男性型脱毛症とは、ほかにも壮年性脱毛症やAGA(Androgenetic Alopecia)とも呼ばれる脱毛症です。男性型脱毛症は男女共に症状が出ることが知られており、女性の場合は近年では“女性型脱毛症”と呼ばれています。好発年齢は男性の場合、20歳代後半から30歳代にかけて症状が出始め、徐々に進行して40歳代以降に完全に脱毛(薄毛)が目立ってきます。一方女性では更年期に脱毛が目立つようになります。それでは、男性型脱毛症はどうして起こるのでしょうか。
男性型脱毛症の主な原因には男性ホルモンや遺伝、環境や生活習慣が関係しているとされています。
一般的に男性ホルモンはひげや胸毛などの毛は濃くする方向にはたらきますが、前頭部や頭頂部などの男性ホルモン感受性毛包に対しては逆に軟毛化現象を引き起こします。軟毛化現象とは毛周期(ヘアサイクル)を繰り返す過程で成長期(毛が伸びる時期)が短くなり、休止期(毛が抜け落ちる時期)にとどまる毛包が多くなることにより毛が細く短くなる現象のことです。これが進行することで最終的に脱毛の状態になってしまいます。
遺伝的背景としては、X染色体上に存在する男性ホルモンレセプター遺伝子の多型や、常染色体の17q21や20p11に存在する疾患関連遺伝子が知られています。
身の回りの環境やストレス、普段の食事や睡眠などの生活習慣も関係しているといわれています。これらは男性型脱毛症の直接的な原因ではなく、これらが男性ホルモン産生サイクルに作用することで男性型脱毛症に影響を及ぼすと考えられています。
男性型脱毛症は病気というよりも人体の自然現象で、一度生えなくなった部分の毛を生やすのは難しいとされています。そのため、治療の目的は脱毛を完治させることよりも症状の進行を止めることにあります。
なお、男性型脱毛症の明確な予防方法は研究段階にあり、今のところ見つかっていません。
男性型脱毛症では一度生えなくなった部分の毛を生やすのは難しいとされているため、早期治療が改善の可能性を高めるとされています。したがって気になる症状があれば早めに受診するとよいでしょう。受診の目安としては20歳代から40歳代、薄毛の部位が前頭部・頭頂部、また家族に同様の症状の方がいるかどうかなどから判断できます。診療科は皮膚科が専門領域となるので、皮膚科を受診するようにしましょう。
受診して男性型脱毛症と診断された場合の治療法は大きく分けて薬物療法と自毛移植・ウィッグの二つがあります。
フィナステリドやデュタステリドは、毛包が小さくなるのを防いでくれる内服薬です。また、外用薬ではミノキシジルを含有したローションがガイドラインで推奨されていて、これが毛乳頭細胞を刺激することで毛母細胞(毛髪つくり出す細胞)を増殖させる成長因子を促す作用があります。
後頭部などの自分の毛を毛包ごと移植するのが自毛移植と呼ばれる治療法で、自分の組織なので問題なく生着し、有効とされています。また、ウィッグ(かつら)を使用することでQOL(生活の質)が向上するので、治療の選択肢のひとつとされます。
男性型脱毛症とは男性ホルモンや遺伝、環境や生活習慣などが原因とされる脱毛症であり、前頭部・頭頂部の毛髪が薄くなっていきます。早期治療が症状改善につながるとされているほか、男性型脱毛症では個人に合った治療や対策を行う必要があるため、不安な方は一度皮膚科の専門医師に相談するとよいでしょう。
なごみ皮ふ科 院長、神奈川県皮膚科医会 副幹事長
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