膠原病(こうげんびょう)は、皮膚・筋肉・関節・血管・骨などを構成する全身のコラーゲン(たんぱく質)に炎症が起こる疾患群の総称です。膠原病には、関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)などの病気があり、女性の患者さんが多いという特徴があります。
今回は、昭和大学病院 リウマチ・膠原病内科の磯島 咲子先生に、妊娠を考える膠原病の患者さんはどんなことに気をつけたらよいのかお伺いしました。
膠原病(こうげんびょう)は、共通する特徴を持つ疾患群の総称です。膠原病は、皮膚・筋肉・関節・血管・骨などを構成する全身のコラーゲン(たんぱく質)に炎症が起こる病気の総称で、さまざまな病気が含まれます。
本来であればウイルスや細菌から自分の体を守るために働く免疫機能が、膠原病では自分自身の正常な細胞や組織に対し過剰にはたらき、攻撃することで臓器に炎症が起きてしまいます。
膠原病には、さまざまな病気が含まれています。たとえば、関節リウマチは、膠原病の一つです。関節リウマチを発症すると、関節に腫れや痛み、変形などの症状が現れます。
ほかにも、全身性エリテマトーデス(SLE)と呼ばれる病気があります。全身性エリテマトーデスを発症すると、発熱や体のだるさなどの全身症状とともに、関節や皮膚、腎臓、神経などに症状が現れ、複数の臓器に障害が現れることもあります。
膠原病の病気を発症した患者さんが妊娠可能かどうかは、患者さんの状態によって異なります。症状が安定しており、すぐに妊娠しても問題がない方もいます。
一方で、発症している病気や、症状が現れている臓器によっては、妊娠が難しいと判断せざるをえない方もいます。しかしこのような場合であっても、病気の活動性をきちんと落ち着かせることができれば妊娠が可能と判断されるケースもあります。
お話ししたように、患者さんの状態によって妊娠可能かどうかは大きく異なります。このため、膠原病の患者さんが妊娠を希望する場合、必ず主治医に妊娠を希望していることを伝えてほしいと思います。
それによって、すぐに妊娠しても問題がないか、治療によって症状が落ち着いてから妊娠した方がよいのか、この先も継続して妊娠することは難しいのかなど、ご自身の状態を知ることできます。
ご自身がどんな状態であるかを知り、妊娠に向かってきちんと準備することが大切です。主治医に相談することなく妊娠を諦めることは非常に残念なことだと思うので、必ず伝えていただきたいと思います。
膠原病の病気である患者さんは、主治医の先生と相談しながら、計画的に妊娠することが大切であると思います。それは、妊娠を考えた時点で使用を中止しなければならない薬もあるからです。
たとえば、関節リウマチの治療に使用される薬のなかには、妊娠を考えた時点で数か月は使用を控えなければならないものもあります。そのような薬を飲んでいる方は主治医と相談の上、きちんと妊娠前に休薬期間をとり、場合によっては妊娠中にも使用できる薬へ変更をする必要があります。
また、妊娠を希望している患者さんは、病気の治療をしながら、早期に一度婦人科を受診してほしいと思います。
それは、妊娠に備えて婦人科領域の検査や治療の必要がないか、早めに確認していただきたいからです。症状が落ち着いてから婦人科の検査を受けていては、時間のロスにつながってしまうこともあります。
このため、病気の治療とともに、妊娠を希望したら早期に婦人科を受診することをおすすめします。また基礎体温をつけることもおすすめしています。
妊娠・出産にあたり、母体が安定していることは非常に重要です。このため、妊娠中であっても薬を使用ながら治療を行うケースもあります。このようなケースでは、胎児への影響がないよう、安全性が確認されている薬から優先的に使用していきます。
膠原病のなかでも全身性エリテマトーデスの患者さんには、流産や妊娠高血圧症候群(妊娠20週以降産後12週までに高血圧の状態になること)など、妊娠に伴う合併症(ある病気や、手術や検査が原因となって起こる別の症状)の危険性があるといわれています。
このため、全身性エリテマトーデスの患者さんには、妊娠初期から血圧をきっちりと測ってもらい、妊娠高血圧症候群が現れていないか定期的に確認するようにしています。
また、治療に使用する薬のなかには、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病(妊娠中に現れる糖代謝異常)になりやすくなる薬があるため、薬のコントロールも大切です。
以上のことから、特に全身性エリテマトーデスの患者さんは、妊娠中も定期的に内科を受診していただくことが大切になるでしょう。
膠原病の病気でありながら妊娠・出産をする場合、病気をみる診療科(膠原病内科など)と産科が同じ施設にある方が、内科、産科との連携が深まりより適切な医療につながると考えます。
2つの診療科の医師が意見を交換し合いながら出産に備えるケースが多く、患者さんにとって安心につながるのではないでしょうか。また小児科の先生との連携は産まれてくる赤ちゃんへのよりよい医療にもつながります。
膠原病内科と産科の検診が同じ日であれば、通院は1日で終わり、同一施設内であれば患者さんの負担も少なくなります。
基本的に、膠原病の病気そのものが遺伝することはありません。しかし、素因(病気にかかりやすい素質のこと)が引き継がれる可能性はあるといわれています。たとえば、全身性エリテマトーデスでは、ご家族に発症した方がいる場合、発症率がより高くなることが報告されています[注1]。
しかし、素因があることと、実際に病気を発症するかどうかは別問題です。患者さんには、典型的な遺伝病ではないことをお伝えするようにしています。
注1:Christian CL. Arthritis Rheum.1978 Jun;21(5 Suppl):S130-3.
出産を終えた患者さんには、産後1か月のタイミングで、病気の状態を確認するため検診を受けていただきます。基本的に症状が安定していれば出産から1か月後に検診を行いますが、病状によっては産後2週間など、より短いタイミングで受けてもらうこともあります。
出産を終え育児に取り組む際には、サポートしてくれる存在が大切になります。
関節リウマチの患者さんでは、育児による関節の負担のため関節炎が悪化してしまうケースがあります。全身性エリテマトーデスの患者さんでは、疲れやストレスによって病気が悪化してしまうこともあります。
そのような場合は無理をせず、家族など周囲の人を頼り、必要なときには休息をとることができる環境が大切になるでしょう。
私は、患者さんとご家族が妊娠を望んだ場合に、病気の治療を含め妊娠・出産のサポートをさせていただいています。繰り返しになりますが、膠原病の病気である患者さんが妊娠を希望する場合には、必ず主治医に妊娠を希望していることを伝えてほしいと思います。
もちろん、病気の状態によっては妊娠を諦めなければならないケースもあると考えられます。しかし、ご自身のみで判断を行ってしまうと、のちのち後悔につながってしまうこともあるかもしれません。
まずは主治医に相談していただき、妊娠が可能である場合には、治療を続けながら計画的に妊娠・出産をしていただくことが大切であると思います。
昭和大学病院 リウマチ・膠原病内科
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