院長インタビュー

岡山県県北エリアの急性期医療を担う、津山中央病院

岡山県県北エリアの急性期医療を担う、津山中央病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

津山中央病院は、岡山県北にある総合病院です。三次救急(命の危険にかかわるような重症の患者さんへの救急医療)に対応する救命救急センターを有し、県北エリアの急性期医療を担っています。2022年からは運行日数や地域を拡充した新ドクターカーの運用を開始し、救急車を待つだけでなく必要に応じて医師が自ら現場に向かえる体制がより充実しました。

そんな同院の特徴や今後について、病院長の林同輔(はやし どうふ)先生にお話を伺いました。

当院は、1954年に岡山県津山市二階町で開院し、1999年12月に現在の津山市川崎に移転して救命救急センターを併設した新病院が誕生しました。合計515床の病床を有し、“お断りしない救急対応”などを掲げて地域の皆さんに良質な医療をご提供しています。

開院当初から県北エリア内で治療を完結させたいという強い思いがあり、 “地域完結型医療の最後の砦”として病院機能を拡大してまいりました。これまで健康管理センターやがん陽子線治療センターなどを開設したほか、2018年にはSICU(高規格集中治療室)を備えた新棟が誕生、2019年にはロボット手術室やハイブリッド手術室を備えた新手術室を増築しました。

当院の使命は県北における急性期医療をしっかりと支えていくことであり、総合病院としてさまざまな役割を担っています。また当院は第2種感染症指定医療機関でもあり、2020年から始まった新型コロナウイルス感染症についても率先して診療を行ってきました。

病院外観
病院外観(津山中央病院ご提供)

当院は三次救急に対応する救命救急センターを有しておりますが、救急医療においては救急隊との連携が非常に大事になります。そのため救急隊からのホットラインはもちろんのこと、さまざまなツールを活用することでスムーズな連携を実現しています。

また、救命救急センターでは2022年の春から“新ドクターカー”の運用を開始しました。ドクターカーはどんな悪路にも対応できる4WD車で、緊急を要する患者さんの場合、救急車とは別に当院から医師や看護師が乗ったドクターカーが向かい、現場で協力して必要な処置を行います。これまでもドクターカーの運用を行ってきましたが、年間180日程度しか出動できなかったことや、津山県域消防組合の管轄範囲でしか活動できていませんでした。新ドクターカーは年間約250日に運行日が増え、美作市や西粟倉村、真庭市、新庄村までも出動可能になっています。運用は順調で、現在平均して1日2~3回出動しています。

ドクターカー
ドクターカー(津山中央病院ご提供)

当院は、岡山県から地域がん診療連携拠点病院に指定され、県北地域のがんの治療の中核を担っています。治療にあたってはがんの3大治療法である手術、放射線治療、化学療法を組み合わせた集学的な治療を、患者さんの状況や年齢に応じて行っています。また、放射線治療ではX線だけでなく、中四国地方では唯一の“陽子線”治療(水素の原子核である陽子を使った治療)を行っているほか、化学療法では近年進歩が著しいがんゲノム医療にも対応しています。

当院では2019年に県北エリアで初めて手術支援ロボット“ダ・ヴィンチ”を導入しました。ロボット手術では医師が患者さんに触れることなく、患部の画像を見ながらロボットのアームを動かして手術を行います。ダ・ヴィンチは手術時に開ける傷口が小さく、また手ブレが起きないためより正確な手術が可能になるため、患者さんにとっても体の負担が少なくなり、退院までの日数を短縮できるといったメリットがあります。

導入当初は前立腺がんに対してのみロボット手術を行っていましたが、最近では肺や消化器にも適応範囲を広げており、今後よりその範囲を広げていく予定です。

放射線治療では、よりピンポイントにX線を放射できる高精度放射線治療装置“TrueBeam”を導入しており、正常組織への影響を軽減しながら病変に十分な効果が出るように、放射線の種類・エネルギーの大きさ・照射角度・照射範囲などをコンピュータで綿密に計算しながら治療を行っています。

