赤ちゃんの嘔吐:医師が考える原因と対処法|症状辞典

赤ちゃんの嘔吐

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • 意識がもうろうとしている、寝てばかりいる、機嫌が悪いなどの様子がある
  • 嘔吐が激しく、水分を取ることができない
  • 頭を強くぶつけたなどの心当たりがある
  • 緑、赤、黒など色のおかしい嘔吐がある

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 食べさせると吐いてしまうが、水分は取れている
  • 発熱、下痢などがある
  • 周囲で同じような症状が流行している

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 短時間でよくなり、その後繰り返さない

メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】

赤ちゃんは、胃内容物の逆流を防ぐ筋肉が未発達であることから、母乳やミルク、離乳食などをよく吐いてしまうものです。多くは生理的な原因によるものですが、さまざまな病気で嘔吐がみられることもあります。

  • 赤ちゃんが哺乳後に頻繁に吐く・・・。でも見た目は元気で、またすぐ飲みたがる
  • 普段ちょろちょろと吐くことはあるけれど、急に噴水のように勢いよく大量に吐いた
  • 最近嘔吐を繰り返していて、以前よりも泣く頻度が多く、泣き方もひどくなった気がする

このような場合、何が原因となっているのでしょうか。また、どういったときに病院を受診すればよいのでしょうか。

嘔吐を起こす病気は、感染によるものなど比較的に危険の少ないものが多いですが、放置すると危険な病気が隠れていることもあります。

赤ちゃんによくみられる嘔吐の原因としては、主に以下のようなものがあります。

急性胃腸炎(ウイルス・細菌性)

急性胃腸炎とは、何らかの原因によって胃腸の粘膜に炎症を起こす病気です。原因にはウイルスや細菌、原虫などがありますが、中でもウイルスによるものが多いとされています。

主な症状として吐き気・嘔吐、下痢、腹痛があり、通常は吐き気・嘔吐が突然現れ、その後に下痢や腹痛が現れるようになります。また、お腹の張りや食欲不振が起こる場合もあります。

急性胃腸炎
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胃食道逆流症

胃食道逆流症とは、胃の中のものが逆流し、胃酸によって食道粘膜が傷ついて炎症を起こす病気です。赤ちゃんは食道や胃の機能が未発達なために胃内容物が逆流しやすく、横向きの体勢で授乳した場合や、授乳後すぐに寝かせるなどした場合に、飲んだばかりの母乳やミルクを吐いてしまうことがよくあります。

赤ちゃんの場合、もっともわかりやすい症状は嘔吐ですが、ほかにも神経過敏や哺乳障害、耳の痛み、声のかすれ、しゃっくり、咳や喘鳴(ぜんめい)(ゼーゼーすること)、肺炎を繰り返すなどの症状が現れることもあります。

胃食道逆流症
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幽門狭窄症(ゆうもんきょうさくしょう)

幽門狭窄症とは、胃と十二指腸がつながる部分(幽門)が狭くなる病気です。主に生後2週から3か月前後の赤ちゃんにみられ、特に生後2週間前後に発症することが多く、発症率は1,000人に3人程度といわれています。

突然、噴水状に勢いよく吹き出す嘔吐が特徴的な症状ですが、吐いたあとは機嫌がよく、母乳やミルクをすぐに飲みたがります。ただし、嘔吐が続いて水分の摂取がうまくいかない場合には、脱水症状が現れることがあります。

肥厚性幽門狭窄症
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以下に挙げる原因は危険性が高く、放置すると重篤な症状が現れることがあるため注意が必要です。

腸重積(ちょうじゅうせき)

腸重積は、腸の一部が連続する腸内にはまり込む状態です。2歳ぐらいまでの赤ちゃんに発症することが多く、特に1歳前後によくみられます。

主な症状は腹痛、嘔吐、血便の3つで、通常は腹痛から始まります。痛みは数分~十数分ほどの間隔で強くなったり弱まったりを繰り返し、赤ちゃんの場合は痛みにあわせて泣いたり泣き止んだりを繰り返します。

腸閉塞(ちょうへいそく)

腸閉塞とは、何らかの原因で腸管が塞がれ、腸管内の食物やガスなどが流れなくなってしまう状態です。イレウスとも呼ばれています。典型的な症状は嘔吐で、腹痛やお腹の張り、排便・排ガスの停止などがみられることもあります。

胃軸捻転症(いじくねんてんしょう)

胃軸捻転症は、胃が病的に捻じれてしまった状態です。主な症状は嘔吐、腹痛、お腹の張りで、捻転の形によっては吐いても嘔吐物が出ません。

急性胃軸捻転症では、捻転の程度が強い場合、胃に血液が流れなくなることで、胃が壊死(えし)(死んでしまうこと)したり、穴が開いたりすることもあります。慢性胃軸捻転症の場合、自然によくなるものが多いです。

