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胃酸が逆流する原因は? 逆流性食道炎をはじめとする酸関連疾患とは

胃酸が逆流する原因は? 逆流性食道炎をはじめとする酸関連疾患とは
池田 隆明 先生

横須賀市立うわまち病院 副病院長 消化器病センター長 消化器内科部長

池田 隆明 先生

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この記事の最終更新は2017年07月19日です。

酸関連疾患とは、胃酸の過剰分泌や、逆流によって起こる疾患全般のことを指します。最近増加している酸関連疾患としては、逆流性食道炎、鎮痛剤(NSAIDs)による潰瘍(かいよう)などが挙げられます。特に逆流性食道炎は一般的に命に関わる病気ではありませんが、患者さんの生活の質を下げてしまいます。

日本国内の患者数が増加傾向にある酸関連疾患の症状や原因について、横須賀市立うわまち病院 副病院長/消化器病センター長 消化器内科部長の池田 隆明先生にお話を伺いました。

酸関連疾患とは、胃酸の過剰分泌・逆流のために生じる病気の総称です。酸関連疾患では、食べたものを消化するために必要な胃酸が過剰に分泌されたり、また逆流を起こして胃や食道の粘膜を荒らしたりするなど、組織を障害するようなはたらきをします。

最近増加している代表的な酸関連疾患には、逆流性食道炎やNSAIDsによる潰瘍があります。逆流性食道炎のようにはっきりとした炎症が認められなくても、胃酸の逆流によって胸やけなどの症状がある非びらん性胃食道逆流症も酸関連疾患に含まれます。

そのほかには、以下のような疾患が挙げられます。

胸やけを起こしている人

近年、逆流性食道炎やNSAIDsによる潰瘍などの酸関連疾患の患者さんは増加傾向にあります。

その背景には、生活習慣の変化や高齢化などさまざまな原因が考えられます。

酸関連疾患の患者さんが増えていることに、ヘリコバクター・ピロリ感染者の減少が関係していると考えられています。

ヘリコバクター・ピロリは、幼児期までに感染すると、胃の中に常在します。すると、高齢になるにつれて胃の粘膜が萎縮し、胃酸の分泌が抑えられます。

しかし、近年はヘリコバクター・ピロリに感染している方が減少しているといわれています。その理由は、従来、ヘリコバクター・ピロリの感染ルートは主に井戸水を介していたものの、近年は衛生環境が整い井戸水を使用しなくなったことや、親から子へ食べ物を口移しする機会がほとんどなくなったためだと考えられています。また、ヘリコバクター・ピロリに感染すると胃潰瘍十二指腸潰瘍胃がんなどのリスクが高まるため、ヘリコバクター・ピロリを取り除くための除菌治療を受けられる方も多くいらっしゃいます。このことも、感染者数の減少に関連していると考えられます。

日本人は魚からたんぱく質を摂取していましたが、近年は欧米型の食生活になり、魚よりも肉を多く食べるようになりました。肉は魚に比べると、消化に胃液を多く要するため、肉中心の食生活は胃酸の分泌が盛んな状態が続く原因となります。

また、塩分を過剰摂取していると、胃の粘膜が萎縮して胃酸の分泌が減少します。しかし、近年は日本人の塩分摂取量が減少しているため、それに伴って胃酸の分泌も増えています。

酸関連疾患には胃酸の分泌が増えることだけではなく、胃酸の逆流が起こる要素が大きく関わっています。たとえば以下のようなことが原因で、胃酸の逆流が起こりやすくなります。

亀背

亀背(きはい)とは、脊椎の変形や骨の摩擦などによって背骨が曲がった状態のことで、主に加齢が原因で起こります。亀背によって前かがみの姿勢になり腹圧が高まることも、胃酸の逆流の原因となります。

背中が曲がっている高齢者

食道裂孔ヘルニア

胸部と腹部を隔てる横隔膜にある穴を食道裂孔(れっこう)といいます。

食道裂孔ヘルニアは、先天性または加齢によって食道裂孔が緩み、胃や食道の境目が脱出している状態で、胃酸が食道へと逆流しやすくなります。

カルシウム拮抗薬の服用

高齢の方が服用していることが多いカルシウム拮抗薬は、狭心症高血圧の治療に用いられます。

カルシウム拮抗薬の服用によって、食道の括約筋が緩むので胃酸が逆流しやすくなります。

脂肪の摂取量が多い

脂肪の摂取によって、食道下部の括約筋を緩めるコレシストキニンという物質が分泌されます。

NSAIDsによる潰瘍は、NSAIDsを服用することによって胃の粘膜を保護する物質が阻害され、さらに胃酸の分泌の増加や粘膜障害が起きるために発生します。

近年、日本では高齢化によって整形外科・循環器内科系疾患を抱えた方が増えており、痛みを抑えようとNSAIDsを服用している方が多くなっています。

また、血管の詰まりを防ぐために処方される低用量アスピリンにも、NSAIDsと同様に胃粘膜を荒らす作用があります。これらは、胃の粘膜保護薬と一緒に処方されることが多いのですが、胃の粘膜保護薬だけでは潰瘍の発生を防ぐことは困難です。

薬

逆流性食道炎では、胃酸が食道まで逆流することで胸やけが認められます。さらに胃酸が口まで逆流すると、口の中が酸っぱく感じられる呑酸(どんさん)の症状が現れます。

そのほかには以下のような症状があります。

NSAIDsによる潰瘍は初期症状が乏しいため、早期診断は困難です。

NSAIDsを服用していることもあり、痛みなどの自覚症状を感じないまま進行してしまうケースが多く、吐血して初めて来院される患者さんもいらっしゃいます。

潰瘍は内視鏡所見だけでは原因を特定することはできませんが、自覚症状がないまま出血性の潰瘍を発症している場合は、NSAIDsによる潰瘍の可能性が疑われます。

また、1週間くらいの服用でも潰瘍ができる患者さんもいらっしゃいますので、服用期間の長さにかかわらず潰瘍発生のリスクがあることを認識する必要があります。
 

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  • 横須賀市立うわまち病院 副病院長 消化器病センター長 消化器内科部長

    池田 隆明 先生

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