概要
機能性尿失禁とは、排尿に関わる機能に医学的な異常がないにもかかわらず、運動機能や認知機能の低下によって“トイレへ行って排尿する”といった正常な排尿行動ができなくなる病気のことです。
近年、認知症や寝たきりになる人の増加に伴い、機能性尿失禁を患うケースが増えています。根本的な原因が排尿機能の異常ではないため治療が難しく、症状を改善するには生活環境や介護体制の見直しなどが必要となります。
原因
機能性尿失禁は、運動機能や認知機能の低下により、尿意の発生に合わせてトイレに行って排尿するという一連の排尿行動ができなくなることで尿失禁してしまう病気です。
具体的には、脳梗塞後遺症による麻痺によってトイレまで歩くことができない、衣類を脱ぐのに時間がかかってしまう、認知症のためトイレを認識できなくなる、などが原因として挙げられます。
このように、機能性尿失禁は“排尿行動”に支障をきたす身体的な症状によって引き起こされるものです。そのため、排尿機能自体に異常はありませんが、高齢者では排尿機能の異常と機能性尿失禁が合併して生じることも少なくないとされています。
症状
機能性尿失禁は腎臓や膀胱、尿道などで尿を生成して蓄え、一定量たまったら尿意が生じるという一連の流れに異常はないものの、運動機能や認知機能の異常によって正常な排尿行動ができなくなるのが特徴的な病気です。
麻痺や外傷、加齢による身体機能の衰えなどが原因になる場合には、尿意を感じてトイレに行ったり尿器を利用したりするまでに時間がかかりすぎること、トイレや尿器を正しく使用できないことなどによって尿失禁を生じます。一方、認知機能の低下が原因になる場合には、尿意を感じるものの“トイレや尿器で排尿する”という行為自体を認識できなくなるため、場所や状況によらず尿失禁を繰り返すようになるのが特徴です。
検査・診断
機能性尿失禁は排尿機能自体に異常はないとされていますが、尿失禁を引き起こすほかの病気との鑑別のために次のような検査が行われます。
尿検査
尿の中の成分を詳しく調べる検査です。尿失禁の根本的な原因となりうる頻尿(尿の回数が増えること)を引き起こす膀胱炎や膀胱がんなどの病気が背景にないか確認するため、尿中に細菌類や血液などが含まれていないか調べます。
残尿量測定
排尿後に超音波検査で膀胱内にどれくらいの尿が残っているか調べる検査です。尿失禁の原因となる膀胱の機能低下の有無を調べるために行われます。
画像検査
膀胱や尿管、腎臓などに何らかの病気がないか調べるため、超音波やCTなどによる画像検査が行われることがあります。
治療
機能性尿失禁は、身体機能や認知機能の低下に伴って生じる尿失禁であるため、症状を改善するには第一に原因となる身体・認知機能を改善させるための治療が必要です。
しかし、機能性尿失禁の多くは加齢や脳卒中・外傷などの後遺症による機能低下が原因で引き起こされるため、治療を行ったとしても十分に機能が改善することはまずないのが現状です。そのため、機能性尿失禁の症状を改善するには、トイレに行きやすい環境を整えることや介護体制を整えることなどが必要となります。
一方、高齢者では排尿機能自体の異常が原因となる尿失禁を合併しているケースも多いため、それらの尿失禁自体の治療を行うことで機能性尿失禁が改善することも少なくありません。
予防
機能性尿失禁は加齢や病気・外傷の後遺症などによる身体・認知機能の低下が原因となって引き起こされるため、発症を予防するには日頃から体をよく動かして心身の衰えを予防し、生活習慣の見直しなどを行って病気や外傷を未然に防ぐことが大切です。
特に動脈硬化によって引き起こされる脳梗塞や脳出血などの脳疾患は認知症の原因になるだけでなく、麻痺を引き起こし重度な場合には寝たきり状態となる可能性があります。動脈硬化は高血圧、肥満、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病に加え、喫煙習慣が発症に大きく関与しています。動脈硬化を予防するためにも食事や運動習慣の見直しと禁煙を心がけるようにしましょう。
また、女性では閉経後に骨粗しょう症を発症するケースが多いため、ささいな刺激で骨折し、寝たきり状態となって機能性尿失禁を発症してしまうことも少なくありません。骨粗しょう症を防ぐには、カルシウムやビタミンDを多く含む食事を取り、適度な運動習慣を身につけ、必要な場合は骨粗しょう症の治療を受けるようにしましょう。
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