国立国際医療センターでは、2022年にvNOTES を導入して以来、こちらの記事でお伝えしたとおり毎年20件以上のペースでこれまでに70件以上の手術を行っています(2025年8月時点)。また、婦人科疾患に悩む患者さんに低侵襲なvNOTESをより広く提供できる体制を整えるべく、若手医師の育成や看護師の教育にも力を注いでいます。
今回は、同センター院長補佐で産婦人科診療科長、第一婦人科医長の大石 元先生に、外来受診から退院までの流れ、vNOTESに関する今後の展望などについてお話を伺いました。
紹介状持参で外来を受診された方には、まず手術についてひととおりご説明します。vNOTESの実施が決まれば、問診のほかMRI検査、子宮頸がん検査、子宮体がん検査などの術前検査を行い、手術日程を調整します。その後再度受診いただき、麻酔科医師*との面談を経て入院となります。
初診から最短で2週間ほどで手術できますが、家庭や仕事などの事情もあるでしょう。当院ではお子さんの受験やご主人の在宅状況なども考慮し、患者さんの都合に合わせてスケジュールを組むようにしています。手術予定日まで時間が長く空く場合には、薬物療法などで症状を和らげることも可能です。
*麻酔科標榜医:山瀬 裕美先生
当院でvNOTESを受けられる場合、入院期間は基本的に1週間です。手術の前日に入院いただき、腸管内を空にするため下剤服用などの処置を行います。翌日は食事をとらずに手術室に入っていただき、全身麻酔下で手術を実施します。手術時間は1時間30分~2時間程度で、腹腔鏡下手術と変わりありません。
手術の翌日から食事をとることが可能です。痛みが出る方もいますが、早い時点で治まる患者さんもいらっしゃいます。基本的に、手術から5日目の朝に退院となります。
退院後は1週間ほど自宅で療養していただきますが、手術後すぐに仕事に復帰される方もいらっしゃいます。初めはデスクワークにとどめておいたほうがよいでしょう。また、術後しばらくは、出血することがあるため注意が必要です。入浴は傷が治っていることを確認できるまではシャワーにとどめていただきます。手術の数週間後からスポーツを再開される方もいるなど、全体にリカバリーが早いと感じています。
術後の経過を診るため、2~3週間後と数か月後に受診いただいています。腹部に傷が残らないため合併症が起こりにくいのもvNOTESの特徴です。
低侵襲のvNOTESをより広く提供しようと、当院では現在若手医師の技術鍛錬に力を入れています。特別な手術と捉えるのではなく、通常のオプションの1つとして患者さんにvNOTESを提案できるよう、早い段階で手術を見学し、手術に参加してほしいと考えています。産婦人科では若手医師の多くが日本産科婦人科内視鏡学会の腹腔鏡・子宮鏡・ロボット技術認定医の取得を目指していますが、vNOTESに対応できる医師も増やしていく方向です。特に、腟を経由して子宮前後の狭いすき間から鉗子やカメラを挿入するのは慣れていないと時間がかかり、細心の注意を要するため、技術を確実に身につけてもらいたいと思っています。
当院でvNOTESを行う際は、産婦人科医として分娩の経験を積んでいる医師が執刀しています。さたに、他院でvNOTESの技術を習得した私か冨尾 賢介先生が手術室に必ず入り、安全に手術を進められるよう指導しています。“vNOTESでできる手術はvNOTESで行う”という方針のもと、後進の育成に力を注ぎ、患者さんに当たり前に低侵襲の手術を提供できる体制を整えていきたいと考えております。
手術にかかわる看護師には映像資料などを活用してvNOTESの情報を共有、手術の仕組みや流れ、現場での動きを学んでもらっています。vNOTESでそろえておくべき器具やそれを使う場面などを頭に入れたうえで手術に入り、医師や婦人科手術を担当する先輩看護師の指導を受けながら、実際の動きを習得できるようにしています。知識・技術を高めることで、医師とのコミュニケーションが綿密になり、結果として患者さんへのケアの向上へとつなげています。
vNOTESは低侵襲のため患者さんにとっては比較的受けやすい手術方法だと考えています。より多くの方にvNOTESによる治療を提供できるよう、現時点で当院では難しいとされている症例にも適用できるよう少しずつ対象を拡大していく方向です。過去に複数回手術を受けている方や重度の子宮内膜症の方など、癒着の問題で難しいケースもありますが、可能な限り広くvNOTES手術を提供できるようにしていきたいです。
たとえば、年齢を重ねると腟回りの筋肉が衰えて子宮脱になる女性がいらっしゃいます。高齢化がさらに加速することを踏まえ、こうした年齢を重ねた女性に起こりやすい病気にもvNOTESを今後も積極的に実施していきたいと考えています。
婦人科疾患の治療においては開腹手術から腹腔鏡下手術、vNOTESと侵襲度の低い手術が登場してきてています。私たち医師は、患者さんの苦痛をさらに軽くすることを目指して今後も努力を続けていかなければなりません。

毎月の月経でストレスを抱えている女性には、まずは婦人科の受診をおすすめします。適切な治療を受ければ、不調やストレスを軽減できるでしょう。ライフスタイルに合わせて治療法を選択できるようになってきていますので、ぜひご自身に合った治療法を見つけてください。
婦人科疾患に伴う過多月経や月経痛に悩む方の最初の選択肢は薬物療法です。それで十分な効果が得られなければ手術を検討しますが、できれば手術を受けたくないという方もやはり多いと思います。そのような方にとって婦人科疾患の治療が苦しい思い出として残らないよう、低侵襲かつ安全性に配慮したvNOTESによる治療を提供したいと考えています。
vNOTESは最近登場した手法で、手術に抵抗があるという患者さんにも比較的受け入れていただきやすく、当院でも適応を拡大すべく体制を整えているところです。当院では「腹腔鏡下手術による子宮全摘術を」とご紹介いただいた患者さんにもほかの手術方法を含めご説明しており、多くの方がvNOTESを選択されています。
地域で患者さんを診ていらっしゃるクリニックの先生方にも、vNOTESについて広く知っていただきたいと思っています。ご不明な点や気になることがあればお気軽にお問い合わせください。
国立国際医療センター 産婦人科 診療科長
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