力も上がるということです。

当センターを救急医療や高度医療はもちろんのこと、疾病予防にも役立てていただき、地域の皆様が健康に不安を覚えることなく過ごせるような環境作りに努力してまいります。

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