膨満感:医師が考える原因と対処法|症状辞典

膨満感

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • 激しい腹痛、横になれないほどの息苦しさがある
  • 急激に膨満感が現れ、パンパンに張っている

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 慢性的な膨満感が続いている
  • 腹痛、息苦しさ、食欲不振などがある
  • 尿量が少ない、足がむくむ

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 短時間でよくなり、その後繰り返さない

埼玉医科大学病院消化管内科 診療部長 教授

今枝 博之 先生【監修】

お腹が張って苦しくなる状態を膨満感といい、生活習慣から病気によるものまでさまざまなことが原因となります。

  • ここ数日、便やガスが出なくなって常にお腹が張っているような感じがある
  • 最近いつもお腹が張る感じがあって、ゲップやガスが増えたような気がする
  • 食後や寝ている時にお腹の張りをよく感じる…胸やけや吐き気もよく起こる

このような場合に考えられる原因は何なのでしょうか。

腹部膨満感が続く場合、病気が原因となっている可能性があります。

便秘

便が腸管内に溜まって排便が障害される便秘でも、よく腹痛や腹部膨満感が生じます。

腸閉塞

腸閉塞とは、腸管同士の癒着(くっつくこと)や血流障害、腫瘍などによって、腸管の内容物が流れなくなる状態のことをいいます。腸管同士の癒着は、お腹の手術後に起こることが多いとされています。腹痛、腹部膨満感、嘔吐の3つがよくみられる症状で、発熱を伴うこともあります。

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群とは、検査で異常がないにも関わらず、腹痛や腹部の違和感、腹部膨満感、下痢、便秘などの不快な症状が生じる病気です。

下痢や便秘を繰り返すことも多く、不快な症状が慢性的に起こります。

呑気症

呑気症(どんきしょう)は、大量に空気を呑み込むことで、胃腸に空気が溜まってしまう状態のことです。

胃や食道、腸などに空気が溜まることによって、ゲップやガス、腹部膨満感が主として現れます。

逆流性食道炎

逆流性食道炎は、胃の中にある胃酸が食道に逆流し、食道の壁や粘膜が炎症を起こす病気で、高齢者に多いといわれています。

症状として胸やけや喉のつまり感、腹部膨満感のほか、食道の炎症が強いと胸が締め付けられるような痛みを感じることが多く、胃酸が口に逆流すると酸っぱく感じたりゲップが多く出るようになります。

急性胃腸炎

急性胃腸炎とは、ウイルスや細菌による感染、薬剤などが原因となって、胃腸の粘膜が炎症を起こす状態のことです。

症状は吐き気や嘔吐、腹痛、下痢が多く、場合によっては発熱や腹部膨満感、食欲不振といった症状が現れることもあります。

機能性ディスペプシア

胃の重い感じ、痛み、胃もたれ、膨満感、特にすぐ満腹になって食べられないなどの症状があるものの、胃カメラなどの検査を行ってもはっきりした病気がない状態です。

まずは胃炎や胃・十二指腸潰瘍などの病気が原因でないかどうかを確かめることが大切です。

腹部の腫瘍

腫瘍とは、体の表面や中に過剰にできる細胞のかたまりのことで、主に良性と悪性(がん)の2つに分類されます。腹部にできる腫瘍で腹部膨満感が現れるものとしては、胃がん大腸がん膵臓がん卵巣腫瘍(悪性を含む)などがあります。

いずれも腫瘍が小さいうちは無症状であることが少なくありません。

上腸間膜動脈症候群

十二指腸から小腸へ続いている部分は、上腸間膜動脈や腹部大動脈といった血管に挟まれています。通常、上腸間膜動脈と十二指腸の間には脂肪組織があり、圧迫を受けないようにクッションの役割を果たしています。しかし、急激な痩せなどでクッションが少なくなると上腸間膜動脈によって十二指腸が圧迫を受け、食後の胃の重さや吐き気、腹痛、腹部膨満感などの症状が現れることがあります。また、仰向けで症状が悪くなり、うつぶせで症状が良くなるという特徴があります。

十二指腸そのものに病気があるわけではないため、胃カメラなどの検査では異常がみつかりません。他の画像検査などを行うことが必要な病気です。

腹部膨満感が長く続いている場合や、腹痛や吐き気・嘔吐など他の症状が伴っている場合には、一度病院へ受診してみるとよいでしょう。便秘のように自分で原因がなんとなくわかっている場合でも、受診することで解決の手がかりが得られる場合もあります。

受診科目は内科または消化器内科が適しています。

診察時に腹部膨満感がどのくらい続いているか、どのような時に腹部膨満感が出やすいか、他の症状があれば、その旨を正確に医師に伝えましょう。

食べすぎ・飲みすぎや早食いといった食習慣、ストレスや緊張など日常生活が原因となって腹部膨満感がみられることもよくあります。

大量の食べ物や飲み物が胃に送り込まれると、胃の消化機能が一時的に弱くなって十二指腸に流れなくなります。その結果、食べ物や飲み物が胃に留まり膨満感が生じます。

食べすぎ・飲みすぎた時は

消化を助けるために安静にすることが第一です。ただし、直後に横になる習慣を続けると、逆流性食道炎の原因になってしまうことがあります。横にならず楽な姿勢でゆっくり過ごすようにしましょう。

また、胃の消化を助けるために、症状がよくなるまでは消化の良い食事にするなどの工夫も大切です。

食べ物が急に胃に流れ込むと胃の消化機能が低下して、十二指腸に流れにくくなり、胃に溜まって膨らみます。また、早食いによって食べ物と一緒に空気を吸い込み、膨満感が起こります。

食事の時気をつけたい事

ゆっくりとよく噛んで食べるようにしましょう。そのためには、柔らかいものや食べやすいものばかりにするのではなく、噛みごたえのあるものを食べることも大切です。

また、テレビや新聞を観ながら、パソコンを使いながら食べる場合、噛むことや食事に集中できず、早食いになってしまう可能性があります。何かをしながらの食事をやめるか、友人や家族と一緒に楽しんで食べるようにしましょう。

緊張などで精神的なストレスを受けた場合には、唾を飲み込む回数が増えて、唾と一緒に空気も飲み込んでしまいます。さらに、ストレスによって胃腸の消化機能が低下し、胃に飲食物やガスが溜まりやすくなることで、膨満感を引き起こします。

ストレスや緊張が強い時は

趣味や生きがいになるものを持っていれば、積極的に取り組んでストレスを発散しましょう。周囲の人に不安や怒りなどの感情を聴いてもらうことも、ストレスの発散に効果的です。周囲の人に聴いてもらうことが難しい場合には、カウンセラーなど専門家に相談してみるのもよいでしょう。

上で挙げた対策をとっても良くならない場合、対策をとることが難しい場合には、一度受診することを考えましょう。

医師からアドバイスをもらうことで、自分で対処できるようになるかもしれません。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。