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インタビュー

思春期以降に髪が薄くなるAGAとは-AGAの原因は?症例写真と日常での対策法の有無

思春期以降に髪が薄くなるAGAとは-AGAの原因は?症例写真と日常での対策法の有無
伊藤 泰介 先生

浜松医科大学 皮膚科学講座 准教授

伊藤 泰介 先生

頭頂部や額の髪が薄くなるAGAは、特に若い男性の生活の質(QOL)に深刻な影響を及ぼす脱毛症です。しばしばメディアなどでは、ストレスや家系、不規則な生活習慣やカラーリングがAGAを引き起こすといわれますが、これらは医学的に正しい情報なのでしょうか。

本記事では、AGAの原因とそうでないもの、日常生活でできるAGAの対策法の有無について、「脱毛症外来」を担当されている浜松医科大学医学部付属病院皮膚科病院准教授の伊藤泰介先生にお話しいただきました

AGA男性型脱毛症)は、現在日本で成人男性の3人に1人が悩んでいるともいわれている、パターン化した脱毛症です。男女問わず、「AGA」という言葉を耳にされたことがある方は非常に多いのではないでしょうか。しかし、これは少し古い呼称です。

AGAとは、androgenetic alopecia(アンドロジェネティックアロペシア)の略称であり、androは男性、geneticは遺伝の意を持ちます。ですから、私は患者さんに対し、「AGAとは男性ホルモンと遺伝が関連した、パターン化した脱毛症」であると説明しています。

ところが、AGAは女性にも起こる脱毛症であり、この場合「女性のAGA(Female AGA/FAGA)というややわかりにくい呼び方をせざるを得ませんでした。そのため、最近ではPHL(pattern hair loss/パターンヘアロス)という呼称が使われるようになっています。男性の場合はMPHL(male pattern hair loss)、女性の場合はFPHL(female pattern hair loss)と略されます。

ただし、本記事は男性のPHLについて述べるため、一般の方の間でより普及しているAGAという言葉を使用するものとします。

※女性のAGAについては、FPHLと記します。

伊藤泰介先生よりAGA症例
AGAの症例写真 :写真提供 伊藤泰介先生より

パターンヘアロスという呼称にも象徴されるように、髪の抜け方にはパターン(型)があります。

AGAパターン
AGAのパターン

 

男性の場合、男性ホルモン受容体のある(1)頭頂部と(2)前頭部(額)のどちらか、もしくは両方に脱毛症状が起こり、薄毛になっていきます。

※FHPLのパターンはこれとは異なります。

毛髪にはヘアサイクルという周期があります。通常の毛髪は、(1)成長期、(2)退行期、(3)休止期の3期を繰り返しており、このうち毛髪が大きく成長する「成長期」は2年から6年ほどあります。

毛周期

ところが、AGAを発症すると成長期が短くなってしまい、毛髪が成長を終えないうちに退行期、そして休止期へと移行してしまうのです。

結果、「軟毛(なんもう)」と呼ばれる細い毛や短い終毛が全体的に増え、抜け毛の増加や髪全体のボリューム減少に繋がっていきます。

では、なぜ成長期が短くなり、毛髪の成長が止まってしまうのでしょうか。

これには、男性ホルモンの一種である「ジヒドロテストステロン(DHT)」が関与しています。

ジヒドロテストステロンとは、テストステロンに人間が元来持っている還元酵素である5α‐リダクターゼが結びつく(酵素反応が起こる)ことで生成される物質です。

ジヒドロテストステロンテストステロン

生成されたジヒドロテストステロンは男性ホルモン受容体と結合し、乳頭や毛母細胞の活動を抑制する因子であるTGF-βやDKK-1などを誘導する方向へと作用します。結果、毛母細胞そのものの増殖が抑制されてしまい、毛髪の成長期が短くなってしまうのです。

そのため、AGAの症状(抜け毛)は男性ホルモン受容体が存在する頭頂部や前頭部にのみ現れます。逆に、側頭部や後頭部には男性ホルモン受容体が発現しないため、症状も現れません。これが、AGAに一定のパターンがある理由です。

