
本記事では、胆管がんの種類や症状、治療法などの知識から、新しい治療選択肢であるがんゲノム医療までを解説します。
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胆管がんは発生場所によって大きく3つに分類されます。主な症状は黄疸ですが、症状がみられないこともあります。
胆管がんは、胆汁(肝臓で作られる消化液)の通り道である“胆管”にできるがんです。がんが発生した場所によって、主に以下の3つの種類に分けられます。肝門部領域胆管がんと遠位胆管がんは肝臓の外にあるため、まとめて“肝外胆管がん”と呼ばれることもあります。
胆管がんで最も特徴的な症状は黄疸です。黄疸は、がんによって胆管が塞がれ、胆汁を構成する成分(ビリルビン)が血液中に逆流することによって生じます。胆管がんの約90%でみられるといわれますが、黄疸やそのほかの症状がないまま、検診などで発見されることもあります。
これらの症状は胆管がん以外でもみられることがあります。症状が現れた場合は、原因を確かめるためにも、消化器内科などの医療機関を受診しましょう。
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胆管がんはステージによって0~IV期に分類されます。早期発見・早期治療が重要です。
がんのステージは、がんの進行度合いを示す指標で、治療方針を決定するために用いられています。胆管がんのステージは、以下の3つの要素を組み合わせたTNM分類を用いて、0~IV期に分類されます。
がんの発生した場所(肝内胆管がん、肝外胆管がんなど)によって、詳細は異なります。一般的にステージが進むほど、がんが広範囲に及んでいることを意味します。
国立がん研究センターによると、肝内胆管がんの5年生存率(ネット・サバイバル*)は21.1%と報告されています。また、ステージ別の5年生存率は以下のとおりです。
国立がん研究センター 院内がん登録生存率集計(2014~2015年5年生存率)より
*ネット・サバイバル:がんが原因での死亡のみを考慮した生存率。がん以外の原因による死亡(他の病気や事故など)は除外して算出される。
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胆管がんの治療では、まず手術が可能か検討されます。手術が難しい場合は、主に薬物療法が行われています。
体が手術に耐えられる状態で遠隔転移がない場合などでは、手術が標準治療*となります。手術方法はがんの発生部位によって異なり、一般的に以下の手術が行われます。
手術後は、再発を予防する目的で、経口抗がん薬による術後補助化学療法が行われることが標準的です。
*標準治療:科学的根拠に基づき、現時点で最良とされる治療法。
**肝切除術:肝臓の一部を切除する部分切除から肝臓の右半分(右葉)あるいは左半分(左葉)のどちらかを切除する葉切除が行われる。
***肝外胆管切除術:肝臓の外にある胆管を切除する手術。
***膵頭十二指腸切除術:胆管が膵臓の中に入り十二指腸に到達する部分(膵頭部)と十二指腸を切除する手術。切除後には、残った胆管・膵臓・胃(十二指腸)を小腸とつなぐ。
手術による完全な切除が困難な場合や再発した場合では、主に薬物療法が行われます。従来は2種類の薬を併用する方法が主な選択肢でした。近年では、免疫チェックポイント阻害薬などを加えた3種類の薬を併用する方法が主に用いられるようになり、治療の選択肢が広がりました。
ただし、免疫チェックポイント阻害薬では、免疫関連有害事象(irAE)と呼ばれる副作用が生じる場合があります。肺炎や下痢、皮膚障害などが現れた場合は、主治医に伝えましょう。
黄疸に対しては、胆道ドレナージと呼ばれる治療が行われることがあります。胆道ドレナージでは、一般的にステントと呼ばれる管を胆管内に留置し、胆汁を流れやすくさせます。
標準治療ではありませんが、手術による切除が不可能で遠隔転移がない場合は、放射線治療も選択肢となる可能性があります。
2022年には、粒子線治療*(陽子線・重粒子線)も手術による切除が難しい肝内胆管がんに対して保険適用となり、選択肢の1つとなっています。
*粒子線治療:がんの周囲のみに集中して放射線(粒子線)を照射する治療。粒子線の原子核が水素の場合は陽子線、炭素の場合は重粒子線と呼ばれる。
