インタビュー

妊娠糖尿病の検査と診断-実際にどんな検査をするの?

妊娠糖尿病の検査と診断-実際にどんな検査をするの?
杉山 隆 先生

愛媛大学医学部附属病院 病院長、愛媛大学 副学長、愛媛大学大学院 医学系研究科 産科婦人科学講...

杉山 隆 先生

この記事の最終更新は2016年01月28日です。

日本人は白人に比べてインスリン分泌が悪く、インスリンの効きにくさ(インスリン抵抗性)は強いという、妊娠糖尿病になりやすい体質を持っています。ここに高脂肪食習慣と妊娠可能年齢の女性の運動量の減少、さらに高齢出産の増加という社会問題が加わり、妊娠糖尿病は今の日本にとって見過ごすことのできない疾患となりました。さらに妊娠糖尿病の既往女性では、将来の2型糖尿病の発症増加や児の将来の生活習慣病発症の増加にもつながります。本記事では、妊娠糖尿病かどうか診断するために、一体どのような検査が行われるのか、愛媛大学大学院医学系研究科産科婦人科学教授の杉山隆先生にお伺いしました。

ご家族に糖尿病にかかったことがある人がいる、35歳以上である、肥満である。-このような妊娠糖尿病のリスク因子を持っているかどうかにかかわらず、全ての妊婦さんが妊娠糖尿病のスクリーニング検査(ふるい分け検査)を受けるべきとされています。その理由は、日本人は先述の通り、インスリン分泌が悪く、妊娠糖尿病のリスク因子を既に有しており、妊娠糖尿病のハイリスク群だからです。

全ての妊婦さんが対象とされる理由は、妊娠糖尿病がリスク因子の有無をみるだけでは見逃されてしまうことが多い疾患だからです。

妊娠週が進むにつれ、インスリン抵抗性は強くなり、糖代謝異常(体内に摂り込んだ糖をエネルギー源へと変換できない状態)の出現頻度は高まります。そのため、スクリーニング検査は妊娠初期と中期に分けて2段階で行います。糖尿病診察ガイドライン2013では、初診時と妊娠24~28週にスクリーニングすることが望ましいとされています。

妊娠糖尿病のスクリーニング検査の内容や対象者は、妊娠初期と妊娠中期で異なります。

  • 妊娠初期(1回目):全妊婦を対象とする検査です。随時血糖値(食事時間とは関係なく測定した血糖値のこと)を採血して測定します。各施設で独自に設定したカットオフ値(陽性と陰性を分ける値のこと。100mg/dLか95 ml/dLのいずれかに設定することが推奨されています。)で陽性と陰性にふるい分けます。

 

  • 妊娠中期(2回目):上記のスクリーニング検査で陰性だった妊婦、もしくは陽性だったが「75gブドウ糖負荷試験」(次項を参照)により、妊娠糖尿病もしくは明らかな糖尿病と診断されなかった妊婦を対象とします。50gのブドウ糖負荷試験を行い、1時間後に採血して血糖値を測定します。血糖値が140mg/dL以上の場合は陽性となります。あるいは、随時血糖が100 mg/dl以上の場合を陽性と判断します。

上記2回目のように、ブドウ糖を飲んで血糖値を測る検査を「糖負荷試験」といいます。糖負荷試験の結果血糖値が高いときは、①インスリンの分泌が悪い、もしくは②インスリンの効きがわるい(インスリン抵抗性が強い)状態であるということがわかります。

このスクリーニング検査で陽性とされた妊婦さんは、診断検査である「75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)」を受けることとなります。

75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)とは、75gのブドウ糖サイダーを口から摂取し、血糖値の変化をみる検査です。検査の半日前から絶食をし、ブドウ糖の摂取前、摂取1時間後、2時間後の3回採血し、血糖値を測定します。この検査により、以下3点のうちいずれか1点以上に当てはまった場合は、妊娠糖尿病と診断されます。

(ただし、「臨床診断」で糖尿病と診断された場合は除外されます。)

  • 空腹時血糖値≧92mg/dL
  • 1時間値≧180mg/dL
  • 2時間値≧153mg/dL

上記の診断基準は2010年に改訂されたものです。改訂前と比べて診断基準は厳しくなり、妊娠糖尿病と診断される妊婦さんは大きく増えることになりました。診断基準が厳しくなった理由は、妊娠糖尿病が妊婦さんご自身と胎児、そして生まれてきた赤ちゃん(新生児)に悪影響を及ぼすことが明らかに示されたからです。妊娠糖尿病とはどのような危険を母児にもたらすのか、次の記事でご説明します。

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  • 愛媛大学医学部附属病院 病院長、愛媛大学 副学長、愛媛大学大学院 医学系研究科 産科婦人科学講座 教授

    杉山 隆 先生

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