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背が伸びない:医師が考える原因と対処法|症状辞典

背が伸びない

久留米大学医学部小児科学教室・教授

古賀 靖敏 先生【監修】

背が伸びるスピードや最終的な身長には大きな個人差があります。成長期に背の伸びが遅くても、多くは遺伝や体質によるものなので心配ないとされています。しかし、平均をはるかに下回る背の伸び具合の場合は、背景に何らかの原因が隠れていることも少なくありません。

  • 未熟児で生まれた、生まれつき発育が遅い
  • 発育がよく、乳房の発達や初潮年齢は早かったものの思春期ごろに背が伸びなくなった
  • 頭が大きく手足が短いなど体型のバランスがほかの人と異なる

これらの症状がある場合、原因としてどのようなものが考えられるのでしょうか。

背の伸びの悪さの中には、病気が原因で引き起こされているものもあります。

私たちの体の中ではさまざまな“ホルモン”と呼ばれる物質がつくられており、体の機能や状態を調節するはたらきを担っています。生まれてから思春期を終える頃まで意識せずに背が伸びるのもホルモンのはたらきによるものです。このため、背の伸びに関連するホルモン量に異常が生じると正常な発育がストップすることがあります。

成長ホルモン分泌不全性低身長症

背を伸ばす作用をもつホルモンとして最も大きな役割を果たすのが“成長ホルモン”です。成長ホルモンは脳の下垂体と呼ばれる部位でつくられますが、脳腫瘍(のうしゅよう)や頭部外傷、出産時の脳へのダメージなどが原因で下垂体の機能が低下すると成長ホルモンの分泌が悪くなります。その結果、“成長ホルモン分泌不全性低身長症”を発症します。

症状は下垂体機能低下の程度により、背の伸びにくさのほかにも生殖器官の発達の遅れなどが見られることがあります。

クレチン症

生まれつき甲状腺の機能が低下している病気です。体の新陳代謝を促す甲状腺ホルモンの分泌量が低下するため、出生後間もなくの頃から元気がない、哺乳量が少ない、便秘、手足の冷えなどの症状が見られ、成長するとともに背の伸びの悪さ、知的な発達の遅れなどが目立つようになります。

現在では新生児期にクレチン症を発症していないか簡単な検査(新生児マススクリーニング検査)を行うのが一般的であり、早期から治療を開始するため身体的・知的発達に異常をきたさないケースがほとんどとされています。

先天性甲状腺機能低下症
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後天性甲状腺機能低下症

後天性甲状腺機能低下症とは、出生後、小児あるいは青年期に生じ、甲状腺の機能が低下する病気です。主に、橋本甲状腺炎という病気であることが多く、体の免疫が甲状腺細胞を攻撃することによって甲状腺に炎症が生じ、甲状腺ホルモンの分泌量が低下してしまいます。特に、小児のうちに病気にかかった場合、成長が遅れて低身長になることがあります。

思春期早発症

初潮や陰毛の発達などの二次性徴が通常よりも2~3年ほど早まってしまう(9歳前後)病気です。卵巣や精巣の発達を促すホルモン分泌が過剰になることが主な原因であり、身体的な発達が早いため発症当初は平均より身長が高めな傾向にあります。しかし、骨が成長する部分である“骨端線”が早く役割を終えてしまうため最終的な身長は平均よりも大幅に低くなることも少なくありません。

染色体の異常による生まれつきの病気の中には、背が伸びにくくなるものもあります。

ターナー症候群

ターナー症候群は女児に発症する先天的な染色体異常による病気です。本来なら“XX型”の性染色体(性別を決める染色体)が、“XO型”(X染色体が1本足りない)となることが原因で発症し、発症率は出生した女児1000人のうち1人程度と比較的頻度が高いのが特徴です。ターナー症候群は低身長のほかに、首の両側にある皮膚が余る“翼状頚(よくじょうけい)”や前腕の軸が外側を向く“外反肘(がいはんちゅう)”、リンパ液が溜まることによって生じる“リンパ浮腫(ふしゅ)”などが見られることがあります。また、卵巣の発育が生じないため無月経となり、それをきっかけに発見されることも少なくありません。

