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突然の失神の原因とは? 危険な不整脈を探るための検査方法

突然の失神の原因とは? 危険な不整脈を探るための検査方法
北井 敬之 先生

医療法人札幌ハートセンター札幌心臓血管クリニック 循環器内科

北井 敬之 先生

目次
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失神とは、血圧の低下によって脳に流れる血液量が不足し、脳が酸素不足になることで起こる一時的な意識の消失です。原因は血圧の調節障害などが多いですが、中には不整脈などの命に関わる病気が心臓に隠れていることもあり、そのまま放置すると重大な病気の発見が遅れてしまう恐れがあります。危険な不整脈の可能性を探るためにも、一度失神を起こしたら医療機関を受診して検査を受けることが重要です。今回は不整脈を中心にした失神の原因と検査の重要性について、札幌心臓血管クリニック 循環器内科の北井 敬之(きたい たかゆき)先生にお話を伺いました。

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写真:PIXTA

血圧が低下して脳に十分な量の血液が届かなくなり、脳が酸素不足になると失神が起こります。失神の原因について、今回は心臓に原因がある場合(心原性失神)と、心臓以外に原因がある場合に分類して説明します。

不整脈による失神

徐脈(脈が遅くなる)や頻脈(脈が速くなる)などの不整脈により失神するケースです。失神以外では、動悸(胸がドキドキする)、脈が飛ぶ感覚、息切れ、めまい、胸部不快感などの症状を自覚する方もいます。

不整脈で失神が起こる場合、上室性頻拍や心房細動といった上室性不整脈、心室頻拍心室細動などの心室性不整脈が隠れている可能性があります。同じ不整脈でも比較的命に関わる危険性が低いものから死亡するリスクが高いものまで幅広いため、詳細に検査を行って不整脈のタイプを特定する必要があります。

心血管の病気による失神

心筋梗塞(しんきんこうそく)弁膜症心筋症大動脈解離肺塞栓症(はいそくせんしょう)肺高血圧症などの心疾患でも、血管の閉塞(へいそく)や、心臓から送られる血液量の低下などが生じた際に失神することがあります。

反射性失神(血管迷走神経性失神、状況失神、頸動脈洞症候群(けいどうみゃくどうしょうこうぐん)など)や起立性低血圧自律神経失調症など)によっても失神が生じます。突然立ち上がったり感情の変化が生じたりした際に起こることもあり、これらの多くは比較的危険性が低い失神と考えられています。

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不整脈による失神の原因のうち、特に注意したい病気に、心室頻拍心室細動*があります。

心室頻拍は心臓のポンプ機能の中心となる心室(下の部屋)から起こる頻脈性不整脈の一種で、心拍数が1分あたり100回を上回った状態です。心室が非常に早く収縮すると全身に血液を送り出すポンプのはたらきが弱くなり、頭に血液が行かなくなります。中には心室が無秩序に収縮する心室細動をきたし、最悪の場合は突然死に至る可能性もあります。しかし失神の原因は多岐にわたるため、倒れた時点では失神を引き起こした不整脈が心室頻拍や心室細動であるかどうかの判断はできません。比較的短時間の失神の場合、意識が回復した後も医療機関を受診せず放置する方もいるので重大な病気の発見が遅れてしまう恐れがあります。だからこそ、検査で確実に原因を突き止めることが大切なのです。

危険な不整脈の可能性を探るためにも、一度失神を起こした、あるいは起こしかけたら速やかに循環器内科に相談しましょう。

*心室細動:電気刺激がバラバラに出されたことにより心室が非常に速く震え(細動)、心臓が正常に収縮できなくなった状態。全身に血液が行き届かなくなり死亡する可能性がある。

先述のとおり、失神の原因は心配のいらないものからすぐに治療が必要なものまで存在するため、一度でも失神が起こったら検査を受け、原因が何であるかをしっかりと特定することが非常に大切です。危険な失神を見逃さず速やかに治療へと進めるよう、当院では不整脈を専門とする医師たちによる“失神外来”を設けています。外来では失神を経験した患者さんに対し、心電図をはじめとした多様な検査を行っています。

失神外来ではそのほかの外来以上に問診が重要となります。まず、失神が起こった時期、場所、状況、頻度などを伺い、どのような病気の可能性があるかを探ります。

次に、心電図、X線検査、心臓超音波検査、血液検査などの一般的検査を実施し、原因が心臓にあるか否か、心臓の病気であれば不整脈か心血管自体の病気か、あるいは心臓以外の原因からくる失神か、といった鑑別を進めます。発作性の不整脈を疑う場合は、ホルター心電図、植込み型心電図記録計を用いた検査などを追加で行い、不整脈が起こる頻度や持続時間を調べます。

不整脈の診断においてもっとも重要な検査は心電図です。ただし、不整脈が不定期に現れる方の場合、計測のタイミングによっては脈が正常な場合もあるため、外来で不整脈が起こっているのを確認することが難しくなります。このようなときは24時間ホルター心電図や入院下で行うモニター心電図、植込み型心電図記録計による心電図検査を行い、不整脈が起こっている時の波形を確認していきます。

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失神の原因の多くは命に支障がないものですが、中には心室頻拍のような危険な不整脈が隠れていることがあります。心室頻拍を起こすと、最悪の場合は一度の発作で死亡するケースもあるため、失神したことがある方、動悸や胸の不快感、息苦しさなどといった症状の自覚があり、まだ一度も医療機関を受診していない方は、放置や我慢をしないで循環器内科を受診していただくことを強く推奨します。検査の結果、病気が見つかった場合は、医師と相談しながら適切な治療法を選択していきましょう。

何らかの基礎疾患があって心機能が低下している方も、一度は24時間ホルター心電図などの検査を受け、不整脈の有無を確認することをおすすめします。さらに、心室頻拍の既往歴がある方、一度でも失神したことがある方は再発を防ぐために治療を受けることが重要です。

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