概要
ウイルス性髄膜炎とは、ウイルスが原因で発症する髄膜炎を指します。
髄膜炎の原因としては細菌や結核など多くのものが挙げられますが、そのなかでもウイルス性髄膜炎は頻度の高いタイプです。ウイルス性髄膜炎を発症すると、頭痛や吐き気などの症状がみられますが、多くの場合は後遺症を残すことなく治療が可能です。ただし、ヘルペスウイルスなど、病気が悪くなる可能性の高いウイルスに感染することもあるため、髄膜炎症状がみられる際は、早期に医療機関を受診することが大切です。
原因
原因となる代表的なウイルスはエンテロウイルスで、ほかにも、エコーウイルスやコクサッキーウイルスなどが主流です。エンテロウイルスは小児によくみられるウイルスで、主に急性胃腸炎、手足口病、ヘルパンギーナなどを引き起こしますが、感染した方の一部がウイルス性髄膜炎を発症する可能性があります。
原因となるウイルスは、上記以外に以下のように多岐にわたります。
症状
ウイルス性髄膜炎を発症すると、髄膜での炎症反応を反映して頭痛や吐き気、嘔吐、易刺激性(ささいなことですぐに不機嫌になる性質)、光に対しての過敏性、意識障害などの症状が現れます。また、発熱や倦怠感、食欲低下、哺乳力の低下なども同時に起こることがあります。こうした症状はウイルス性髄膜炎だけにみられるというわけではなく、髄膜炎に広くみられる症状です。
ウイルス性髄膜炎はさまざまなウイルスが原因で発症するため、髄膜炎症状(頭痛や吐き気など)以外の症状に注目することが大切です。エンテロウイルスに関連したものであれば、下痢や腹痛、皮膚の発疹や口内炎などがみられます。ムンプスウイルスの場合は、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)の原因ウイルスであるため、耳下腺の腫れがみられます。インフルエンザウイルスが原因であれば、全身倦怠感や筋肉痛が全面に出たり、咳や痰などの気道系の症状が現れたりします。水痘帯状疱疹ウイルスが原因であれば、水疱瘡や帯状疱疹特有の皮疹がみられます。
ウイルス性髄膜炎は、一般的には1週間ほどの経過で治癒することの多い病気です。しかし、まれに非常に重い経過を辿ることがあります。単純ヘルペスウイルスに関連する中枢神経感染症では、髄膜炎や脳炎など命にかかわる可能性のある症状がみられることがあり、治癒した後も何かしらの後遺症を残すことがあります。
検査・診断
髄膜炎を調べる検査や原因となっているウイルスの種類を明らかにする(同定する)検査が行われます。
髄膜炎の診断では、髄液を採取して検査する髄液検査が重要です。この検査によって、糖分やタンパク質、細胞数などが測定されます。髄膜炎はウイルスのほか細菌などの病原体により引き起こされる場合があるため、こうした項目を検討することで、原因がウイルスなのか細菌なのかを調べます。髄液グラム染色、髄液糖/血糖比、髄液タンパク質量値が両者の鑑別に重要な情報をもたらします。
原因となっているウイルスの種類を明らかにする方法として以下が挙げられます。
- ウイルス分離
- ウイルス特有の遺伝子を検出するPCR法
- 原因となっているウイルスに対する抗体検査 など
また、上記の検査項目は最終確定のために必要ですが、ウイルスによっては検査キットを利用してより速く原因が推定できることがあります。髄膜炎の原因としてインフルエンザウイルスが考えられる場合にはインフルエンザ迅速検査が有効です。
治療
ウイルス性髄膜炎の治療方法は、主に対症療法(症状に対する治療)です。
頭痛や発熱があれば解熱鎮痛剤が検討されます。脱水が引き起こされているときには補液が行われます。
一方、インフルエンザウイルスや単純ヘルペスウイルスなどが原因である場合、抗インフルエンザ薬や抗ヘルペス薬など、各ウイルスに対する特異的治療薬が選択されることがあります。
また、ウイルス性髄膜炎では、ワクチン接種により感染を予防できるケースがあります(インフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルスなど)。
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