去る2018年5月16日(水)〜18日(金)、国立京都国際会館(京都市左京区)にて第26回日本乳癌学会学術総会が開催されました。本学会では、連日プレスリリースが実施され、注目演題の概要や乳がん領域におけるトピックが発表されました。座長は佐治重衡先生(福島県立医科大学 腫瘍内科学講座)が務められました。本記事では、神戸大学数理・データサイエンスセンターの木村建次郎先生の発表をお伝えいたします。
私たちは以前に鉄道トンネルのコンクリートを、三次元で検査するソフトウェアシステムを開発しました。これは、コンクリートの壁なかにある損傷をリアルタイムでみつけることができる技術です。
そして、乳がん組織の性状がコンクリートと非常に似ていることに着目して、この技術を応用したマイクロ波を使った乳がん画像診断の技術を開発しました。
乳がん画像診断にマイクロ波を用いることで、X線マンモグラフィでは検出が困難であった高濃度乳房(デンスブレスト)も非常にハイコントラストで画像化することができます。
また、この技術で用いるマイクロ波は、無線LANのおよそ1,000分の1と非常に微弱なため、体に優しいことも大きな特徴です。
現在、乳がんの画像診断には、おもにX線やMRI、CTが用いられています。これらに使われている波動は、非常に透過性が高く散乱が小さいため、この波動を骨や組織が吸収することで画像として立体的に構築することができます。
しかし、超音波や電磁波などは生体にあたると散乱する性質があるため、画像再構成には膨大な時間がかかり、実用化は困難な状況でした。そこで、私たちは2014年に逆散乱理論というものを開発し、マイクロ波を用いた三次元構築がこれまでの数万倍の速度でできるようになったのです。
現在、総務省とAMED(エイメド)の支援を受けて、マイクロ波を使って乳がんの画像診断ができる装置の開発を行っています。
開発に向けた臨床実験では、ファントム、動物(ブタ)と研究を進め、現在は約200名以上の方に臨床実験を行い、いずれも画像化に成功しています。今後、数年以内に実用化して世界中に販売できるよう、研究を進めていきたいと考えています。
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