口の中にはさまざまなトラブルが起こり得ますが、しこりが形成されることもあります。原因はさまざまで大きな問題のないものもありますが、早急に治療を要する病気によって引き起こされることもあるため注意すべき症状のひとつです。

口の中にしこりができる病気には以下のようなものが挙げられます。

口の中のしこりは、口腔粘膜に生じる病気によって引き起こされることがあります。原因となる主な病気は以下のとおりです。

口腔良性腫瘍

頬粘膜や歯肉、舌など口腔内に生じる線維腫などの良性の腫瘍です。表面が滑らかなしこりを形成し、通常は痛みやかゆみなどの症状は伴いません。また、悪性腫瘍のように急激に増大したり転移したりすることがないため、そしゃくなどの妨げにならない限りは経過観察を行うことがほとんどです。

粘液嚢胞

唇にダメージが加わることで、唇の粘膜下に分布する小唾液腺も損傷して発症する病気です。ダメージが加わった唇粘膜に軟らかい水風船のようなしこりを形成し、ささいな刺激で破れて内部の液体が流出します。

再発を繰り返しやすく、根本的には嚢胞ごと切除する必要があります。痛みなどは伴いませんが、嚢胞が破れた部位にびらんを形成することがあります。

唾液腺腫瘍

唾液腺に生じる腫瘍であり、口腔内に隣接した小唾液腺や舌下腺に発症するとしこりが形成されます。

多形腺腫やワルチン腫瘍などの良性腫瘍では、舌の下など唾液腺がある部位に表面が滑らかなしこりが形成され、痛みなどは伴いません。一方、悪性の場合は表面がゴツゴツした岩のようなしこりが形成され、周辺の神経などを巻き込みながら増大していくため、口腔内のしびれや唾液の分泌量低下などの症状を引き起こします。

唾液腺腫瘍
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頬粘膜がん、口底がん、舌がんなど

口腔内に発症するがんで、喫煙習慣、未治療の虫歯やサイズの合っていない入れ歯などによる慢性的な刺激などが発症の引き金になると考えられています。早期の段階では粘膜に潰瘍やしこりを形成するのみですが、徐々に病変が増大して表面がボコボコとしたカリフラワー状のしこりを形成するようになります。

また、しこりの粘膜に深い潰瘍ができて出血や化を引き起こすことも少なくありません。さらに、頚部リンパ節に転移しやすいのも特徴のひとつで、首にしこりが触れるようになります。

頬粘膜がん
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舌がん
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口の中のしこりは、歯茎に生じる病気によって引き起こされることがあります。原因となる主な病気は以下のとおりです。

エプーリス

歯周病歯髄炎などによって炎症を生じた歯茎の組織が異常増殖してしこりを形成する病気です。根本的な治療はしこりの切除ですが、歯周病などの原因となる病気を治療しない限りは再発を繰り返すのが特徴です。

しこりに痛みやかゆみなどは伴いませんが、歯茎の炎症によって歯周ポケットが深くなり、歯の動揺や脱落を生じることも少なくありません。

歯根嚢胞

虫歯が進行して、歯の内部を走行する(歯の神経)にまで炎症が波及することで歯の根元に嚢胞を形成する病気です。嚢胞自体に痛みなどはありませんが、細菌感染などを引き起こして内部が化すると嚢胞が腫れ、しこりとして触れることがあります。

歯肉がん

歯茎に生じるがんです。歯肉にしこりや潰瘍を形成し、徐々に増大していくのが特徴です。

しこりの粘膜に難治性の潰瘍を形成することがあり、痛みや出血などを引き起こすこともあります。

口の中のしこりは、痛みなどの症状がない限り気付かれないこともあり、気付いた場合でもすぐさま病院を受診する人は少ないでしょう。しかし、なかにはがんなど早急な治療が必要な病気が潜んでいることもあり、看過できない症状でもあります。

特に、しこりに痛みやかゆみなどの症状を伴う場合、再発を繰り返す場合、潰瘍や出血などの病変を伴う場合、何らかの全身症状を伴う場合には、なるべく早めに病院を受診するようにしましょう。

受診に適した診療科は口腔外科・頭頸部外科ですが、近くに口腔外科がない場合には一般的な歯科医院で相談することもできます。また、受診の際には、いつしこりができたのか、考えられる誘因、増大の有無や随伴する症状などを詳しく医師に説明しましょう。

頭頸部外科
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受診の目安

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 痛み、出血、舌や粘膜の変色がある
  • 食事などに支障がある
  • 以前はなかった場所にしこりを発見した

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 大きさが小さく、長年変わらず同じ場所にある
原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。