埼玉県春日部市にある春日部市立医療センターは、春日部市で唯一の公立病院です。がん・脳卒中・急性心筋梗塞・糖尿病の4疾病と、小児医療・周産期医療・救急医療・災害時医療の4事業を重点に掲げ、拠点病院として地域医療を支えています。
そんな同院の役割や今後について、病院事業管理者の三宅 洋先生に伺いました。
当院は1958年に開設された春日部市立病院に由来します。当時の病床数は79床、診療科目は内科、外科、産婦人科、耳鼻咽喉科(じびいんこうか)、眼科でした。現在の場所に移転し、春日部市立医療センターに生まれ変わったのは2016年のことです。
当院がある春日部市を中心としたエリアは、さいたま市など東京都と近接しているエリアに比べて高齢化率が高く、患者さんの年齢層も高めです。患者さんは春日部市を中心に越谷市の方が多いものの、電車を使うとアクセスがよいことから、杉戸市や川口市などからも受診されています。
当院は公立病院ですので、地域で不足している専門的で重要度の高い領域について、充実した医療を提供することを常に心がけています。特に力を入れているのが、がん・脳卒中・急性心筋梗塞・糖尿病の4疾病です。また、必要性が高いものの医療体制が整っていない小児医療と周産期医療、災害時医療、そして、地域の皆さんに欠かせない救急医療の4つを重点に掲げ、充実した医療体制を整えています。特に救急医療については、地域の二次救急(入院や手術を要する重症患者への救急医療)を担っていますので、その責任は重大です。
今後の課題は地域の病院との連携強化です。春日部市内には、当院と同規模の病院が2つあり、いずれも救急医療を提供しているのですが、夜間救急で待機している医師が外科医に偏ってしまうケースがあるなど、連携が十分とは言えない部分もあります。消防本部の協力を得ながら、それぞれの病院で待機する医師を外科医・内科医・脳神経外科医などに振り分けることがありますが、今後はさらに踏み込んだ連携を図っていきたいと考えています。
当院はかねてから重点医療の1つとして周産期医療(妊娠22週から生後満7日未満までの周産期の期間、母体、胎児管理や新生児管理を主に対象とする医療)に注力してきました。特に、新生児センターにおいて充実した医療を提供してきた実績が認められ、2023年7月に県内10か所目となる“地域周産期母子医療センター”に指定されています。地域周産期母子医療センターは、周産期におけるハイリスク出産などに対して、高度な医療が提供できる医療施設です。新生児集中治療室(NICU)と新生児継続保育室(GCU)をそれぞれ6床備え、分娩リスクが高い妊婦さんやお腹の赤ちゃん、早産による小さな赤ちゃんなどが安心して過ごせる環境を整えています。周辺には周産期医療を提供している医療施設が少なく、ハイリスクな妊婦さんや赤ちゃんを受け入れる病院は現在当院のみとなっています。この地域の周産期医療“最期の砦”として、これからも責任を果たせるよう努めてまいります。
当院はがん診療において、地域の中心的な役割を担う“地域がん診療連携拠点病院”に指定されています。高度ながん治療を提供するため、集中治療室(ICU)の整備や放射線治療装置(リニアック)の更新、化学療法室の拡充、緩和ケア病床の新設などを行い、医療施設・診療体制を整備しました。
最近では多くの病院で導入が進んでいる内視鏡を用いたロボット手術支援装置・ダビンチや、腫瘍(しゅよう)に対して放射線を集中的に照射することができるIMRT(強度変調放射線治療)は早くから導入しています。また、IMRT放射線の治療医を2人に増やし、施設認定を取得することができましたので、前立腺センターを立ち上げることができました。
今後は患者さんの高齢化が進むことから、患者さんの体に負担をかけない低侵襲(ていしんしゅう)ながん手術・治療が欠かせません。低侵襲ながん治療が可能なダビンチについては、前立腺がんの手術からはじめ、現在は直腸がんの手術も開始しています。今後は大腸がんにも範囲を広げ、将来的には産婦人科でも用いる計画です。
当院では、近年肺がんの手術件数が増えており実績を重ねています。診療の際には、たとえば検査で肺に影が見つかると、まず呼吸器内科医が気管支鏡検査で診断し、診断がつかない場合は呼吸器外科医が胸腔鏡手術で診断するなど、呼吸器内科と呼吸器外科が連携して診療にあたっています。内科的視点と外科的視点を組み合わせることで、より的確な診断と治療を目指しています。
また、乳がんについても多くの診療を行っています。乳腺外科は、私が当院に赴任した際に、専門性の高い医療を提供しようと考えて立ち上げました。当時の手術件数は年間30~35件ほどでしたが、現在は年間150件程度まで増えています。また、私が春日部市の乳がん検診委員会の委員長を務めていることもあり、乳がんの検診にも力を入れています。そのため、検診で精密検査が必要と判断された方も多く受診されています。
春日部市には、当院も参加している多職種連絡協議会があります。参加者は地域の病院や診療所の医師、歯科医師や介護士、看護師やケアマネージャーなどさまざまな職種の方々で、そこに行政が加わり、在宅医療と介護が一体的に提供できる体制づくりを進めています。もとは地域のソーシャルワーカーの方が始めた集まりでしたが、規模が次第に大きくなり、会合もそろそろ100回に達します。テーマの1つが“在宅での看取り”です。患者さんの高齢化が進むと、在宅での看取りを希望される方が増えると予想されますので、さまざまな形で地域の医療関係者が協力することはとても重要だと考えています。
当院は春日部市で唯一の公立病院です。市民の皆さんの健康増進と健康を守ることが最大の使命であり、そのために医療設備や診療体制の強化を図ってきました。日常生活のなかで健康に不安を感じたり、病気になったりした場合は気軽に受診してください……、と言いたいところですが、当院は2023年に紹介受診重点医療機関になりました。受診するには原則紹介状が必要になりますので、まずは早めにかかりつけ医の先生に受診いただければと思います。その先には当院がおりますので、安心してお過ごしください。
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