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肋間神経痛の治療にはなにがあるの?〜薬の種類や、薬で改善されない場合の治療とは〜

肋間神経痛の治療にはなにがあるの?〜薬の種類や、薬で改善されない場合の治療とは〜
井関 雅子 先生

順天堂大学 医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座 教授 (大学院医学研究科疼痛制御学 教授併任)

井関 雅子 先生

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肋間神経痛(ろっかんしんけいつう)は厳密には病名ではなく、肋間神経(肋骨(ろっこつ)の下側に沿って走っている神経)が痛む症状のことを指します。原因によって痛み方は異なるとされていますが、主に体を動かす、咳をするなどのささいな動作で強い痛みを感じることが特徴です。肋間神経痛の治療は症状や原因によって異なり、適切な治療を行うことで改善が見込めるといわれています。そこで今回は肋間神経痛の原因や、受診した場合の治療方法について詳しく解説していきます。

肋間神経痛の治療は原因によって異なり、大きく分けて原因がはっきりしない特発性肋間神経痛(原発性肋間神経痛)と、何らかの病気が原因の続発性肋間神経痛(二次性肋間神経痛)の2つに分類することができます。考えられる原因は多岐にわたりますが、主に帯状疱疹(たいじょうほうしん)、胸椎圧迫骨折が挙げられるほか、肺がん手術(開胸手術)などによって生じるといわれます。

したがって、特発性肋間神経痛の場合は対症療法を、続発性肋間神経痛の場合は原因となっている病気などを治療することが基本です。以下では主に“特発性肋間神経痛”で行われる治療(対症療法)について詳しく解説します。

肋間神経痛における薬物療法では、症状や体質に合わせて複数の薬剤を併用することがありますが、主に神経障害性疼痛治療薬(しんけいしょうがいせいとうつうちりょうやく)(プレガバリンなど)が用いられます。いずれも医師の指導の下、正しく用いるようにしましょう。

カルシウムチャネルα2δ作用薬(プレガバリンやミロガバリン)には神経の興奮を抑えるはたらきがあるため、肋間神経痛の痛みの原因となる物質の過剰放出を防ぎ、結果的に痛みを緩和させる作用があるとされています。

ただし、主な副作用には眠気やふらつき、めまいがあるといわれ、特に投与を開始したときや薬の量を増やしたときに起こるとされています。さらに、手足などの末端部のむくみ、体重の増加、物が二重に見えることもあり、このような症状が出た場合はすぐに医師に相談をしましょう。なお、薬の成分は腎臓から尿中に排泄されるため、腎機能が低下している患者や透析患者に対しては減量して投与する必要があります。いずれも医師が判断します。

ほかの薬による治療で症状が改善されない場合は、抗うつ薬が処方されることもあります。抗うつ薬の種類はさまざまですが、肋間神経痛に対してはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)が使われることが一般的です。SNRIにはデュロキセチンとミルナシプランの2種類があり、どちらも鎮痛効果による症状緩和が期待できるとされています。

副作用には吐き気や眠気、排尿障害などがありますが、ほかの抗うつ薬(特に三環系抗うつ薬)と比べると副作用が少なく、高齢者にも使いやすいといわれています。ただし、保険適用がないため注意が必要です。

薬物療法で症状が改善されない場合は、神経ブロックを行うこともあります。神経ブロックとは、神経内や周囲に麻酔薬を注入したり、高周波の熱などで神経を麻痺させたりすることによって神経の機能を停止させ、痛みを軽減させる治療法で、繰り返し行うことで痛みを徐々に緩和させることができるといわれています。

肋間神経痛の場合には、まずは肋間神経ブロックが検討され、肋骨神経ブロックで効果が不十分な場合には神経根ブロックという方法が検討されます。肋間神経ブロックとは肋間神経が走っている空間に神経ブロックの治療を行うことをいいます。また、神経根ブロックとは脊髄神経(せきずいしんけい)の根元の部分に対して神経ブロックを行うことです。

治療方法には、局所麻酔薬や神経破壊薬、オピオイド鎮痛薬などの注入のほか、神経を低温で刺激し熱凝固させずに鎮痛効果を得るパルス高周波法や、高周波エネルギーで熱凝固させる高周波熱凝固などが挙げられます。これによって胸腹部や背部の痛みが緩和されるとされています。ただし、治療の頻度などについては注意が必要なので、医師の指示に従って治療を受けましょう。

本記事では主に原因がはっきりしない肋間神経痛(特発性肋間神経痛)における対症療法について解説しましたが、原因がはっきりしている肋間神経痛(続発性肋間神経痛)の場合は、原因に応じて適切な治療を行えば改善できる場合があります。そのため、肋間神経痛の症状が現れた場合は、まずどのタイプの肋間神経痛なのか、またどのような原因によって生じているのかを突き止めることが大切です。いずれも治療について不安や疑問があれば、医師に相談し、納得した治療を受けるようにしましょう。

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