けいれん:医師が気にする危ない症状|症状辞典

けいれん

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • 5分以上けいれんが続いている
  • けいれんは止まったが、意識がはっきりしない
  • 妊娠している

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 意識ははっきりしているが体の一部分だけのけいれんがあり、繰り返している
  • てんかん発作などけいれんの原因が分かっており、数分以内に治まった

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 短時間でよくなり、その後繰り返さない

植田救急クリニック

加藤 之紀 先生【監修】

けいれんとは、手足をガクガクと大きく震わせたような状態になる発作のことです。手足を突っ張ったようになるものもあれば、手足を強く曲げてしまうものもあります。

  • 発熱とともにけいれんが起きた
  • けいれんが数分以上続く
  • 妊娠中にけいれんが起きた

このような症状が起こったとき、考えられる原因や受診の目安とはどのようなものでしょうか。

けいれんを引き起こす主な病気には以下のようなものが考えられます。

てんかん

てんかんは、脳の神経が異常に興奮することによって起こる、発作を繰り返す脳の病気のことです。発作が起こるとけいれんを伴うこともありますが、中には突然意識を失ってしまう場合もあります。

てんかん
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脳炎・髄膜炎

脳炎/髄膜炎(ずいまくえん)は、ウイルスや細菌などによる感染症などが原因で、脳や髄膜(脳や脊髄を覆う膜)に炎症が起こった状態です。症状としてはけいれん、高熱、頭痛、嘔吐などのほかに、意識がもうろうとしたり、異常な行動やつじつまの合わない言動をしたりすることがあります。急を要する病気ですので、あてはまる症状がある場合にはすぐに受診しましょう。

髄膜炎
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その他の病気

てんかんや脳炎・髄膜炎以外にも、脳出血脳梗塞(のうこうそく)脳腫瘍などの脳の病気や、頭のけががけいれんの原因になることがあります。これらの病気では、頭痛や吐き気、ろれつが回らない、手足に力が入らない、けいれん、意識がもうろうとするなどの症状が突然出現することがあります。

脳出血
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脳梗塞
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脳腫瘍
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破傷風

破傷風は、土の中に含まれる破傷風菌が傷口から体内に入ることによって起こる感染症です。感染後、口や首、顔面の筋肉がこわばり、口が開けられなくなります。その後に全身のけいれんが出現します。早期の治療が必要ですので、もし土の上や汚い場所でけがをした後このような症状が現れた場合には、すぐ受診するなど注意が必要です。

破傷風
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アルコールの離脱症状

アルコールを長期間多量に飲んでいた方が、数時間から数日間断酒した際に離脱症状が出現することがあり、その症状としてけいれんがみられます。手が震える程度のものから全身のけいれんまであります。

子癇

子癇(しかん)は、妊娠中に起こるけいれんです。妊娠20週頃〜出産後の人に起こり、高血圧やたんぱく尿を合併している方に出現しやすいとされています。子癇は母親にも、お腹の中にいる赤ちゃんにも影響します。妊娠中にけいれんがあった際には救急受診する必要があります。

子癇
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けいれんが初めて起きたような場合には一度は受診が必要です。また、全身で起こった場合、数分以上続く・何度も繰り返す、発熱や意識がおかしいなどその他の症状がある場合は、すぐに救急受診しましょう。病院を受診する際には、神経内科や脳神経外科が適しています。妊娠中の方の場合には、かかりつけの産婦人科や救急外来への受診がよいでしょう。

また、過去にてんかんと診断されている人がけいれんを起こした場合には、主治医の先生に指示されているとおりに従ってください。

受診時には最近の体調や、治療中もしくは過去にかかったことのある病気、過去に頭のけがをしたことがないか、いつも飲んでいる薬やサプリメントなどについて伝えましょう。過去にけいれんを起こしたことがある方では、それまでのけいれんの頻度や、けいれんしたときの様子を伝えます。

身近な人がけいれんを起こした際には、まずは周りの人が落ち着くことが大切です。周囲の危険なもの(火、熱湯、倒れそうなもの、鋭利なものなど)を遠ざけたり、危険な所(高所、階段、車道や線路の端、お風呂、機械の近くなど)から離れたりして、まずは安全を確保しましょう。安全が確保できたら、仰向けに寝かせ、衣服の襟元やボタン、ベルトなどを緩めて体を楽にしてあげてください。また、けいれんが続いた時間、体のどの部分からけいれんが始まったのかなど、発作の様子を観察できるとよいでしょう。

舌を噛まないように指やタオル、スプーンなどのものを口に入れることはしないようにして下さい。指をかまれたり、口に入れたものでけがをしたり窒息をしたりすることがあります。舌をかみそうなときや、いびきがひどく窒息しそうな場合は、下顎を下から優しく押し上げてください。

吐きそうになった場合は、体、もしくは頭を横にむけて、吐いたもので窒息しないようにしましょう。

これらと並行して、救急車の手配をするなどの対応が必要になる場合もあります。周囲の人が声をかけあい、役割分担して対応できればベストでしょう。

日常生活上の原因によってけいれんを引き起こすことがあります。

体温の調整機能が未熟な6か月〜5歳くらいの子どもが38℃以上の高熱を出した際に、意識障害やけいれんを生じる“熱性けいれん”を引き起こすことがあります。通常、成長とともに熱性けいれんは起こらなくなるとされています。

熱性けいれんを予防するためには

熱性けいれんを起こした場合の対処法は、通常のけいれんの対処法と同様です。けいれんを繰り返したり長く続いたりする場合には救急車を要請しましょう。

熱性けいれんの予防には、発熱の早期(37.5〜38℃以上の発熱を起こした際)にジアゼパムという座薬を使用することが有効とされています。ただし、使用後にぐったりするなどの副作用もあるため、実際の使用に際しては主治医の指示に従いましょう。

てんかんなどのけいれん性疾患がある場合には、睡眠不足や精神的ストレスによってけいれんを招くことがあります。

睡眠不足や精神的ストレスを解消するには

睡眠不足の解消のために、まずは規則正しい生活を心がけることが重要です。また、身体的・精神的ストレスがかかる状況を避け、飲酒も控えましょう。また、内服中の安定剤や眠剤を突然やめたりすることもけいれんを引き起こす原因となるため、注意しましょう。

低血糖によってけいれんを起こすこともあります。低血糖糖尿病で治療中の患者さんに多くみられますが、それ以外に何らかの病気がある場合や薬剤による影響、食生活などが原因で生じることもあります。

低血糖を改善するには

低血糖を起こしやすいという場合には、飴やブドウ糖のタブレットなどを持ち歩き、症状がみられた際に速やかに摂取しましょう。何らかの病気によって低血糖を起こしやすい場合には、食事を少量ずつ数回に分けて摂取することも有用です。糖尿病以外で低血糖を何度か起こしているという場合には、原因を特定するため医療機関での検査が必要です。放置せず医療機関を受診しましょう。

日常生活でできる対処法を試しても症状がよくならない際には、思わぬ原因が隠れている場合があります。一度病院を受診してみましょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。