さらに、当院は2016年には岡山大学と共同で運用する“がん陽子線治療センター”を開設しました。陽子線治療は、X線よりも体内の深い部分に陽子線を集中放射することで、たとえば手術では対応が難しい頭頸部がんなどの病巣へもダメージを与えることができます。また、正常な周囲の組織をなるべく傷つけることなく治療することができるため、放射線の影響を受けやすい臓器の近くに発生したがんにも照射できる点が特長といえます。

*陽子線治療(照射技術料)の一部は自費診療(保険適用外)となります。同院は厚生労働省より先進医療の認可を受けているため、自費診療と保険診療を併用することが可能です。
・費用(税込):   陽子線治療費2,883,000円

※一連の陽子線照射につき・全額自己負担
※入院・検査料等には健康保険が適用されます

・リスク・副作用:局所治療のため、がんが全身に転移しているIV期の患者さん、消化管から発生した胃がん大腸がんには適応てきません。またリンパ節転移のある患者さんへの治療は難しいとされています。
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がん陽子線治療センター外観
がん陽子線治療センター外観(津山中央病院ご提供)

また当院は2023年9月に、がんゲノム医療連携病院として認定されました。がんゲノム医療センターでは岡山大学との連携のもと、当院で遺伝子検査(がん遺伝子パネル検査)を受けていただいたり、検査の結果効果が見込める薬が見つかった場合は当院にて治療を受けていただくことができます。

当院では循環器内科と心臓血管外科が診療科の枠を超えて連携し、“心臓血管センター”にて治療を行っています。

心臓カテーテル治療では、冠動脈の血流をよくするPCI(経皮的冠動脈形成術)や不整脈に対するカテーテルアプレーションなどに加え、2022年からは左心室の負荷を直接軽減する補助人工心臓の1つ、インペラ(補助循環用ポンプカテーテル)を導入しました。これにより心筋梗塞(しんきんこうそく)をはじめとした救命率の向上につなげることができるようになってます。
また最近では新たに、低侵襲(ていしんしゅう)な左心耳閉鎖治療法・ウォッチマンを開始しました。これは左心耳閉鎖デバイスを心臓に留置することで永久に閉鎖し、血栓が全身に飛ぶのを防ぐ治療法です。

さらに、2021年からはTAVI大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル的大動脈弁置換術)をスタートしています。TAVIとは傷んだ大動脈弁を人工弁に取り替える手術で、従来のように開胸して一時的に心肺を人工的に停止させることなく、カテーテルを使って弁を交換します。TAVIを行うには“ハイブリッド手術室”と呼ばれる、手術台とX線撮影装置を組み合わせた特別な手術室が必要になりますが、当院はこのハイブリッド手術室を設置して年間50症例のペースでTAVIを行っています。

ハイブリッド手術室
ハイブリッド手術室(津山中央病院ご提供)

当院を経営する津山慈風会は、 “地域の皆さんにやさしく寄り添います”を理念として掲げています。この理念のもと、当院は地域を支え、安心していただける中核的な病院としての役割を担いたいと考えています。

2011年7月には岡山県知事より地域医療支援病院の承認を受け、地域の医療機関とより顔の見える関係の構築にも取り組んでいるところです。その具体例としては、月に1回、地域連携セミナーを開催して開業医の先生方と勉強会を行っているほか、当院の機器や病床を共同利用できる連携登録医の方々との懇親会なども行っています。
また、国が進めている在宅医療の推進をサポートするため、介護・在宅医療機関や行政機関との連携を深め、地域の皆さんの健康を支える取り組みも積極的に推進中です。

少子高齢化や人口減少が進むなか、これからは“人”が重要になってくるでしょう。職員たちに「この病院で働きたい」と思ってもらえるような働きやすい環境をつくることが、私の役割だと思っています。今後も患者さんと職員の両方が幸せを感じられるような病院づくりに力を注いでまいりますので、どうぞよろしくお願いいいたします。

※本文中の数字は全て2024年10月現在のものです。

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