また、この理論に基づき、男性ホルモン受容体が存在しない側頭部や後頭部の毛髪を、頭頂部や前頭部に移植する「自毛植毛」も、AGAの治療法のひとつとして行われています。

AGAと遺伝的素因は大いに関係していると考えられています。男性ホルモン受容体の感受性の高さは、AR遺伝子という遺伝子により決まります。AR遺伝子の中にはCAG、GGCという塩基配列が繰り返されており、このリピート数を「CAG、GGCリピート数」といいます。

「CAGとGGCリピート数の合計数が短い人ほどAGAになりやすい」というデータが、権威ある皮膚科の世界的な医学雑誌に掲載されており、世界的に高い信頼を得ています。

「AGAになりやすいかどうか」を検査する「遺伝子診断」とは、このCAG、GGCリピート数の合計の短長をみるものです。

前項で述べた遺伝子とAGAの関係については論文が発表されていますが、食生活の乱れや睡眠不足、質の悪い睡眠やストレスがAGAにとって悪いのかどうかといったことについては、統計学的な前向き検討はなされていません。

とはいえ、これら生活の質の悪化は正常なヘアサイクルを乱す要因にはなりえます。

たとえば、栄養が偏った食生活を続けることにより、毛髪を作る亜鉛や鉄分が不足すると、当然ながら毛髪の成長は阻害されてしまいます。

また、質の悪い睡眠や不規則な睡眠リズムにより、良質な睡眠に欠かせないホルモンであるメラトニンの分泌が乱れると、毛成長にも影響を与えます。

このほか、心身にストレスがかかると、脳の下垂体からストレスホルモンであるCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)が出ますが、このCRHも毛髪の成長を阻む因子のひとつです。

このように、不規則な生活やストレスはAGAの直接的な原因になるとはいえませんが、抜け毛を助長する可能性はあると考えられます。

パーマやカラーリングを繰り返すことが、直接的に抜け毛の原因となるかどうかはわかっていません。ですから、医師の立場からは断定的に結論を述べることはできません。ただし、これらが頭皮の炎症を引き起こし、正常なヘアサイクルを乱す可能性はありえます。

また、エビデンスはありませんが、既に軟毛化している毛髪は、健康な毛髪に比べて弱いため、AGAにとって間接的に影響があると考えることもできるかもしれません。

AGAは進行性であり、一度発症してしまうと自然に治ることはありません。治療せずに放置していると、症状は進んでいきます。

「生活の改善でAGAの進行を止められるか?」という質問に対し、医師として答えるのは難しいものがあります。

たとえば、頭皮のマッサージは真皮の組織になんらかの好影響を与える可能性もありますが、それがAGAの進行を止めるまでに至るかどうかを示した科学的根拠はありません。

栄養に偏りが生じないよう、食生活を改善することは毛髪の健康にとって勿論意味があります。極端な話になりますが、栄養が極度に不足したとき、全身の中で最初に影響が現れるのは爪や髪などの末梢組織です。AGAとは無関係に、毛髪の正常な成長期を維持することができなくなるため髪が抜けやすくなったり、爪が脆くなったりするというわけです。

しかしながら、特定の食べ物を過剰に摂取したからといって、AGAの症状に改善がみられるわけではありません。しばしば、女性ホルモンの正常な分泌やバランスを整えることに役立つ豆類が育毛によいといわれますが、AGAを発症している男性が豆類を過度に多く摂取しても、毛髪量に劇的な変化はみられません。

ただし、豆類に含まれるタンパク質は毛髪の原料になるため、男女問わず不足するような食生活は避けたいものです。

つまり、AGAの対策ではなく健康な毛髪を維持するための一般論として、栄養素は全て「不足しないようにとる」ことが大切というわけです。

では、エビデンスに基づくAGAの治療法にはどのようなものがあるのでしょうか。次の記事「AGAの治療で髪の毛は増える? 皮膚科でのAGA治療と効果、費用について」では、皮膚科医が実際にAGA治療で使用する薬剤や、治療効果について詳しくご紹介します。

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