先天性食道狭窄症

先天性食道狭窄症とは、生まれつき食道が狭く通過障害が生じた状態を指し、通過障害によって嘔吐したり食べ物が詰まったりするようになります。このような症状が哺乳開始後すぐにみられる場合もありますが、軽度であれば離乳食を開始してから現れるようになります。

先天性腸狭窄症

先天性腸狭窄症は、生まれつき腸が狭く通過障害が生じた状態です。出生直後からの腹部の張りや嘔吐が主な症状で、時に皮膚や白目などが黄色くなる黄疸(おうだん)を認めます。

食道アカラシア

食道アカラシアとは、食道平滑筋と下部食道括約筋(かつやくきん)の運動を支配する神経の異常によって、口から摂取した物が食道から胃へとスムーズに流れなくなる病気です。成人に多くみられますが、赤ちゃんが発症することもしばしばあります。

発症すると、食道が十分に開かないことで、食べ物が飲み込みにくくなります。また、嘔吐や胸やけ、咳などの症状がみられたり、食べ物が気管に入って肺炎を起こしたりすることがあります。

食道アカラシア
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腸回転異常症

赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいるときに、成長の過程で十二指腸から横行(おうこう)結腸までの腸管が血管(上腸間膜動脈)を軸に270度回転します。この回転が不十分なために生じる腸管の障害が腸回転異常症です。

多くは新生児期に発症しますが、1歳過ぎに発症することもあり、胆汁を含んだ黄色の嘔吐と腹痛の症状が現れます。

食物・ミルクアレルギー

特定の食品を摂取してから数時間から数日経ったあと、アレルギー反応として嘔吐や下痢、血便などの症状が現れることがあります。赤ちゃんにおいては、牛乳由来のミルクが原因の大半を占めますが、母乳が原因になる場合や、米や大豆、卵などによってアレルギー反応を起こす場合もあります。

食物アレルギー
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赤ちゃんが吐いたとしても、熱や下痢などの症状を伴わず、吐いたあとも元気がある・機嫌がよいようなら、様子をみてから受診を検討してもよいでしょう。その一方で、嘔吐物が濃い緑色や赤色をしている、赤ちゃんがぐったりしている、反応が鈍い、機嫌が悪くて何度も激しく泣く、顔色が悪いなどの場合には、早急に受診することが大切です。夜間・休日で最寄りの小児科が閉まっていれば、救急車を呼ぶか、救急外来を受診するようにしましょう。

受診すると初めに問診が行われますが、問診の情報が診断の参考になることが多くあります。問診の際に、嘔吐をはじめた時間、最後に吐いた時間、嘔吐の回数、嘔吐物の内容を医師に伝えましょう。

赤ちゃんの嘔吐は、病気が原因で起こる場合もありますが、多くは飲みすぎなど日常生活上の原因によって起こります。

母乳やミルクを大量に飲むとお腹が膨らみ、授乳後にお腹を圧迫するような運動をしたときに、飲んだ物を吐き出してしまうことがあります。これを溢乳(いつにゅう)といい、赤ちゃんは胃内容物の逆流を防ぐ下部食道括約筋が未発達であるために、お腹の圧迫によって嘔吐することがよくあります。

飲ませすぎを防ぐには

生後1か月など小さな赤ちゃんは、お腹がいっぱいでも飲んでしまう反射があります。何かしらの行動が飲みたい欲求だと思い、短い間隔であげた結果たくさん吐くようなら、間隔をあけて様子をみてみるとよいでしょう。また、間隔をあけて次に授乳する際、少量にしてみて吐かなければ少しずつ増やしてみるのがよいでしょう。

哺乳時には、母乳やミルクと一緒に空気も飲み込みます。赤ちゃんは胃内容物の逆流を起こしやすいために、哺乳時や哺乳後にげっぷと一緒に母乳やミルクを吐くことがあります。

げっぷを出すためには

げっぷと一緒に母乳やミルクを吐いてしまうのは自然な現象です。げっぷが出ないと空気が胃に溜まってしまうため、むしろげっぷが出るほうがよいのです。

哺乳後には片手で赤ちゃんのお尻を支えて顎が肩にくるようにし、もう片方の手で背中を優しく叩いたりさすったりして、げっぷを出してあげましょう。また、げっぷと一緒に吐いた母乳やミルクが服につかないよう、肩にガーゼやタオルを乗せるとよいでしょう。

上で挙げた対策を行っても嘔吐が続く場合、何らかの病気が原因になっているかもしれません。一度病院で検査を受けたほうがよいでしょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。