院長インタビュー

医療資源が限られた地域で幅広い診療に対応する公立宍粟総合病院

医療資源が限られた地域で幅広い診療に対応する公立宍粟総合病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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1975年4月に組合立宍粟郡民病院として開設された公立宍粟総合病院は、市内唯一の病院であるだけでなく、市内唯一の二次救急対応・分娩対応ができる医療施設でもあります。

宍粟市のある播磨北西部エリアは地域的に医療機関数も医師数も不足している状況ですが、同院はそんな状況の中でもできるだけ幅広い医療サポートを提供できるよう、スタッフが一丸となって努力を続けています。

創意工夫と努力で地域医療を支え続ける同院の院長である佐竹 信祐(さたけ しんすけ)先生に、お話を伺いました。

先方提供

1975年4月に組合立宍粟郡民病院として開設された当院は、市内唯一の病院です。宍粟市は面積が兵庫県内で2番目に広いものの人口は約3万4千人(2024年3月時点)と少なく、医療機関数や医師数などの医療資源も全国平均と比べると乏しい、というのが現状です。当院のみならず、当院が属する播磨姫路医療圏域の医療機関の多くも医師不足に悩まされており、充実した医療提供が困難な地域になっていると言わざるを得ません。

そんな状況だからこそ、許可病床数199床(稼働病床数178床)という市内最大の病床数を有する当院が、地域を守るための医療提供をしていく必要があると考えております。

当院は宍粟市で唯一の、二次救急(地域の救急患者の初期診療および重症患者への入院治療や手術などを行う)に対応可能な医療機関であり、24時間365日体制で救急患者を受け入れております。

“いざという時に、どんな日でもどんな時間でもすぐに診療ができる、頼れる医療機関”という存在がこの地域でどれだけ必要とされているかは、私たちも日々の救急対応で痛感しております。どんなことがあっても救急体制をしっかりと維持し、今後のさらなる対応力の向上も考えていく必要があるでしょう。

このように二次救急対応ができることは、この地域における当院の大きな強みの1つです。しかし当院の強みはそれだけではありません。小児科や産婦人科においても、この地域において当院は非常に重要な役割を担っているという自負があります。

当院の小児科は宍粟市およびその周辺エリアを合わせ、推定約6,500人の小児をカバーしております。

小児科では感染症をはじめアレルギー、内分泌、代謝、循環器、神経、精神疾患など、幅広い病気を対象としており、休日の小児急患にも対応しております。さらに、帝王切開児や新生児黄疸(しんせいじおうだん)、軽~中等仮死、先天性心疾患、先天異常、未熟児などの新生児診療にも対応可能です。

また、当院の小児科は神戸大学専門医プログラムの関連施設であり、神戸大学医学部からの専攻医の受け入れも実施しております。

当院は、宍粟市内で唯一産婦人科を有する医療機関です。充実した体制の周産期センターを有する大阪医科薬科大学病院との連携を密に取り、安全かつ安心な医療提供に努めております。

婦人科では患者さん一人ひとりの病気の種類や進行度だけでなく、年齢や体力などもしっかり考慮したうえで、科学的根拠に基づいた治療を行います。

産科では立会い分娩や母児同室制などに対応し、できるだけリラックス・安心感の得られる環境づくりに努めております。播磨北西部エリアにおいて、分娩対応が可能な医療機関は当院のみであり、年間約200件の分娩に対応しております。当院がこの地域の周産期医療を今後も死守することは、きわめて重要なことであると考えています。

当院は宍粟市内で唯一、急性期から回復期までの一貫した医療(ケアミックス)を行える医療機関でもあります。

有床の医療機関の多くは、急性期病床の割合が高い状態になりがちであり、当院もかつてはそういう状況でした。しかし、その状態のままでは回復期病床がどうしても地域全体で不足してしまいます。ましてや、そもそもの医療機関数が少ない宍粟市においては、回復期に転院してもらおうにも転院先を探すこと自体が難しくなりがちです。そうした課題をクリアするためには当院でのケアミックス実現が必要不可欠だと考え、病床機能の見直しや再編を行いました。

2014年10月から地域包括ケア病棟を導入し、さらに2019年10月にはもう一棟地域包括ケア病棟を増設、今では2棟計84床の包括ケア病床を有するまでになっています。急性期だけでなく回復期も引き続き当院で医療サービスを受けていただけるようになったことで、患者さんの不安や負担感も以前より軽減されたのではないかと考えております。

当院は多くの診療科を有する総合病院ではありますが、へき地ゆえの医師不足問題もいまだ完全解消には至っておらず、全ての科に常勤で専門医を配置することは現実的にほぼ不可能です。常勤専門医のいない科の診療については、非常勤専門医による専門外来の設置や、当院常勤医師との連携などで対応しています。

そんな状況のなか、当院では新型コロナウイルス感染症の流行でリモート会議やリモート講義の必要性が高まったのを機に開通したVPN回線を利用し、神戸大学や兵庫県立はりま姫路総合医療センターとウェブカンファレンスを定期的に実施しています。今後はこうしたリモート機能をさらに活用し、ジェネラリスト(総合医)が専門医にリモートで指示を得るなどの形で力を借り、よりよい対応ができるシステムを構築していきたいと考えております。

“今、専門医が居ないので診療できない”という形で断るような状況では、患者さんがたらい回しになってしまいかねません。高齢化が進み複数の病気・不調を抱える患者さんも増えている状況だからこそ、当院でできるだけ全ての範囲に対応できるような体制を敷くために今後も力を尽くし、地域の皆さんの期待に応えられるよう努める所存です。

そして、当院は数年後に宍粟市山崎町中比地に移転する予定です。(※2024年6月現在では、2028年3月に新病院開院予定)

新病院では設備が一新されデジタル環境も整えられる予定ですので、よりよい医療提供ができるようになると、私も大いに期待しております。宍粟市民の皆さんも、ぜひ新病院にご期待ください。

*病床数、診療科、提供している医療の内容等についての情報は全て、2024年6月時点のものです。

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