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インタビュー

禁煙外来の専門家に聞く。タバコの煙に含まれる様々な毒素とは?

禁煙外来の専門家に聞く。タバコの煙に含まれる様々な毒素とは?
村松 弘康 先生

中央内科クリニック 院長

村松 弘康 先生

禁煙外来に力を入れる中央内科クリニックの村松弘康先生は、多くの方が喫煙の害を過小評価しているため、なかなか禁煙に踏み切らない現実があると言います。今回から数回に分けて、タバコの本当の怖さについてうかがいます。

タバコの燃え方はくすぶるような感じの「不完全燃焼」です。ご承知の通り、不完全燃焼では大量の有毒ガスが発生します。ガス湯沸かし器の不完全燃焼の事故で、中毒死の原因となる一酸化炭素などは有名ですが、タバコを吸うと当然この一酸化炭素もかなり吸い込むことになります。

一酸化炭素中毒で人が亡くなるのは、一酸化炭素を大量に吸うと全身が酸欠状態になるからです。酸素は赤血球内のヘモグロビンにくっついて、血液とともに全身に運ばれますが、一酸化炭素は酸素の約250倍ヘモグロビンにくっつきやすく、酸素からヘモグロビンを奪ってしまうため、全身に酸素が運ばれなくなるのです。このため一酸化炭素中毒では、脳に酸素が運ばれず意識がなくなり、心臓にも酸素が行かなくなり心停止するのです。

喫煙で吸い込む一酸化炭素は、死んでしまうほどの量ではないですが、筋肉に運ばれる酸素量も低下するため、運動をすると筋肉は途中から無酸素運動を強いられることとなり、持久力が低下します。また、酸素不足(ヘモグロビン不足)の状態が続くと、体はヘモグロビン(赤血球)を増やそうとするため、二次性の多血症(赤血球増多)を来たします。血球成分が増加すると血液粘調度が増して、いわゆる「ドロドロ血の状態」となり血栓を形成し易くなるため、脳卒中や血栓・塞栓症といった心血管イベントの発症リスクが増大します。

禁煙外来では、吐く息の中から一酸化炭素を測定して、本当に禁煙ができているかどうかの判定に役立てます。きちんと禁煙すれば、吐く息から一酸化炭素がなくなっていきますから、それが励みになって、禁煙の成功率も上がっていきます。勉強でも、頑張ってテストの点数が良くなれば、辛かったはずの勉強が楽しくなってきますよね。

タバコの害で一酸化炭素よりも怖いものとしては、活性酸素があります。これはタバコの煙自体にも入っていますし、タバコの煙で炎症を起こした気管支の内側にも発生する物質です。酸素を火で熱すると電子が1個外れて非常に不安定な酸素分子になることがあります。こういった不安定な酸素分子たちを活性酸素と呼び、体内で色々と悪さをすることが知られています。

活性酸素はタバコの煙に混じって肺から吸収されて、体中にまわっていきます。活性酸素は非常に不安定で、早く他の物質とくっついて安定になりたがる性質があるため、体内の様々な細胞にくっつきます。酸素がくっつくということは、その細胞は酸化されるということ。これは鉄だったら錆びるということで、つまり細胞の老化が進むのです。これは非常に深刻な害といえるものです。

また、活性酸素は悪玉コレステロールであるLDLコレステロールにもくっつき、酸化LDLコレステロールとなりますが、酸化変性した脂質は異物として認識されやすくなります。血管の掃除屋であるマクロファージが酸化LDLを異物として取り込み、肥大化したマクロファージは泡沫細胞となり血管内に沈着して、動脈硬化が進行します。

さらに、活性酸素が血管の内側にある内皮細胞を傷つけて血栓が付着しやすくなるため、心筋梗塞脳梗塞といった血栓・塞栓症も引き起こしやすくなるのです。

国際がん研究機関の最新レポートによると、タバコの煙には70種類以上の発がん物質が含まれていることが明らかになっています。当初は20~30種類とされていたのが、40種類、50種類と、レポートが更新されるたびに増え、今や70種類以上が確認されるようになりました。

みなさん肺がんばかり心配しますが、タバコによって増えるがんは肺がんだけではないのです。肺から吸収された発がん物質は、血液に乗って全身に回るので、肺だけでなく、実は全身のがんが増えることがわかっています。

特に喉頭がんが一番増えるという報告があります。タバコの煙の中に含まれる発がん物質は、ふかしているだけでも口の中に大量にこびりつくため、それが原因でのどのがんが発生します。唾と一緒に飲み込むことから、食道がんの危険性も上がります。

喫煙率の高い芸能界では、大変残念ですが忌野清志郎さんが喉頭がんで亡くなりましたし、やしきたかじんさんは食道がんで亡くなりました。喉頭がんに関して言えば、タバコを吸う方は吸わない方の32.5倍なりやすいとされ、ほとんどタバコを吸う方にしか発生しないがんと言えます。

タバコの煙をもっとよく調べると、さらに大変なものも入っています。ヒ素や、ごみ焼却場で問題になるダイオキシン。それからシアン化合物、窒素化合物。あとはシックハウス症候群の原因となり、発がん性もあるホルムアルデヒドも含まれています。さらにアレルギーを誘発するアフタレンやピレンなども入っていることが分かっています。

ここまで見てきて、どうしてそんなものを売って許されるのか、という感想をお持ちになる方もいらっしゃるかと思います。理由の一つは、燃えてから発生する有毒な成分が多いから。つまりタバコ自体を調べても出てこない物質がたくさんあるからです。このためタバコが「法の網の目をくぐってしまう」現状があるのです。

タバコは1本吸っても1箱吸っても、その場では何も起きません。このため、どうしてもその影響が過小評価されてしまいます。1本数本吸って大丈夫だ、1箱吸っても大丈夫、だから毎日続けていい。そんな風に少しずつ続けていったつもりでも、10年20年経ったときにその積み重ねはどうなるでしょう。実は、多くの発がん性物質には閾値(この量を超えると発生するという値)は存在しません。少量しか摂取していないとしても、それが運悪く重要なDNAを損傷すれば、がんは発生します。1本だから大丈夫という理屈は、実はまったく当てはまらないのです。

今回は、タバコの煙に含まれている有毒害成分についてお話しました。肺がんだけでなく全身のがんが増えること、がんだけでなく動脈硬化が進行することをご理解いただければと思います。次回もタバコの有害性について、もう少しだけ、お話をさせてください。

 

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