治療
月経困難症の治療選択肢はここ20年で格段に広がりました。日本では1999年にいわゆる低用量ピル(経口避妊薬)認可されてから、さまざまなホルモン製剤が開発、発売されてきました。
機能性月経困難症の場合は、痛み止めを使用することで80%は改善するとされています。痛み止めで効果がみられない場合は子宮内膜の増殖を抑制し、月経量を減少させる効果がある低用量ピルが使用されます。投与開始時にマイナートラブル(気分不快、乳房の張り、頭痛、不正出血など)が起こることもありますが、2~3か月で自然に治まることが多く継続使用が望まれます。
ただし、体に合わない場合は担当医に相談し、別の低用量ピルを処方してもらうとよいでしょう。エストロゲン含有量や黄体ホルモンの種類に応じてさまざまなタイプがあり、QOL(生活の質)に貢献する月経回数を減らす連続投与タイプのピルもあります。ジェネリックも出ているため、費用と希望に応じて相談するのがよいでしょう。
また、重要な副作用として血栓症のリスクがあるため、水分摂取をこまめに行うことを心がける必要があります。
低用量ピルは、閃輝暗点(視野にキラキラした光が現れ、その場所がだんだん暗くなっていくこと)を伴う片頭痛持ちの人は使用できず、血栓リスクが高まる40歳代以降の人など使用を躊躇する場合、黄体ホルモン製剤を使用する選択肢もあります。不正出血は多くなりますが、月経痛の改善効果は高いとされています。
そのほか、子宮の中に留置することで黄体ホルモンを放出して子宮内膜の増殖を抑える“子宮内黄体ホルモン放出システム”も重度な月経困難症に対して使用されることがあります。特に出産歴がある人は挿入が容易です。ただし、妊娠希望のある時期は使用できません。
一方、続発性月経困難症の場合は、原因となる病気の治療を行う必要があります。治療方法は原因となる病気の状態や月経痛などの重症度によって異なります。
症状が非常に重い場合、子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内膜症は子宮・卵巣を温存した手術療法が可能ですが、再発のリスクがあります。妊娠希望がない場合は子宮を摘出する手術が行われることもあります。
手術以外の治療法としては、低用量ピル、黄体ホルモン製剤、子宮内黄体ホルモン放出システムのほか、閉経期近くでは偽閉経療法が行われることもあります。ただし、骨量減少リスクがあるため半年程度しか行うことができません。視床下部ホルモンであるGnRHのアナログやアンタゴニスト製剤があり、注射製剤や経口製剤となります。月経が止まるので痛みもなくなりますが、更年期症状が出ることがあります。
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