ターナー症候群
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軟骨無形成症”や“軟骨低形成症”などの病気では、骨や軟骨の異常によって身長が伸びにくくなります。これらの病気では、胴体に対して頭の大きさが大きくなったり、腕や足が短くなったりと特徴的な体のバランスになることがあります。遺伝によって生じる場合と突然変異で現れる場合があり、成長ホルモン治療や骨延長手術が検討されます。

背の伸びにくさは出生時に生じたトラブルによって引き起こされることがあります。

SGA性低身長症

子宮内での発育が悪く、低体重の状態で生まれた子どもに見られる病気です。通常、出生時の体重が平均より低くても多くは3歳ごろまでに健常な状態で生まれた子どもとほぼ同じ水準に成長します。しかし、なかには3歳ごろになっても身長の伸びが悪いことがあります。放置すると最終的な身長も低くなることがあるため成長ホルモンを補充する治療などが行われます。

背の伸び方は遺伝や体質などによって異なり、個人差が大きいものです。このため、背の伸びが悪いからといってすぐに病気を疑って病院を受診するケースは少ないのが現状です。しかし、低身長のなかには上で述べたような病気が背景にあるケースもありますので注意が必要です。

特に、乳児期から発達の遅れを指摘されている場合、成長期であるものの急に背が伸びなくなった場合、ほかの身体的な異常を伴う場合などは、軽視せず早めに受診することがすすめられます。

初診に適した診療科は小児科ですが、思春期以降の場合は付随する症状によって内分泌内科や婦人科で相談するのもよいでしょう。また、どの診療科を受診すればよいか分からないときはかかりつけの内科などで相談するのも一つの方法です。

受診した際は、母子手帳などの成長の記録を持参し、いつから背の伸びにくさが目立つようになったのか、背の低さ以外の症状の有無、兄弟などの近い親族に低身長の人がいるかどうかを詳しく伝えるようにしましょう。

背の伸びにくさは日常生活上の好ましくない習慣によって引き起こされるケースもあります。

背の伸びに必要な成長ホルモンは睡眠中に多く分泌されます。このため、夜型の生活が続くなど生活リズムが乱れて十分な成長ホルモンが分泌されなくなると背の伸びが悪くなることも少なくありません。

規則正しい生活を送るには

成長ホルモンは22時ごろから分泌量が増えるとされているため、成長期はできるだけ21時台には就寝するよう心がけましょう。また、休みの日であっても早寝早起きを徹底することも大切です。

骨の成長にはカルシウムやビタミンDなどの栄養素が必要です。また、これらの栄養素を体内で効率よく利用するには日光に当たることも大切とされています。

このため、カルシウムやビタミンDなどの栄養素が不足していたり、外出せずカーテンを閉めきった室内に閉じこもる状態が続いていたりすると背が伸びにくくなることがあります。

背の伸びを促す食生活と生活とは

正常な背の伸びを促すには、バランスのよい食生活を心がけることが大切です。特に乳製品や魚介類など良質なカルシウムとビタミンDを含む食材を多く取るようにしましょう。

また、日中はできるだけ日光を浴び、部屋に閉じこもる生活にならないよう注意が必要です。

ホルモンの分泌調節は非常にデリケートであるため、精神的なストレスが多いと成長ホルモンの分泌量が少なくなることが報告されています。また、併せて睡眠障害摂食障害を引き起こすこともあります。

ストレスをためない生活を送るには

小児期や思春期であっても子どもは大人が考えている以上にさまざまなストレスを感じています。日頃から十分な睡眠や休息を取り、趣味の時間を作るなどストレスを抱えにくい生活を心がけるようにしましょう。

身長が低いことの原因は体質にであることもあります。しかし、日常生活の習慣を改善しても背の伸びが改善されない場合は、思いもよらない原因が隠れていることも少なくありません。たとえば、同年代の同性100人と並んだとき1〜3番目に小さいなど、同性の人と並んだときに身長が著しく小さいと感じる場合には、一度は病院で相談するようにしましょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。