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2026年現在、がんの標準治療がないまたは終了見込みなどの場合、がんの遺伝子検査が保険適用となります。この検査で特定の遺伝子変異が見つかった場合はがんゲノム医療が選択肢となりますが、遺伝子変異が見つからない場合もあります。
がん遺伝子パネル検査を行い、がん細胞の遺伝子を調べることで、特定の遺伝子変異が見つかることがあります。その遺伝子の変異に合わせた治療はがんゲノム医療と呼ばれ、研究が進められています。
2026年現在、標準治療がないまたは終了が見込まれる場合や血液がんの場合などには、がん遺伝子パネル検査を公的医療保険の範囲内で受けることができます。ただし、検査を受けても遺伝子変異が見つからない場合や、変異に対応した治療薬がない場合、患者さんの全身状態によっては新たな薬物療法を行えない場合などがあります。
肝内胆管がんの約5~10%では、“FGFR2融合遺伝子”という細胞などの増殖や分化にかかわる遺伝子の融合異常がみられます。この場合、FGFR阻害薬という種類の治療薬が選択肢となり、標準治療終了後にがんゲノム医療を受けることができる可能性があります。しかし、FGFR阻害薬は網膜剥離や高リン血症などの副作用が生じる場合もあります。
胆管がんではFGFR2融合遺伝子以外の遺伝子異常が認められることがあります。たとえば、肝外胆管がんの約11%は、がん細胞の表面にHER2というタンパク質が多く現れる“HER2陽性”であり、約15%にはIDH1と呼ばれる遺伝子の変異があることが報告されています。2026年現在、HER2に対しては治療薬の研究が進められ、IDH1遺伝子変異に対してはIDH1阻害薬の承認申請が進められています。
また、BRAF V600Eという遺伝子変異がある場合は2つの分子標的薬(BRAF阻害薬とMEK阻害薬)の併用、MSI-HやTMB-Hと呼ばれる遺伝的特性がある場合は抗PD1阻害薬、NTRK1/2/3融合遺伝子が陽性の場合はTRK阻害薬が選択肢となります。
A.保険診療としてがん遺伝子パネル検査を受けた場合、検査自体の費用は3割負担で約17万円です。もし遺伝子異常が見つかり治療を受けられる場合、薬そのものの費用は薬価(薬の価格)に応じています。たとえば、FGFR阻害薬であるペミガチニブの場合、3割負担で1錠あたり約8,000円かかります(2026年時点)。加えて、検査の準備費用や入院費なども必要となります。
胆管がんのゲノム医療は高額療養費制度の対象となる可能性があるため、ご加入の健康保険や病院の窓口に相談するとよいでしょう。
この記事では胆管がんの基本的な知識から、がんゲノム医療についてまで解説しました。胆管がんの標準治療ではまず手術が検討され、手術が難しい場合は主に薬物療法が選択肢となります。新たな治療薬の研究も進んでおり、標準治療が終了した場合などにがんゲノム医療を活用できる可能性があります。
治療や副作用のことだけでなく、医療費や今後の生活のことなど、さまざまな不安や悩みがあるかもしれません。それらの不安や悩みについて相談できる公的な窓口として、全国のがん診療連携拠点病院などに“がん相談支援センター”が設置されています。患者さんやご家族であれば誰でも利用可能であるため、相談することも検討してみましょう。
北海道大学大学院医学研究科外科学講座 消化器外科学分野Ⅱ 教授、北海道大学病院 消化器外科Ⅱ 科長
北海道大学大学院医学研究科外科学講座 消化器外科学分野Ⅱ 教授、北海道大学病院 消化器外科Ⅱ 科長
日本外科学会 外科専門医・指導医日本消化器外科学会 消化器外科専門医・消化器外科指導医・消化器がん外科治療認定医日本消化器病学会 消化器病専門医・消化器病指導医日本肝胆膵外科学会 肝胆膵外科高度技能指導医日本胆道学会 認定指導医 ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター
1988年北海道大学医学部卒業。外科医として複数の病院にて経験を積み、1998年には医学博士学位を取得。肝胆膵外科を専門分野とし、北海道大学病院で膵臓がんを担当する消化器外科IIの科長(教授)として、「患者は家族」をモットーに日々高度な手術治療を行っている。
平野 聡 先生の所属医療機関
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